『失楽園』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

元日から行っとったお袋の所を雑煮食うてから出て、電車乗り継ぎ穴の都東京に戻って来て、昼食には切り餅四つ焼いてくめ納豆のせて食うた。デザートは青森産りんご。
五十肩やろか、昨日から左肩がちょっち痛むんや。右肩は何ともないんで、年賀状書き出したんやが、10枚書いたら飽きてきたんで、これ記し出しましたんや。
相変わらず元日のテレビは面白うないもんばかりやったんで、年末から元日の朝日新聞読んどって、ガブリエル・ガルシア・マルケスが昨年卯月に亡くなっとったの知った。大学生の時に「百年の孤独」読んで、凄いなあ思うた作家や。ガルシア・マルケスの隣が渡辺淳一やった。


♂共の間では、艶福家やとまだ中年で亡くなっても“大往生”とか云われ、泣かせて来た女の数とか数えられる事となる。
実際ワテが三十代になりたてのある日の事、知人の当時信金勤務しとった方が、彼の同僚で三十代で“大往生”された方が付き合うとった女の数を笑いながら数えとるの見とって、お盛んやと若うても亡くなって“大往生”とか云われておちょくられるんや、と同情したのが初めてやったが、その後そないな場面を何度も見てきましたわ。
その話を友人H君にした事あるんやが、「男は亡くなった時に嫉妬されてこそ本望や」と、H君は云うたんやが、どうなんやろか。
女性遍歴を重ね、女誑しと♂共に羨ましがられた渡辺淳一が80歳で亡くなっとったのを、元日にお袋の所で読んだ年末の新聞の2014年に亡くなられた方々欄で知った。
渡辺淳一で思い出されるのは、彼の愛人と云われた方が以前勤務した会社に居った事や。当時の社長が渡辺淳一と親しく頼まれて入れたと噂されたが、この手の噂は何より早く伝わるもんで、それを社内で知らぬ者居らんかった。
その御方は、容姿所作だけでなく、仕事もきっちりするんで、堅物として知られた男でさえ憧れめいた云い方する程の淑やかな女でしたなあ。何人からも渡辺淳一が裏山椎茸や云うとったの聞いたでえ。
遠目で見とったワテも、渡辺淳一の何れかの小説には必ず登場しとるやろと疑わぬ御方やった。
けどな、渡辺淳一の著書でワテが読んどるのは『失楽園』一冊のみなんですわ。もしその御方と話す機会を持っとったら、次々と彼の小説読んどったに違いないんやが。
『失楽園』ちゅうと、教養お持ちの方はミルトンや創世記の方を思い浮かべるかもしらんが、渡辺淳一のそれは日本経済新聞に連載され話題になり、本になってはベストセラーになってん。鴨とクレソンの鍋が印象深い物語や。その後映画にもなって、森田芳光が監督し、主演は役所広司と黒木瞳やった。
筋を大まかに云えば、情痴は狂気に到る事があるちゅう話ですわ。それと、独占欲には注意しまひょちゅう話でもある。
この小説の主人公は、仕事も家庭も思うように行っとらぬいま二つ冴えない中年男なんやが、カルチャースクールの書道講師を務める魅力溢れる齢の差離れた人妻と出会って惑わされ深みに嵌り込んでしまうや。それは烏賊にも蛸にもな話ではあるが、なぜか魅力溢れる女もまた情熱を失う仕事に回されてやる気無くしとる男に入れ込んでしまうんや。それで、ふたりして蟻地獄に落ちて行くねん。
冴えない中年男にとっては、♂の願望描いた嬉しい夜伽話ですわな。
これ読んどったワテの周りの職場含めた女子達は、どうしてあないな男に惚れるのか分からぬ、感情移入出来ぬと云う人ばかりでしたなあ。殊にJAZZ好きには不評やったが、ワテ本音なんやろかと脳内に?マークが点滅したがな。
そやさかい、疑わしく思うて、「ワテにはなかなかリアルで面白かったでえ。小説でくらい常識、分別から距離置いて、ええ女にとことん惚れられ性欲に溺れる夢見させてくれても罰当たらん」とか彼女等に云うてみたんや。
そしたら、袋叩きになってしもたわ。「男目線でしかない」と断ぜられ、しかも、「あなたは不倫肯定してるの」と問われる始末で、「御袋が親父の不心得で長い年月苦労しまくりやったし、ワテも嫌な思いし続けたんで、ワテは肯定せえへんよ」と、心ならずも告白せなならんかった。
ちゅう訳で、それでファンタジーから現実に引き戻されてしもたんやが、渡辺淳一って、読者に女性多く人気が高かったんとちゃうの?
『失楽園』には、そないな思い出があんねん。
思い返せば、読後にバブリーな印象を持ったのはなぜなんやろか?時代反映しとるんか?今読み返せばより強くそれを感じるやろか?
ところで、この作品では花鳥風月には向かわず人の愛憎に踏み入ってるんやが、渡辺淳一作品には日本の精神性と世俗生活の調和を大切にしたもんあるんやろか?
いずれにしても、男女各世代向けファンタジー小説は必要ですわな。