だんだん混んできたJR車内。
二人掛けの椅子が並ぶ中、
自分の横の、通路側の席に
どっかとカバンを置いている若者。

イヤホンをつないだゲーム機に熱中だ。
こうして、自分だけは世界から隔絶されているつもりである。

英会話の本の中に、
日本人は対人恐怖症が蔓延している、と書かれていた。
外国人に対してもそうだが、
この電車で横に荷物を置くのもまた、
人が横に来るのが怖いからだ、と。

うら若い女性が、痴漢を避けているのならまだしも、
この若者はむしろ他人が近寄りたくないような男性である。

眠っているふりをする者もいるが、
この男の場合は、ゲームだ。
視線をまわりに散らすこともない。
何か責められたら、気がつかなかった、と
演技するつもりなのだろうか。
それとも、責められるようなことなど、あるはずがない、と
世間を舐めているのだろうか。
あるいはただ単に、
ひきこもっているだけなのだろうか。

電車内の乗客からは、
この男に向かって、「バカたれが」という視線が
ありありと伺える。
ただ、それを口に出すと、
逆切れされて何をされるか分からない世の中だから、
現実に言わないだけだ。

それにしても「バカ」だとすべての人が
自分のことを軽蔑するか憐れむかして思っていることくらい、
この若者は気づく心があればまだいいのだが、
本人は、それに気づくこともよもやあるまい。