- 登場人物 -

エル:駆け出しの素人プログラマーの少年。

マスタ:キャリアとスキルの高いPL級の男。年齢不詳で謎多き人物。


【あらすじ】

ひょんなことから、パラレルワールド「アイティギョーカイ」に飛ばされた少年エル。

この世界では、プログラムと呼ばれる魔法言語が発達した世界であった。

少年エルは、この世界で生き延びるため、プログラムを習得すべく、ピンチを救って

くれた謎の男マスタの元でプログラム修行をすることになった。



古くから伝わる『ビール見式・志向判別法』で、エルが『オブジェクト志向』タイプと

いう事がわかり、マスタの修行は次の段階に移行するのだった。


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マスタ「さて、お前の志向もわかった。よかったな、攻防バランスのとれた『オブジェクト志向』

タイプだ。正式にはオブジェクトオリエンテッドタイプ(object-oriented type)。。。

通称『ダブルオー』タイプだ。」

エル「。。。なんか通称はカッコいいんですけど、でも、その「ooタイプ」は、どの言語使い

を指すんですか?」

マスタ「主に、Java使いや、Cプラ使いだ。 お前は運がいい」

エル「Java使いも、ダブルオーなんだあ!やった!」

マスタ「フッ... さて、修行が始まっても、まだ喜んでいられるかな?」

エル「えっ... ?」

マスタ「。。。先ほどの戦闘で、お前は『イコール』を使ったな?(第02話参照) 思い出せ」

エル「え? は、はい。 確かに、バグを倒すのに、『==』を使いました。

でも、『=』自体は、どの魔法言語にも共通する、ごく一般的で初歩的な呪文の筈です。

特に、問題はないと思うのですが。。。」

マスタ「...ほう。」

エル「?」

マスタ「。。。今のままなら、お前は次の戦闘で死ぬな」

エル「えっ?! なっ、なんでですっ!! ぼくの『イコール』の何が悪いんですかっ!

教えてくださいっ、マスタさん!!」

マスタ「。。。今のお前に、口頭で教えても無駄だ。 『コレ』を、受け取れ(何かを投げる)」

エル「! わっ、えっ?(マスタが投げてよこした『ソレ』を受け取る) 。。。2つの財布?」

マスタ「そうだ。今、お前に渡したのは『2つの財布』だ。

そして、2つの財布には、それぞれ、『100バイト(※バイト:この世界の通貨)』が入っている」

エル「2つの財布に、それぞれ100バイトのお金。。。 合わせて、200バイト。。。?」

マスタ「・・・その財布は特殊でな。『魔法』を使わないと開かないようになっている。

ちょうど、いい。この山を降りて、今から街まで行ってビールを買って来い。

ちょうど『200バイト』で、購入できる。」

エル「をを。。。 ぱしりですか。 ...魔法。 そうか、『イコール魔法』を使って、開けるんですね?!」

マスタ「フッ... 察しがいいな。 やってみろ」

エル「はいっ! 『 if ( 右財布 == 左財布) { 開け、財布っ!! } 』 っ!!!!」


False


エル「えっ?! false.... ?! 右の財布も、左の財布も、同じ100バイトなのに?!」

マスタ「フッ」

エル「あ、そっか。。。 実は、逆にするとか。。。?

    『 if ( 左財布 == 右財布) { 開け、財布っ!! } 』 」


False


エル「え?! 開かないっ?! 。。。実は、財布の中身がそれぞれ、違うとか??」

マスタ「・・・財布の中身は、どちらも『100バイト』だ。 なぜtrueにならないか、考えろ」

エル「な、なんでだ。。。 わからない。。。」

マスタ「制限時間は、夕刻だ。 俺はここで待っている。 お前は、夕刻までに山を降り、

街まで行き、財布を開けて200バイトのビールを購入し、そしてここに戻ってこい。」

エル「ええ、そんな?! 財布の開け方も、わからないままなのに。。。 !!」

マスタ「言っておくが、『 != 』でtrueにしても財布は開かないから覚えておけ。」

エル「。。。ううっ」

マスタ「。。。出来なければ、それまでだ。 そのときは、プログラマはあきらめろ。」

エル「。。。くっ!」

マスタ「いいのか、こんなところでのんびりしていて?」


エル「・・・。 わかりましたっ。 必ず、夕刻までに、この財布を開けてビールを買って

戻ってきますっ!!(びっ、とマスタを指差して) 」




こうして、早くも窮地に立たされたエルは、2つの財布を握り締めながら、

山を降り、街を目指すのだった。