先週リリースされました僕の野崎良太名義でのpiano Album『Life Syncopation』の解説をしたいと思います。

1. Life Syncopation
     このアルバムのタイトル曲。別ヴァージョンがJazztronikの『Love Tribe』に収録されて
     いますが、こちらがオリジナルです。多分僕の曲に聞き慣れている人にはこのピアノのフ
     レーズや奏法はすごく耳なじみの良いものなのではないかなと勝手に思っています。自分
     でも僕っぽい曲だなと思います。サラっと流れて終わってしまうのですが、実は譜面に書
     くと厄介な曲なんです。内声(メロディーやベース部分ではない音)が意外と複雑な事に
     なっていて、僕は手癖だから弾けるのですが、譜面を見てこれを弾けと言われたら
     『ちょっと。。』となってしまいそうな譜面ツラが見た目難しい曲です。あまりピアノで
     は聞かない奏法(多分)なのですが、元々は僕がブラジル音楽で聞かれるギターの様な演
     奏をしたいなと思って色々と試していたら出来上がった奏法です。

2. Timeless
     僕の周りで一番人気の曲です。すごく意外でした。あまり凝らずに一番素直に作った曲で
     す。いつも曲を作る上で不思議なのは、素直に作った曲というのは曲の途中でどんなに転
     調・展開していっても、必ず自然にもとに戻れるんです。そして素直に作った曲というの
     が一番沢山の人に好かれる。もの凄く試行錯誤して自分では『やった!!これはかなり良
     い出来!!』と思っている曲ほど意外とあまり反応がなかったりする。不思議です。素直
     に作った曲というのは素直すぎて自分が見られているようで作曲者本人だけがなんとなく
     恥ずかしいのかな?逆に聞いている人にはすごく伝わるものがあるのかな?なんにせよ、
     新しい古い関係なくずっと聞かれる曲になると良いなと思います。

3. Blue/Green
     実はもの凄く環境問題に興味があるんです。今現在も何冊か環境に関する本を読んでいま
     す。それについてはまた別の機会に書きますが、このタイトルのBlueとGreen、これはまさ
     に自然をイメージしたものです。自然破壊の警告の様な曲にするのか、自然の素晴らしさ
     を表現するのか、悩みましたが今回は後者の方にしました。目を閉じて情景を頭に思い浮
     かべながら聞いてみて下さい。

4. Valsa
     ポルトガル語でワルツという意味です。ブラジルの音楽というのは様々な音楽が混ざって
     出来ている本当の意味でのCrossover Musicだと僕は思っています。そこにはJazz,Classic,
     民族音楽,多種多様な音楽が混在しています。このアルバムのテーマに合った型でシンプル
     に僕なりにブラジル音楽を表現してみました。一番アルバムの中では展開があり複雑かも
     しれません。音の進み方も半音階的なものが多く、さらに転調も多いかもしれません。
     その中にある心地よさを見つけてもらえたらなと思います。
     ブラジルと聞いて『Bossa Nova』と思い浮かべる人も少なくないと思いますが、この曲に
     形式としての『Bossa Nova』は存在していません。ちなみに、僕的にこの曲はこのアルバ
     ムにおける裏タイトル曲でもあります。

5. That Day
     この曲を聴くとレコーディングの日々を思い出します。毎日毎日調律の終わったピアノを
     レコーディングの前この曲でチェックしていました。 昨日との音の差は無いか?今日の
     ピアノの鳴りはどうか?開始早々チェックしながらもこの曲の緩やかさから眠気も襲って
     くるのですが(笑)僕にはそんな日々がこの曲を聴いてるとよみがえってきます。思い出
     や記憶がゆっくりと近づいて来てハッと目の前によみがえり、また再び遠くに消えてい
     く、そんなイメージの曲です。

6. Afternoon Breeze
     元々は葉加瀬太郎サンに提供させてもらった曲です。3、4年前に作ったのかな。その頃
     からとても気に入っていた曲です。オリジナルの方はヴァイオリンにギターにピアノに
     コーラスにドラムにと、とても豪華な雰囲気の曲だったのもあって、今回アレンジになか
     なか苦労しました。なにせピアノ一本なもんで。とても今の季節にあっている曲だなぁな
     んて思います。

7. Rain
     その名の通り『雨』のイメージの曲です。ポツポツと降り始めた雨が徐々に強さを増して
     いく。そんな雰囲気の曲です。ずっと聞こえるG(ソ)音は雨のしずくを表現していま
     す。雨もたまに風情があって良い時ありますよね。曲の最後はスパッと終わってしまいま
     すが、止んでスカッと晴れたのかどうかは皆さんのお好みで。

8. Quiet Echoes
     僕は不協和音というのが好きなんです。響きはその名の通り不協なのですが、上手いポイ
     ントにそれがくると本当に綺麗に響く。少しだけそんな不協和音に注目して作った曲 
     す。多分この曲は本当の生ピアノでないとこの響きは得られないでしょう。この曲を演奏
     していて心底やはり生ピアノは良いなと思いました。もちろんシンセサイザーや電子ピア
     ノもそれぞれの良さがあるのですが。電子楽器の良さはそれぞれの音がハッキリと出る
     事。ただそうする事によって全ての音が直球で聞こえてきてしまう。不協和音の音が全て
     ハッキリと聞こえた時、あまり心地良くはない。この曲の様に静かな曲の場合はなおさら
     で。響きというのは実は曲の中でとても重要視すべきところだと思います。ヘッドフォン
     等でこの曲の出だしの静かな箇所をじっくり聞いてみて下さい。色々な音がその和音の中
     から聞こえてきますよ。

9. Where I Live
     東京という場所は本当に不思議な所。様々な場所があって恐ろしい程の数の人間がいて。
     まるでNYかLondonかと思う様な場所があるかと思うとその裏にはお寺や神社があった
     り。青山と浅草ではまるで違う国の様。僕の外国の友人達は皆東京に憧れている。そんな
     東京を題材に曲を作ろうと思ったのですが僕の仕事柄のせいもあるかもしれないですが、
     昼のイメージがどうしても浮かばない。夜のイメージしか浮かばない。気のせいか、この
     曲だけ暖かみも足りない様な気が。。

10. Little tree
     Jazztronikの『en:Code』というアルバムに収録されている曲のピアノヴァージョン。オリ
     ジナルでは葉加瀬太郎サンがヴァイオリンでメロディーを弾いています。ピアノで演奏す
     るとなんともオリエンタルな雰囲気を醸し出す曲。原曲のJazzな感じはほとんど無くなっ
     ています。ピアノ1台にした事によってよりいっそうLittle Tree感が出た気がします。

11. Everlasting Wish
     僕の曲にしては珍しく素直に明るく長調で始まる曲。それもドミソの和音で。実はかなり
     昔に、と言っても4年位前かな、作った曲です。なかなか発表する機会が無く、今回やっ
     と表舞台へ。色々なアレンジを経てこのピアノヴァージョンに至りました。パーカッショ
     ンやドラムを入れたヴァージョンもありました。Timeless同様とても素直に作った曲で
     す。アルバムの最後にふさわしいのではないかなと思っています。