今から10数年前、20本程作られたSTUN-RISEと言う素晴らしいソリッドギターがあったのですが、ネット上には殆ど資料が無い状況です。
このまま忘れら去られてしまうには残念だと言うこともあり、手元に何枚かある写真を使って何か書いてみようと思いました。
(写真の多くはかつてメーカーがWEB公開した写真を転用していますが、製作過程におけるプロトの物が含まれていたり、実際の販売時には変更されたパーツ等もある様です)
このギターに出会ったのは2007~8年頃、渋谷の某楽器店でした。
オリジナルデザインの国産ギターは中々手に取ってみようと思う物が少ない中、楽器店で見かけたソレはちょっと気になる物でした。
気軽に買える値段では無かった(40~45万)こともあって、その時は試奏しなかったのですが、後日ネットで調べて色々なことが判りました。
STUN-RISEを製作した「飛鳥」と言う工房は、デバイザーのグループ会社であり、MOMOSEやHEADWAYを作ってた職人集団です。
その飛鳥の中核で腕を振るっていた鈴鹿清仁氏が先頭に立って作り上げたのがSTUN-RISEのStyle-Tと言うギターでした。
写真を見て頂ければ判ると思いますが、エキゾティックな材を組み合わせた大胆で印象的なデザインです。
もちろん全てが完全1本物。
正確に何本作られたかのは判りませんが、プロトモデルを含め、写真やシリアルNo.から判断すると25本弱と推察しています。
手に取ってみると細部まで丁寧に仕上げられており、格調すら感じられる物でしたが、それ以上に音や弾き心地に感心してしまいました。
単純に木材の組合わせと塗装だけでもバリエーションは色々生み出せそうですが、
ボディはソリッドだけでなく、ホロー構造物(刳り抜きのパターンもいくつかアリ)もありました。
PUはローラー・インペリアル or リンディ・フレーリンPure PAF(P90タイプもアリ)
ブリッジ周辺は、バーブリッジ or セパレートタイプ。
ですので一見同じ様に思えても個性は様々なギターでした。
見た目にも大きな特徴の1つが、フロントPU周辺に広がるピックガードの様な木材。
これは薄い板を貼っているのではなく、Curved Tone Boardと呼んでいる最大厚17mm程の単板を埋め込んでいます。
ボディトップ、ボディバック、そしてこのフロントPU部周辺のCurved Tone Boardの3種の木材を使用していることからStyle-T(Triple)と名付けたそうです。
私は「この部分に別の材を入れたところで、フロントPUにどの程度の影響があるのかな?」と最初は懐疑的だったのですが、実はネックのジョイント部周辺を押さえ付けることが出来、アタックやサスティン等、レスポンスが向上するとのことでした。
つまりけしてファッション的な物ではなく、ギター全体のトーンに影響する重要な物だったのです。
因みにStyle-Dと言うモデルも何本か作られましたが、これは単種のボディ材に、Curved Tone Boardの2つ(ダブル)の材を使用したより低価格な物でした。
もう一つの特徴は実際にギターを構えて頂ければ感じられると思うのですが、同じセットネック構造のレスポールに比べ独特で楽なポジションが体験で来ます。(ごめんなさい…これは文字で上手く表現できません)
私が試奏したのは6本。
最初はロングスケール+やや幅広のネックに戸惑いましたが、慣れれば問題無さそうな範囲でした。
とにかく反応が早く、上下にも左右にも広いレンジで気持ち良く鳴ります。
ブミーになりがちなフロントのハムも、しかっりローが伸びているのにモタつきません。
モダンな物もあればヴィンテージ寄りな物もあってと、どれも素晴らしい完成度でした。
続く…