★今日のベビメタ
本日1月24日は、2014年、筋肉少女帯／BABYMETAL＠TSUTAYA O-EASTが行われた日DEATH。

Metal Galaxy Tourのイギリス公演は、2月19日スコットランドのグラスゴーから、2月20日カーディフ、2月22日マンチェスター、2月23日ロンドンと南下していくコースをたどる。2016年のレッチリ前座ツアーとは逆方向である。
この間OAを務めてくれるのは、イギリス・サウサンプトン出身のホラーパンクバンドCREEPERである。
KOBAMETALが選んだのは、ここでもやっぱりホラーなんですね。
結成は2014年で、ボーカル、2人のギター、ベース、ドラムス、キーボードの６人組。
2014年6月に1st EP『Creeper』をリリース、Roadrunnerレコードと契約した後は、2015年9月に2ndEP『The Callous Heart』、2016年2月に3rd EP『The Stranger』、2017年3月に1stフルアルバム『Eternity, In Your Arms』をリリースし、UKオフィシャル・チャートで18位、ロック＆メタルアルバムチャートでは1位を獲得した。
最新音源は、2017年12月の4th EP『Christmas』だが、今年2020年5月に2ndフルアルバム『Sex, Death & Infinite Void』をリリース予定。
2015年のDownloadフェスティバルに出演し、BABYMETALがBest Live Band賞に輝いた2016年の『Kerrang!』Awardsで、CreeperはBest British Newcomer賞を受賞、『Metal Hammer』Golden Gods AwardsではBest New Band賞を受賞した。

ホラーパンクは、1970年代後半のパンク・ムーヴメントの中で、ホラー映画やゴシック・ファッションのテイストを取り入れたサブジャンルで、ポストパンクのゴシックロックとほぼ同義。1980年代のロカビリー復興ブームでは、ホラーパンクの影響を受けて、サイコビリーというジャンルも派生した。
「アイドルとメタルの融合」を掲げて大成功したBABYMETALの影響で、“何でもあり”となった日本のアイドル界には、黒服系ホラーパンクをモチーフとするXTEEN、サイコビリーのめろん畑a go goがいる。
だが、Creeperの音楽性は、表層的なものではなく、メンバーの生い立ちや思想を反映した切実なものだ。
Creeperの公式サイトおよび英語版Wikipediaによると、フロントマンのボーカリスト、ウィル・グールドは、影響を受けたものとして、1970年代後半のニューロマンティックのグラムロック（デヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン、ロキシーミュージック）、1980年代のダークウェーブ（ポストパンク、ゴシックロック）として、アメリカのパンクバンドMISFITSやロンドンパンクの雄The Damned、さらに「エクソシスト」、「トワイライト・ゾーン」といったホラー映画や、「ロミオとジュリエット」、「ピーターパン」、スティーブン・キングの小説にもインスパイアされたという。
アルバム『Eternity, In Your Arms』は、ピーターパンの物語を下敷きにし、ステレオタイプな大人になっていくことに対する「怒り、混乱、欲望、逃避、心痛」をテーマにしたドラマ仕立てになっている。
グールドは、「ぼくは、生活のほとんどをツアーに費やし、最小限の教育しか受けておらず、世間に対する現実的な責任を回避してきた。JMバリーの物語（『ピーターパン』）を読んで、ぼくの人生にとてもよく似ていると思った。」と語っている。
2016年8月のレディング＆リーズフェスティバルに出演した後、メンバーのSNSアカウントが突如非表示となり、ホワイトノイズの映像にアクセスすると、「ジェームズ・サイスの消失」というサイトがアナウンスされた。
このサイトは、サウサンプトン市のWorld’s Fairに参加していたジェームズ・サイスという39歳の男性が、ホテル・ドルフィン309号室に謎のメッセージを残して消えたという謎を追求するサイトだった。

なぜかそこにウィル・グールドが次々と証拠物件の写真をアップし、巧みに3rd EP「The Stranger」の告知が織り込まれていた。サイトオープンの2か月後の10月には1stフルアルバム『Eternity, In Your Arms』のリリース告知がアップされた。
要するに架空の事件をもとにしたミステリー仕立てのプロモーションだったのである。
https://jamesscythe.tumblr.com/
ネット空間に展開するミステリーに音楽をリンクすることで、Creeperは楽曲という「商品」の枠を超えた「物語」を、オーディエンスと共有しようとしたのだろう。
昨日取り上げたSKYNDもCreeperも、メタルバンドというくくりからは外れ、ポストパンク、ハードコア、インダストリアルといったサブジャンルに位置づけられている。
しかし、シアトリカルでドラマチックな物語性という共通項があり、しかも楽曲のテーマは不可解な人間性の暗部に焦点が当てられている。
BABYMETALの楽曲「BABYMETAL DEATH」はデスメタルの色合いが強く、「メギツネ」「悪夢の輪舞曲」には、欧米人から見たジャパニーズホラーの要素が含まれている。
2014年の欧米デビュー時、ライブの最後に「We are?」「BABYMETAL!」のコール＆レスポンスのあと、「3、2、1！」とお立ち台からジャンプして着地するまでの“空中浮遊”の写真がレヴュー記事に掲載され、「日出づる国からやってきたメタル魔法少女」の強烈なインパクトを与えたことも紛れもない事実である。
だが、2019年までにライブで披露された『METAL GALAXY』収録の「Distortion」「Starlight」「Elevator Girl」「Kagerou」「PA PA YA!!」「Shanti Shanti Shanti」「Arkadia」「Shine」「DA DA DANCE」といった楽曲は、スピード感とコケティッシュさが混じった曲が多く、原初的な畏怖の感情を与えるのはインストの「In the Name of」のみである。
いや、そもそもBABYMETALといえば、「ギミチョコ!!」や「KARATE」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」「Road of Resistance」といったハードコア＆パワーメタルだという意見もあるし、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」「いいね！」「4の歌」「おねだり大作戦」などのKawaiiメタルこそ、BABYMETALの本質なのだという意見もあるだろう。
いずれにしても、「DADADANCE」で始まり、「ROR」もしくは「Shine」「Arkadia」で終わる現在のセットリストでは、途中に「メギツネ」が入るにしても、ジャパニーズホラー感はほとんどない。
それを補い、ライブ全体の印象として、人間性の暗部や不可解さ、奇妙さといった深いテーマをオーディエンスに感じさせるために、KOBAMETALは、あえてSKYNDやCreeperをOAに起用したというのは、穿った見方だろうか。
それとも、現地のプロモーターが、奇妙な東洋の少女メタルバンドBABYMETALと組み合わせるには、若手で、クセが強いこの２つのバンドを推薦したということなのだろうか。
2019年のロンドン公演ではAMARANTHE、全米横断ツアーではAVATARとThe HU、SSAと神戸WMHではBring Me the HorizonがOAに起用された。
どのバンドもシアトリカルだが、個性的で、深いテーマを追求するバンドといえる。
ヘヴィメタルは、激しいビートや重低音のディストーションサウンド、シャウトやグロウル、長髪・タトゥー・スタッズ付き革ジャンといったスタイルを指すのではない。
そのスタイルでなければ表現できない必然性があるからああなるのであって、売れようとして形だけ真似しても、ロック・スピリットがなければ笑いの対象にされても仕方ないとさえ思う。
BABYMETALが欧米で受け入れられたのも、SU-の歌唱、YUI、MOAの激しいダンスパフォーマンス、神バンドの演奏に、メタルの魂がこもっていたからだ。
その意味で、SKYNDとCreeperがOAを務めてくれることは、METAL GALAXY TOURに深みを与えるだろう。
いよいよ明日は幕張初日である。ライブレポートを深夜にアップする予定。

CREEPERのホラー