トイレの消臭スプレーなるものがある。
その是非はともかくとして、
妻はよく、
「なにもこんな柄にしなくても」と言う。
立派な便器のイラストが、どーんとついているからである。

たしかに、可愛くない。
「なにもこんな……」というのは、まさにそうである。
だが、ふと考えた。
これが可愛かったら、どうなるだろうか、と。

もしかすると、リビングで使ってしまうかもしれない。
玄関で思わずシューッとやってしまうかもしれない。
つまり、他の用途と間違えてしまうかもしれない、と思った。

自分はそんな間違いはしない、などと、
少なくとも私は言えない。
人間、何をどう思い違うか、全く分からない生き物である。
もしかすると、
制汗スプレーとして使ってしまうかもしれないじゃないか。

つまり、
とても人前では見せられないような
便器のデザインであるからこそ、
それはトイレでしか使えない品物であることを
誰にも意識させるのである。

負の要因は、
それが負の場面のものであることを
間違いなく情報として伝えることになるのである。

世の中には、このように、
陰の役割に徹して
それが決して表に出ないように
食い止める仕事をするために、
歯を食いしばっている人がいる。

誰のお陰で楽ができるか、
時折考えてみなければならないと感じた。