貴船神社と『鉄輪』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

一旦3時半目覚め、すぐ眠れて今朝は7時ちょっち前に起きた。

エディ・ジェファーソンのアルバム「ライブ・リースト」をレコードで聴いた。

朝食は新潟産新之助でご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干で一膳半。デザートは栃木産とちあいか。

中川聡子→松原慎之介→松丸契→早川ふみ→永井香織とサックス演奏をユーチューブで聴いた。

「ミーユエ」第七話と第八話をユーチューブで見た。

昼食は裏浅草「ダイニング宇田川」へ行った。日替わりランチのチキンカツと牛肉薄切り焼きを注文。スープ、ご飯が付いて1000円也。

満足して店出て、郵便局で金下ろし帰宅。

風呂に小一時間浸り考えとった。何年前やったか、参議院選挙街頭演説中の首相安倍晋三に路上からヤジを飛ばして北海道警察の警察官に排除された男女が居ったが、この度の衆議院議員補欠選挙でのつばさの党は排除されんかったなあ。

 

 

「S吉、寝付きがよくないって云ってたわね。それってもしかしたら、女の人に恨まれてるからかもしれないわ」と、真顔で云うてWみさんは話し出した。

どない云い返すべきか迷うとると彼女に尋ねられた。「京都の貴船神社に行った事ある?紅葉の名所なんだけど」

「無いな。京都のどこにあるん?」

「洛北の山と山の間。神社の近くには割烹旅館が並んでいるわ。夏はね、渓流の上に設えてある床で涼とりながら料理を楽しむのよ」

「貴船神社は何祀っとるんや?」

「水神様を祀ってる」

「すいじんって、粋な人ちゅう事かいな」

彼女、ニコリともせず「水の神。水を司る神様よ」

「けど、寝付きと恨まれるのと貴船神社にどないな関係あるんや?三題噺かいな」

「落語とは違うわ。お能の演目」

「ふう~ん、能かいな」

「遠い昔の或る深夜、京に住む一人の中年の女が野を越え川沿いの道を駆け抜けてやっとの思いで貴船神社に辿り着いた」

「物語が始まったん?」

「そう。その女はね、数日前に夫に裏切られていたの。夫から、若い女と夫婦になると一方的に別れを告げられてしまったのよ。それで、激しい怨みの念を抱き髪が逆立てた女は浮気した旦那に罰を受けさせる為に、幾晩も一心不乱に貴船神社に参っていたの。三つの脚に火を灯した鉄輪を頭にのせ赤い顔料を顔に塗って、神社の御神木に怨みを込めながら木槌で幾つも釘を打ち続けるのよ」

「何かおどろおどろしい話になって来よったな。それって丑の刻参りかいな」

「まさしくそれよ。貴船神社は丑の刻参りで有名なの」

「そやったんか。知らんかった」

「S吉が好みそうな事なのに」云うて彼女はワテの顔繁々見て、また物語続けた。「その女の夫であった浮気男と妻に迎えられた若い女は、妻を追い出した日から毎晩毎晩悪夢に悩まされるようになったのよ。3つの足にロウソクを立てて火を灯した鉄輪を頭に被った元妻は、禍々しい鬼女となって浮気男と若い女の夢に現れ始めるのよ」

「寝汗ビッショリ掻きそうな夢や。それで」と先を促したがな。

「それで、鬼と化した元妻の悪夢にうなされるようになった浮気男は、陰陽師として名高い安倍晴明を尋ねて行き事情を話して、妻であった女の怨みを鎮めてもらおうとするの」

「稀代の陰陽師安倍晴明の登場かいな」

「晴明の見立ては、あなた達新しい夫婦の命は今夜で終わるというものなの」

「展開早いな」

「命乞いされ、清明は懇願した男の家に祈祷棚を設けて、つくった夫婦の身代わり人形を載せて、祈祷を始めるの」

「祈祷はきっとええ成果が現れるやろ」

Wみさんは鼻で笑うて続けた。「そこに火を灯した鉄輪を戴いた鬼女が現れ、捨てられた恨みを述べ、そして夫婦だと思って身代わりに襲い掛かる」

「クライマックスや」

「けれど、清明に祈られ、鬼女は時機を待つと云って消え去った」

「退散したんか。ふたりの生命は清明に守られた訳や」

また鼻で笑うたWみさん「いずれまた恨みを晴らしに来るって云い残して消えたのよ」

「男への未練立ち切れず、強い恨みから生き霊となった悲しき鬼女の物語なんや」

「あなたも生き霊にしてしまった純情な女がいるんじゃん」

「何云うてまんねん」

「だから寝付きが悪いんだわ」

小さく深呼吸してから、「仕事疲れなんや、多分」

「真実から目を背けていない?」

そう彼女が云うと、音が轟いた。雷が鳴ったんや。

「ほら、天はお見通し」