ラジオビタミンにはまっている。
NHKがこの春始めた、平日の午前中の大部分を占める
ラジオ番組である。

芸能人の噂や
ニュースへの扇動的なありきたりの吠え方などが
耳障りで仕方がない中で、
落ち着いて、心の深いところ、生活の実感というものを
感じさせてくれるメディアは、
やはりNHKが一番近かった。

流行りのゲストばかりではない。
しかし、知る人ぞ知る話題のゲストが呼ばれる。
しみじみと、よい話を聞くことができる。
しかも、誠実な深い心や希望を、じっくりとゲストが語るのを聴いている。
なんとか笑いを取ることばかり目指す「タレント」番組とは雲泥の差である。

先日は、カントの新しい本を訳した方がゲストだった。
哲学が語られていく。
それをパーソナリティはきちんと応対し、
実に真摯な内容を伝える番組として成立させていた。

街の人が、散歩するカントを見て時刻を知ったと言われるほど
毎日正確に時間通り歩いてくるカントが、
唯一時間通りに散歩しなかった日があったが何故か。
訳者の池内紀さんはご存じなかったが、
ドイツ文学研究者としては一流であっても
やはりカント専門家とまでは言えない方だから仕方なかっただろうか。
ルソーの『エミール』にはまったというエピソードとして伝えられている。
カントが実はどういうハートをもっていたか、に関する
重要な伝説である。

さて、このラジオビタミンという番組。
神崎ゆう子さんがパーソナリティである点も、
実はポイントとなっている。
ラジオ番組は初めてだといい、
発言や進行にミスもないわけではないが、
爽やかな応対に好感がもてる。
なにしろ、慣れ親しんだ歌のお姉さんである。
どういう表情で語っているかまでだいたい分かってしまう。

それが、音楽について、
実に幅広くご存じなので驚くのと、
ふと、「こんな歌でしたね」と口ずさむ歌のうまいこと……
あまりそういう機会はないのだが、
ぽっと出るその歌のキーが、実に正確なのである。
その後にかかる曲とぴったり合っているのに、
毎回驚かされる。
プロとはこういうものなのか、と唸ってしまう。