『ブリッジ・オブ・スパイ』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

『ブリッジ・オブ・スパイ』☆☆☆

登山する夢見た今朝は7時半にお袋の住まいで起きた。

朝食に納豆焼きそばつくって食うた。デザートは愛媛産みかん3個。
朝日新聞を読み、筋トレ30分した。

お袋様が入院しとる病院に行き、退院する支度させ、2週間振りに連れ帰る。手の手術にしては長い入院やと疑問抱く。
昼食はスーパーに買い出しに行き、その牡蠣フライ、野菜の天ぷら、コロッケと妹がつくってくれたけんちん汁でご飯食うた。
自宅にテレビ無いんで、お袋様の所に居ると面白い番組ほんま少ないと思いつつもつい見続けてしまうがな。牛乳飲みながらフィリップ・ノイス監督の「今そこにある危機」とかニュースバラエティとか見た。
夕食もお袋様の所で鰹の刺身、海老のフリット、冷やしトマトでご飯食うた。デザートは静岡産みかん3個。
19時頃起きた桜島の昭和火口での爆発的噴火のニュースをテレビで見た。
電車で帰宅し、友人達にメールした。


月曜日にスピルバーグが監督したコーエン兄弟の脚本作品を観て来た。間もなく終演なんの知って上映終わらぬうちにと行ったんやが、平日日中なのに混んどったがな。
感じ入ったわ。改めて天才やと思うたが、スティーヴン・スピルバーグらしいテーマの志高い作品やった。
流石にコーエン兄弟でシリアスな仕立ての中に笑えるところある脚本もええ。観終えた後で音楽がいつものジョン・ウィリアムズからトーマス・ニューマンに変えとるのに気付いたがこの作品にはニューマンの方が合うとったし、文句無しの満点ですわ。
このドラマは、実話に基づいとって50年代末から60年代の一触即発の冷戦が背景になっとる。
米国の保険関係の訴訟担当弁護士ジェームズ・ドノヴァンが主人公でトム・ハンクスが演じとるんやが、相変わらず上手い。
ドノヴァンに押し付けられた裁判は、ほとんどの国民が死刑を望んどるソ連のスパイ容疑者を弁護せいちゅうもんや。そやから躊躇するのも当然や。とんでもない白羽の矢が立ったもんや。
米国政府としては、民主主義の宣伝の為に弁護士付けて公正な裁判してソ連との差を世界に見せ付けたいちゅう狙いやがな。当然ソ連のスパイの人権慮ったもんやない。
弁護依頼する方はええが、せならん方はリスク大きい裁判や。罵詈雑言吐きつけられ、のみならずそれからの仕事が無くなる可能性高いさかい。
小利口なら、なんやかや云うて拒否する件やけれども、ドノヴァンはFBIが捕まえた敵国老スパイのアベルの弁護を請け負うたんや。
なぜか?
法廷で云うねん。規則を蔑ろにしてはあかんと。米国の規則守る事こそ米国人の証しや云うねん。
法と秩序の存在せえへん所に長き安寧は無い。
しかしながら、ドノヴァンは蔑まれ国民の反感買い、彼の家は敵意により銃撃さえされ、家族の身にも危険が及ぶ。のみならず、その時に来た警官にさえ敵視される始末。
そうした膨張した憎悪に晒されとるのにもかかわらず、ドノヴァンは憲法で約束される基本的人権守る為弁護を真っ当にやり遂げようとするんや。
すると、判事は形式的にやればええと云い放つ。形勢は明らかにドノヴァンに不利。
そこでドノヴァンは判事の住まいに出向き直談判、近い将来起こる事で説得すんねん。
そして、裁判となり、陪審員は有罪で、判事の下した判決は30年の懲役刑やった。当然と思われとった死刑や無かったさかい、傍聴席からは「殺せ!」「絞死刑!」と叫びが上がり大変な騒ぎですわ。
電気椅子に座らせられると覚悟しとったが、ドノヴァンの努力で死刑にならず済んだルドルフ・アベル役はマーク・ライランス。最初から最後迄静かに演じ切るんやけど、トム・ハンクスに負けず劣らずの演技でんがな。
数年後、果たしてドノヴァンの予見通りとなった。
情報を得ようと秘密偵察機U2でソ連領空飛んどったパイロットのパワーズが撃墜されて脱出したが拘束されてまう。パワーズはいざちゅう時は死ねと渡されとった毒で自殺せんかったんで、国に戻っても相手にされなくなるのを怖れとる。ドノヴァンは、パワーズがアベルや自分のように嫌われ者になるのを分かっとる。
もう一人、東ドイツ側に監禁されとる米国人が居んねん。壁建てとる最中に東ベルリンに住んでいる彼女に会いに行ってとっ捕まった学生や。
ちゅう訳で、捕虜交換となるんやけど、古代から戦争の勝敗を決めるのは情報や。どっちの国のお偉方も、スパイであろうがパイロットであろうが捕まった者から情報漏洩されなければ生きていようが死んでしまおうが構わんちゅうのが本音。その実、身柄の交換をするんや無くて機密情報の交換なんや。
そこでまたしても白羽の矢がジェームズ・ドノヴァンに。大統領ジョン・F・ケネディ政府のご指名や。
指名はされたものの、時は冷戦の真っ只中やさかい並大抵のプレッシャーやない。
しかも、やらせようとする米国政府は交渉に一切関与せんと云うねん。失敗しても助けられないと云うねん。そして、交渉場所に指定されたのは、西へ逃れる者を阻むベルリンの壁が建てられとる東ベルリンなんや。
なのに、ドノヴァンは一民間人として極秘の交換交渉を引き受けますんや。
お目付け役のCIAは、状況からしてパイロットだけ取り戻せばええとドノヴァンに云う。CIAが望むのはパワーズの脳内の情報だけやからな。
ところが、ドノヴァンはソ連人スパイと米国人パイロット+学生との一対二の捕虜交換を主張し、CIAと対立すんねん。
困難な任務やが、ドノヴァンはソ連と東ドイツの思惑の違いを利用し落としどころを探り、粘り強くタフな駆け引きし、相手の面子立て交換を勝ち得る。人質引き渡しは、ルドルフ・アベルとパワーズはグリニーケ橋で、学生はチェックポイント・チャーリーで。
成し遂げて家に戻り眠り込むドノヴァンやが、父親として夫として誇らしい姿がテレビや新聞で報道される。電車に座る小母ちゃんのドノヴァン見る目も変わった。
彼の命懸けの孤軍奮闘は、一方は売国奴と見做されもう一方は英雄視。彼としては職務に忠実なだけやったのに。
でもな、志を貫き通すちゅうのが凡人には出来ひんのや。
並外れた者しか正義は体現出来ひん。軽々しく正義を口にする輩はそこいらに居るが、そうした連中の述べる正義は虚しいもんや。
しかし、ジェームズ・ドノヴァンが有名なビッグス湾作戦失敗の捕虜の帰還交渉やった人物とは全く知らんかった。驚いた。
スピルバーグのメッセージは、凡人であっても、否凡人であるからこそ多数派の恐ろしさおぞましさに捕り込まれ埋没するなちゅう事なんですわ。
それに、己の価値観と明らかに異なる者との付き合い方はどないすべきなんか真摯に自問せなならんちゅう事なんですわ。
ドナルド・トランプはこの映画観たやろか?