少し前になりますが、NHK総合で放送されました〝逆転人生〟「じり貧競馬場執念の復活劇」





皆さんはご覧になられたでしょうか?






20年ほど前から各地の地方競馬が連鎖的に廃止され、自分の競馬歴の中でも中津(大分県)、益田(島根県)、三条(新潟県競馬)、足利・宇都宮(栃木県)、高崎(群馬県)、上山(山形県)、荒尾(熊本県)、福山(広島県福山市)など、多くの地方競馬場が廃止・休止されました。








ご存知、ネット投票が普及され、著しく地方競馬全体の売り上げが大きくなっている近年。









しかし、廃止の危機に直面しながらも、何とか厳しい時代を乗り越えて残った地方競馬も多く、中でも一時の高知競馬は最も厳しい状況と言えました。




最下級条件戦での優勝賞金は10万円・・・



自分が厩務員をしていた園田競馬場でも当時の最下級条件で優勝賞金25万円だったので、如何に高知競馬の厩舎関係者が苦しかったのか分かります。





大幅な売り上げ減少・ファン離れ、それでも高知の関係者は諦めず、打開策を何とか見つけようと奮闘。



ハルウララブームで一時的には凌げても、ブームが過ぎると再び廃止の危機にさらわれます。





スターホースが出てくれば絶対に高知競馬場は賑わうはず。


それが唯一、厩舎関係者にとっての希望。



地方競馬ではレベルの高い南関東でさえ何年かに1頭という中で、高知のような小さな地方競馬場からは中々スターホース誕生は望みにくい現実。








そこに高知競馬・雑賀正光調教師の元に1頭の馬がやって来ます。










高知に流れてくる馬はほとんど故障持ちの馬ばかり。



雑賀先生の元にやって来たグランシュヴァリエも〝不治の病〟と言われる屈腱炎を抱えながらJRAから高知競馬に転入して来ました。









そんな馬をあらゆる工夫で持たせながらJRA勢や南関東など他地区の地方勢に挑んでいく雑賀先生とグランシュヴァリエの姿。




主催側の努力ももちろんですが、やっぱり雑賀先生とグランシュヴァリエの頑張りは苦しい時期の高知競馬にとって本当に大きかったですよね。







番組で映されていないレースでも頑張っていたグランシュヴァリエですが、何と言っても2010年の盛岡・マイルチャンピオンシップ南部杯は衝撃的でした。







自分もリアルタイムで見ていたので今でも鮮明に覚えています。



アメリカ遠征を控えたエスポワールシチーが圧倒的な1番人気、以下もJRA勢が人気を占めていました。


高知のグランシュヴァリエは12頭中11番人気、単勝オッズは600倍以上の超人気薄。



しかし、4コーナーで持ったままの手応えでJRA勢に並び掛け、最後は引き放されましたが3着に大健闘しました。



自分もこのレースを見ていて、4コーナーで「うそ!?高知の馬!?」「まさか!?」と驚き、鳥肌が立ちました。


雑賀先生自身も「まさか!?」と思ったようです。






勝つのが競馬の本分ですが、屈腱炎持ちながらバリバリのJRA勢のGⅠホースらに真っ向勝負で3着を掴み取ったグランシュヴァリエの奮闘に心を奮い立たされたファン・地方競馬関係者は多かったはず。



自分もその1人でした。




それぐらいあの南部杯でのグランシュヴァリエの3着は苦しい高知競馬に射し込んだ大きな光で、経営難に喘ぐ競馬場へ向けての起爆剤にもなりました。





雑賀正光先生はグランシュヴァリエ以前にも何とか廃止寸前の高知競馬からスターホースを誕生させようと管理馬を果敢に他場に遠征させており、2007年にケイエスゴーウェイで盛岡・クラスターカップに挑戦し、5着に入りました。


確かあのクラスターカップ5着は高知所属馬にとって初のダートグレード競走での掲示板入線だったと思います。



自分も園田競馬厩務員時代に縁があって高知の雑賀先生の事は知ってはいましたが、厩舎地区の中で「高知はホンマに賞金安いよな~」「馬にとって高知の次は無いからなー」なんて話を厩務員仲間としたりしていましたね。





あらゆる故障持ちの馬を再生させてきた雑賀正光先生は日本を代表するホースマンと言っても過言では無い方。



かつてホースマンの端くれだった自分も尊敬しています。





雑賀先生が紀三井寺競馬場(和歌山県)時代に可愛がっていたミハルとの別れ、競馬場廃止に従い殺処分されていった多くの馬達を目の当たりした事が雑賀先生の努力・チャレンジ精神の原動力になっているんでしょうね。




そんな人や馬達の頑張りもあり、地方競馬が息を吹き返し、特に高知競馬は15年前に比べ11倍もの売り上げを記録しました。





番組的には凄く感動したんですが、競馬場廃止によって処分されていった馬達の事を考えると単なる感動で終わって欲しくないですね。





賞金も徐々に上がって来ましたし、これから地方競馬にも良い馬を入れてくれる馬主さんも出てくるはず。






第2のオグリキャップのような馬が早く地方競馬から出て来て欲しいですね(^○^)