魚は小さな魚屋で買う。
一度その店で買って食べると、もうスーパーでなど、買えなくなる。
八百屋も、とりたてを戴くほかでは、
八百屋で仕入れたものを安く買うことにしている。
スーパーも頑張っているが、
こちらはよいものが高い。

さて、仕事に行く途中に買い物をすることがあるのだが、
その八百屋で、私は人参を買った。
前には、割り込んだ客が、ゆっくりと小銭を探していた。
訳あって、私はこういうとき、イライラすることがない。
こちらも、人参のための百円玉を財布から用意していた。

さて、私が人参の支払いを済ませ、
その若い兄ちゃんからお礼まで言われて――というのは
たかが98円の買い物では、何の利益もないに等しいわけで、
買ったほうが申し訳なくすら思うので――、
むしろ恐縮しながら受け取ってレジの前を去ったときのことだ。

「『お待たせしました』って言うと!
 後ろでお待ちだったお客様にもたい! まだ5日目!」

店のおかみさんが、けたたましい声で、その若者に注意していた。
あらあら。そんなに他の客もいる前で言わなくても。
でも、お客の扱いを教育しようとするおかみさんの気持ちも、
貴いものがある。

うなだれている兄ちゃんとの距離はすでにだいぶあったけれども、
心の中で私は、兄ちゃんにエールを送っていた。
……いい商売人に、きっとなれるよ。