ふたりで芋煮会 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

やはり深夜3時半に目覚めたがトイレ済ませると割と早く眠れ、今朝は高校時代のおバカな友人達と年越し蕎麦食う夢見て7時半に起きたら、雨が降り出した。

ご飯炊ける迄、ウェザーリポートのアルバム「ヘビー・ウェザー」をレコードで聴いた。

朝食は新潟産こしひかりでご飯炊き、愛媛産鰤を焼き二膳。デザートは長崎産みかん2個。

「メジャー・クライムス シーズン2」第15話をギャオで見た。欧米ではクリスマスに絡めてのドラマにええもんあるのに、我が国で正月に絡めたええドラマ見た事無い。つくれん制作者に奮起促したい。

友人達にメールを送った後、大掃除とは云えぬ中掃除したところ腰が重くなったがな。

雨が上がり、昼食は雷門「ラ マニ ビーンズ」へと。パスタにチキンと野菜 トマトソースを選び、セットにして和風前菜盛り合わせとコーヒー付けて計1220円也。BGMのダイアナ・クラールを聴きながら食うた。ここに初めて訪れたのは十年以上前になるが、店主の息子の成長見て、あの頃はこの量食うても全く腹くちくならんかったんに今は満腹になるのもむべなるかなと思うた。

スーパーで食料買うて、郵便局で国民健康保険料支払い年賀状買うて帰宅。

筋トレ30分した。

風呂に小一時間浸り、武漢が発信源の新型コロナに明け暮れした今年を考えとった。防疫対策で各国政府の政治力が問われた一年やった。対策云うたら小さなマスク2枚とすったもんだで10万円配りしか記憶に残らん疑惑桜安倍晋三から依怙地ステーキ菅義偉に首相が変わったが、科学的知見を軽んじる、まともな説明をせぬ、は何ら変わり無し。お寒い有様で、収束どころか深刻な状況が迫っとる。

牛乳飲みながらスティーリー・ダンをユーチューブで聴いた。ホーンのリフがええわなあ。

夕食はカナダ産豚肉、北海道産南瓜、茨城産白菜、長野産ぶなしめじをタジン鍋で蒸し、「麦とホップ ダブルビター」2缶飲みながらご飯食うた。

ほな、もってのほかを土産にして訪れた一週間後の遣り取りを記したメモ書きを写しますわ。

 

 

先週、Eみさんが来週の夕食は久し振りにステーキにすると云うとったんで、今夜はどこ産の牛のステーキが食えるの楽しみにチリ産赤ワイン持参して彼女の住まいへ行った。

ところが、訪れてみるとダイニングテーブルにあるのは卓上コンロ、その上に土鍋がデーンとあるやないかい。

訝し気に声出した。「そこにこれから焼くステーキを入れとるんか?」

スカイブルーのタートルネックセーターに肩掛けエプロン姿のEみさんが答えた。「そんな変な事しないょ」

「もしかして鍋でステーキ肉蒸すちゅうの?」

ダイニングキッチンで背を向けとるEみさんにまた問い掛けた。

「ステーキは入ってません。今鍋の出汁の中に入ってるのはコンニャクだけさ」

「出汁?コンニャク?サスペンスやなあ。ほな、鍋もんの後で出て来るんか?」

「何がぁ?」

「云わんとも分かるやろ」

「何だろ。幽霊さんが出て来るには早い時間だしぃ」

{誤魔化そうとしとるな}と思いつつ「そんなもん出るかい。分厚いステーキに決まっとるやろ」

「ステーキに拘ってるねぇ」

「そりゃそうや、先週さよならする前に来週はステーキにする云うとったやろ」

Eみさんは振り向いた。

「健忘症なの?先週自分が何て云ったか憶えてないのかなぁ」と云い、「困った人だねぇ」を付け加えた。

「お前様はステーキにすると云うた。誑かそうとしてもあかん。ワテのこの両耳がしっかり聞いとった」

ワテは両手で耳指したがな。

「君、先週は牛肉と里芋と長ねぎとコンニャクが入って薄口醬油で煮た山形の芋煮汁が食べたいって主張してた。この耳がしっかり聞いてたね」

Eみさんも自分の耳指した。

{そやった、話の流れで芋煮も食いたいと云うたわな}と思い出し、「デモストライキ、それ食いたかったの先週の話や。今週を素敵に締め括る為にはステーキや」

「そう云われても、牛のステーキは無いょ。これから出すけど冷蔵庫にあるのは牛のバラ肉なのさ」

{山形とか温泉には触れん方がええな}と思いつつ云うた。「バラ?薔薇は鑑賞するもんや」

「お花はね」云うて、「しめじも入れて、芋煮会始めます」と続け他の食材をテーブルに持って来た。

「芋煮会って、今夜は誰か来るんか?Rちゃん?」

「誘ったんだけど、Rちゃん達今夜はデートだって。だからぁ、ふたりでしっぽりだょ」

「ふたりでしっぽりと芋煮会。合わんなあ。相反するわ」

「合うね」と云い切り、Eみさんはステンレス鍋で茹でとった里芋を土鍋に移し、コンロ点火した。

沸騰して来た頃合いで、Eみさんは土鍋に肉としめじを入れ、ワテに灰汁取りのお玉を手渡した。

「灰汁を取るのはS吉の役目だょ」

ワテは土鍋に入る肉を恨めし気に見とった。

「同じ牛肉やけど全く厚みも大きさもちゃうなあ」

ワテの嘆きに知らんぷりのEみさんは俯いて暫し湯気立つ土鍋の中を気にしとった。

時々、ワテは灰汁取りした。

「仕上げにねぎを入れるタイミングだねぇ」

顔上げたEみさんがワテを見たんでまた灰汁を取った。

ざく切りにした長ねぎもしんなりした頃合いになった。

「そろそろいいかも」

「ほな、味見したる」

お玉で掬って食うてみたが、これ迄食うた芋煮汁にちょっち味が落ちた。

「日光の手前、今市やなあ」

Eみさんも食べてみたが同様に思うたらしい。

「なぜかなぁ?」

「日本酒を入れな旨ならんのやでえ」

「入れたよ~」と勢いよく云うたものの、小さな声で「ちょっち安い料理酒」

「それやな。そこケチったからとちゃう」

「きっと入れ足りなかったんだょ。もっと入れてみる?」

「そうしてみ」

Eみさんは土鍋に料理酒を注いでかき回して、数分後小鉢に掬ったもんワテに手渡した。

「今度はどう?」

「旨なった。ねっとり里芋の味ええ」

「やっぱりぱり。じゃあ、いただきますか~」

明るい調子でそう云うたEみさんがエプロン外した姿見てフト思うた。もしかしてちゅう考えがよぎったんや。

「Eみちゃん、その見慣れぬタートルネックセーターはいつ買うたの?」と、丁寧にエプロンたたむ彼女に聞いてみた。

やっと気づいたかちゅう顔になったそのお方は右手のエプロンをテーブルの脇に置きその手を胸に当てた。

「このスカイブルー、素敵でしょ。首も温かくてこれからの季節にピッタリだし」

ワテは素人目にも高級と思うそのセーターを繁々と見た。

「センスええし、よう似合うとる」と誉めた上で、声低めて問うた。「それでいつ買うたんや?」

「いつだったかなぁ」と、わざとらしく首捻る仕草してから裾を摘み云うた。「天使の翼の羽毛のように軽いんだょ。お値打ち品なんだぁ」

語尾が薄らいだEみさんに追い打ちかけたわ。

「その高そうなのを買うたの今週とちゃうんか?」と目を合わせて云うた。

「そうだったかなぁ」

またわざとらしく首捻るEみさん。

ワテは呟いた。「ステーキがタートルネックセーターに化けたんやな」