「最近、おしっこの回数が増えた気がする」「トイレで何度も踏ん張っている」「尿に血が混じっていた」——そんなサインに気づいて、不安になっていませんか?

それは、犬の膀胱炎(細菌性膀胱炎)のサインかもしれません。犬の膀胱炎はとても発生頻度が高く、動物病院でも日常的に見られる病気です。早めに気づいて適切にケアすれば怖い病気ではありませんが、放っておくと腎臓にまで影響が及ぶこともあります。この記事では、症状・原因から、おうちでできる予防ケアまでをわかりやすく解説します。

この記事の結論

・犬の膀胱炎の多くは、尿道から細菌が入り込む「細菌性膀胱炎」。原因菌の約半数は大腸菌(E.coli)です。

血尿・頻尿・尿の悪臭に気づいたら、早めに動物病院へ。

・適切な抗生剤で多くは改善しますが、再発しやすいため、十分な水分補給など日常の予防が大切です。

犬の膀胱炎(細菌性膀胱炎)とは?

細菌性膀胱炎とは、膀胱に細菌が感染して炎症が起きた状態のこと。多くは、尿道から細菌が上っていく「上行性感染」によって起こります。

通常、体には粘膜バリアや免疫の働きなど、細菌感染を防ぐ仕組みが備わっています。ところが、このバランスが崩れると感染が成立してしまいます。最も多い原因菌は大腸菌(E.coli)で、原因の約50%を占めます。

また、膀胱炎はほかの病気の合併症として発生しやすいのも特徴です。たとえば、ステロイドや免疫抑制剤を服用している子、糖尿病・クッシング症候群・慢性腎不全・椎間板ヘルニア・腫瘍を抱える子などで多く見られます。実際、椎間板ヘルニアの犬の約27%が細菌性膀胱炎と診断されるという報告もあります。

こんなサインに注意——犬の膀胱炎の症状

膀胱炎の症状は、おしっこに関するものが中心です。次のようなサインが見られたら注意しましょう。

膀胱炎のサイン・チェックリスト

  • 何度もトイレに行く(頻尿)
  • 排尿しづらそう・踏ん張っているのに出ない
  • 排尿時に痛そうにする
  • 尿に血が混じる(血尿)
  • 尿に分泌物のようなものが見える
  • いつもと違うおしっこの悪臭がする

このうち、排尿時の痛みや排尿困難は飼い主さんが気づきにくい症状です。実際には、血尿・尿の分泌物・悪臭・頻尿といった「見た目や行動の変化」をきっかけに来院されるケースが多くなっています。

また、排尿の姿勢を取り続けているのも膀胱炎のサインかもしれません。「トイレに長くいるな」と感じたら、注意して様子を見てあげてください。

動物病院での診断は?

細菌性膀胱炎は、尿検査で尿の中の細菌や炎症細胞を確認することで診断します。さらに膀胱エコー(超音波)で膀胱の状態を詳しく調べることもあります。

尿検査の採尿方法には注意が必要です。ガイドラインでは「膀胱穿刺(針で膀胱から直接採取)」が推奨されていますが、抵抗を感じる飼い主さんも少なくありません。ただ、自然排尿で採った尿は膀胱の外で細菌に汚染されていることが多く、正確な診断のためには、やむを得ない場合を除き穿刺による採取がすすめられます。

おうちで採尿して持っていく場合のポイント
室温では45分ごとに細菌が2倍に増えるといわれています。採尿後はできるだけ早く、冷蔵保管して持参しましょう。

治療と、放置するとどうなる?

細菌性膀胱炎は、多くの場合適切な抗生剤でよく治ります。ただし、治療が遅れて膀胱炎が続くと、感染が腎臓まで上っていき「腎盂腎炎」を起こしたり、重症化すると「敗血症」につながったりすることもあります。だからこそ、早めの受診が大切です。

抗生剤を使う前には、尿培養と薬剤感受性検査で「どの細菌による感染か」「どの抗生剤が効くか」を調べます。検査結果を待つ間は、経験的によく使われる抗生剤で治療を始めます。適切な抗生剤であれば、48時間以内に症状の改善が見られます。

治療では、症状が改善しているかが何より重要です。改善が見られない場合は、感受性検査の結果に応じて抗生剤を変更します。急性の膀胱炎なら治療期間は3〜5日程度が目安ですが、繰り返し再発する膀胱炎では、より長い期間の服薬が必要になることもあります。

再発を防ぐ、おうちでの予防ケア

細菌性膀胱炎は再発しやすい病気です。だからこそ、予防と日常の管理がとても大切になります。

まずは十分な水分をとれる環境づくり。こまめに新鮮な水を用意したり、水飲み場を増やしたりして、しっかり飲める工夫をしてあげましょう。あわせて、膀胱炎の原因となる基礎疾患がないかを確認し、管理することも重要です。

栄養面では、クランベリー抽出物やD-マンノースといった成分が、膀胱炎の再発リスクを下げる助けになる可能性があるといわれています。

獣医師が教える「治療がうまくいかない5つの理由」

  1. 抗生剤の選び方や治療期間が適切でなかった
  2. きちんと投薬できなかった、または嘔吐などで薬が十分に効かなかった
  3. 感染を繰り返し起こす基礎疾患を見つけられなかった
  4. 複数の種類の細菌に同時に感染していた
  5. 薬剤耐性ができてしまった

だからこそ、愛犬の症状をよく観察し、「原因が何なのか」を獣医師と一緒に正確に見極めることがとても大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. 血尿が出たら、すぐに病院へ行くべき?

A. はい。血尿は膀胱炎の代表的なサインです。放置すると腎臓への感染に進むこともあるため、早めの受診をおすすめします。

Q. 犬の膀胱炎は自然に治りますか?

A. 基本的には適切な抗生剤による治療が必要です。自己判断で様子を見続けると悪化や再発につながることがあります。

Q. 家でおしっこを採って持っていってもいい?

A. 可能ですが、室温では45分ごとに細菌が2倍に増えるため、採尿後はすぐに冷蔵保管して持参しましょう。正確な診断のため、病院での採尿(膀胱穿刺)がすすめられる場合もあります。

Q. 再発を防ぐにはどうすればいい?

A. 十分な水分補給と、基礎疾患の管理が基本です。クランベリー抽出物やD-マンノースなどの成分も予防の助けになる可能性があります。

まとめ

犬の膀胱炎は、発生頻度が高い一方で、早めに気づいて適切にケアすれば十分に対応できる病気です。血尿・頻尿・尿の悪臭などのサインを見逃さず、気になることがあれば早めに動物病院に相談しましょう。そして、毎日の水分補給や体調管理で「予防」していくことが、愛犬の健やかな毎日につながります。

 

 

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。気になる症状がある場合は、必ず動物病院を受診してください。

出典:Olin, S. J., & Bartges, J. W. (2015). Urinary tract infections: treatment/comparative therapeutics. Veterinary Clinics: Small Animal Practice, 45(4), 721-746.