- 登場人物 -
エル:駆け出しの素人プログラマーの少年。
マスタ:キャリアとスキルの高いPL級の男。年齢不詳で謎多き人物。
【あらすじ】
ひょんなことから、パラレルワールド「アイティギョーカイ」に飛ばされた少年エル。
この世界では、プログラムと呼ばれる魔法言語が発達した世界であった。
少年エルは、この世界で生き延びるため、プログラムを習得すべく、ピンチを救って
くれた謎の男マスタの元でプログラム修行をすることになった。
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そうして、エルは、男と出会った森の中。
どこぞで拾ってきた木の板を黒板代わりに、マスタのご高説が
はじまったのだった。
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マスタ「まず、はじめに言っておく。この世界に、『プログラマー』などと言う職業はない」
エル「えっ?! だ、だって、マスタは、ぼくをJavaで助けてくれたじゃないですかっ!
マスタは、だから、プログラマーなんでしょ?!」
マスタ「近いが、遠い。 『プログラマー』とは、“プログラ”ムを“マ”スタ“ー”した者に
授けられる尊称だ。 JavaやDelphiやCなどの言語の術者は、『Java使い』や『Delphi使い』と言う」
エル「C使い。。。? そんなにいっぱい魔法言語があるんですか?」
マスタ「そうだ。それに、人によって、得手不得手がある。 例えば、COBOL使いの素養がある
人間が、C#を覚えようとしても、C#使いの素養のある者と比べ習得にはだいぶ時間がかかる
し、仮に習得出来たとしても、素養のある者と比べたら、粗末なものにしかならない」
エル「えっ?! そ、そんな! じゃあ、ぼくはJava使いじゃなくて、もっとぼくにあった言語が
あるかもしれないってことですか?!」
マスタ「それを今から、調べてやる」
エル「は、はいっ。。。」
マスタ「素人であるお前が今、はっきりさせておくことは、とりあえずは『手続き型志向』か、
『オブジェクト志向』かのどちらかで充分だ。」
エル「手続き型志向。。。? なんですか、それは?」
マスタ「平たく言えば、プログラムの体系だ。 もっと言えば、お前の『考え方』のことでもある。
どのようにプログラムを扱っているかで、お前がどの言語の素養があるかがわかる」
エル「そう、ですか。。。 出来たら、少しでもかじっているJavaの素養があるといいんだけど」
マスタ「そいつばかりは、お前次第だ」
エル「はい。 でも、どうやって調べるんですか?」
マスタ「ああ、それは簡単だ。古来より、言語使いたちの間で使われている『コレ』を使う」
エル「え? ・・・『ソレ』って」
マスタ「そうだ、ビールのジョッキと、缶ビールだ」
エル「え、えっと。。。 これで、なにをするんですか? 乾杯、ですか?」
マスタ「いいから、黙ってコレを受け取れ。」
エル「え、わっ、っと! ちょっと、缶ビールを投げないでくださいよおっ! 。。。えっと、
飲んでいいんですか?」
マスタ「違う。 それを、俺の持っているジョッキにそそげ。」
エル「あ、ああ、はい。 先輩後輩の礼節というものですね。
(ぷしゅっと缶フタを開け、マスタのジョッキに、泡が出ないように慎重にビールをそそぐ)」
マスタ「・・・。 そうだ、慎重にだ。」
エル「・・・ ええと。それで?」
マスタ「今、『ジョッキ』という『メソッド』に、『変数ビール』が『引数』として入ってきた。 エル、このジョッキに
描かれている『ロゴ』を見てみろ」
エル「・・・ネズミの絵柄ですね。」
マスタ「そうだ。この『ネズミ』は、『戻り値』だ。引数ビールが、戻り値『ネズミ』として戻って行ったら、
お前は『オブジェクト志向』タイプとなる。 戻ってこなければ、ただ、上から下にビールがそそがれただけの
『手続き型志向』タイプというワケだ」
エル「。。。え? なんですか、それは??」
その瞬間、マスタの持っているジョッキの中身が、激しくうごめき。
やがてそれは、数匹のネズミと変化するや、エルに向かって...
正確には、エルの手にしている空の缶にむかって飛びかかってきた。
「うわあっ!」と悲鳴をあげながら逃げ出すエルを平然と眺めながら、
マスタは、空いたジョッキに二本目の缶ビールを自分でそそぐのであった。