マスコミが「裏金問題」を大々的に報道していた頃、
昨年 2023年12月24日 に、たまたま見かけた記事です。

なぜ安倍派と二階派だけが裏金捜査の標的に?米シンクタンクのレポートに書かれていた警告=高島康司
 

 

連日のテレビの報道の内容よりは面白いかな? と思い読んでみました。

記事の表題「米シンクタンクのレポートに書かれていた警告」ですが、
無知な私は、まず、シンクタンクとは何か? から知る必要がありました。

wikipedia から抜粋
シンクタンク(英語: think tank)は、諸分野に関する政策立案・政策提言を主に行う研究機関。
シンクタンク、政策研究所、研究機関は、社会政策、政治、経済、軍事、技術、文化などのテーマに関する
研究とアドボカシーを行う組織であるが、
こうした政策機関はほとんどが非営利団体であり、米国やカナダなどの一部の国では非課税状態。
他のシンクタンクは、政府、擁護団体、または企業によって資金提供されているか、
またはプロジェクトに関連するコンサルティングや研究活動から収益を得ている。

なるほど、think tank かぁ。
sink (流し台の水溜め)tank じゃないのね、などとアホなことを言いながら。
まずは、言葉の意味を理解できたことにしました。

で、米シンクタンクが警告していたか、はたまた、裏金問題になにか関わりがあったかどうか。
そんなことを考えてしまうと、せっかくの記事が、ただのテレビのワイドショーみたいになってしまします。

なので、この記事のソースになっている米シンクタンクのレポートを読んでみます。
そのレポートは、こちらのページから閲覧・ダウンロードできます。
 


そして、レポートの PDF は、こちら。

https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/legacy_files/files/publication/141003_Berger_AbePerilousPatriotism_Web_0.pdf
 

訳すのに、時間が掛かりましたが、なんとか全文を読みました。
ここで、全文をすべて掲載はできませんので、一部抜粋してみます。

▼ ここから

Abe’s Perilous Patriotism
Why Japan’s New Nationalism Still Creates Problems for the Region and the U.S.-Japanese Alliance

安倍首相の危うい愛国心
日本の新しいナショナリズムはなぜ地域と日米同盟に問題を引き起こすのか?

トーマス・U・バーガー著
2014 年 10 月 3 日 公開

要旨
安倍晋三首相が推進する「健全な愛国心」は、日本の民主主義の終焉を予感させるものでも、批判者が主張する軍国主義への回帰を予感させるものでもない。
むしろ、安倍首相のナショナリズムは1945年以降の日本政治の文脈の中で理解される必要がある。
安倍首相のような保守派にとって、日本の歴史を肯定的にとらえることは、
日本の国家と社会との間の重要なつながりを再構築し、日本が経済の再生、さまざまな社会問題への対処、外的脅威からの防衛など、
差し迫ったさまざまな課題にエネルギーを動員できるようにするために必要なことなのだ。
歴史的にみて、防衛や安全保障の問題で日本がもっと頑張らなければならないという圧力がかかるたびに、
日本の保守派は日本のナショナリズムを強化することを強く推し進めてきた。

   (中略)

しかし今日、このプロセスが行われているより大きな国際的枠組みは、いくつかの重要な点で変化している。
近隣諸国、特に中国と韓国が日本のナショナリズムの表現に敏感になり、日本に対して報復行動を取る能力も高まっている。
両国とも、歴史的な領土問題に焦点を当てたナショナリズム感情が政治文化の中心的な特徴となっている。
これは特に韓国のケースだが、中国にも当てはまる。
中国や韓国の指導者たちは、こうした圧力を無視しようとすることはできても、そうすることができるのは犠牲を払ってまでである。
安倍政権下の日本が歴史問題について真摯に対話する気がないという認識からすれば、その代償を払うインセンティブはほとんどない。

加えて中国では、指導部はナショナリズム感情を煽ることがかえって得策であるとの結論に達したのかもしれない。
その結果、ここ数年、歴史的な反日問題をめぐる緊張は急激に高まり、地域の制度構築や防衛協力、
そして最も懸念される領土問題など、他の政策領域にもますます波及している。
今日、ここ数十年で初めて、戦争とまではいかなくても、日中間の軍事衝突の危険性が現実のものとなっている。
かつてはアジア内のドラマであったものが、より大きな地域的、さらには世界的な意味を持つようになっている。
米国が日本のナショナリズムを懸念するようになっているのも、こうした背景があるからだ。
米国は安倍首相のイニシアチブの多くを歓迎し、首相の言葉を借りれば「日本が戻ってきた」ことを喜んでいるが、
地域的緊張の高まりは必然的に同盟の懸念材料となっている。
安倍首相がイデオロギー的な問題を積極的に押し出そうとしていることは、
中国をいたずらに刺激し、韓国との関係を複雑にし、日本の信頼性について米国内に疑問を投げかけている。

しかし、その解決策は、愛国心を煽る安倍首相や他の日本の指導者を単に非難することではない。
それは逆効果であり、効果的でもない。多くの穏健派やリベラル派を含む多くの日本人が、日本の内政に介入することに憤慨するだろうからだ。
効果的でないのは、日本の自制だけでは地域の融和が進むとは思えないからだ。
謝罪が効果的であるためには、それが受け入れられなければならない。
中国も韓国も、この点では不完全ではあるが、これまでの日本の誠意ある努力を受け入れようとしなかった。
むしろ日米両国は、侵略の可能性に対する戦略的な安心感と、
潜在的な敵対国への積極的な関与のバランスをとる「ツートラック」外交戦略の一環として、歴史問題を位置づける必要がある。

はじめに
ここ数ヶ月、日本ではナショナリズムの台頭を懸念する声が高まっている。
この懸念の多くは誇張されており、批判の多くは見当違いである。
確かに日本は、中国やその他の国々の多くの人々が私たちに信じ込ませようとしているような、東アジアを支配しようとする軍国主義的なレバニ主義大国に変わろうとしているわけではない。
ケビン・ドークが最近指摘したように、安倍首相は実際には、民族的ナショナリストというよりは市民的ナショナリストであり、
人々の国籍は民族性の問題ではなく、むしろ社会の規範や価値観に自発的に従うか否かの問題であると信じている。
安倍首相の第一の目標は、日本に健全な愛国心を育むことである。
この愛国心とは、日本人が自国に誇りを持つことを奨励すると同時に、現代日本の民主的政治システムを尊重し、平和的な東アジア地域秩序を支持するものである。

しかし、安倍首相の意図とは関係なく、彼の健全な愛国主義は日本の政治システム内部と近隣諸国との両方に緊張を生み出している。
こうした緊張はまったく新しいものではない。1950年代までさかのぼると、日本がより強い国家的誇りを持とうとする努力が、国内外での反発を引き起こすという、非常に古いパターンがある。
かつては、歴史問題をめぐる定期的な対立は、比較的後遺症が残ることなく収まっていた。
しかし近年は、安倍首相が掲げる日本のナショナリズムが以前にも増して避雷針となるような変化が起きている。
歴史をめぐる緊張は領土問題やその他の問題にまで波及している。今日、長い間アジア内の問題であった歴史をめぐる論争は、
より広範な意味を持つようになり、日米関係にも悪影響を及ぼす可能性が高まっている。
こうした力学をよりよく理解するためには、3つの中心的な問題を簡単に検討する必要がある。
ナショナリズムを推進する安倍首相の努力が行われている国内の状況、
日本のナショナリズムを伝統的に取り巻いてきた政治力学、そして日本のナショナリズムと変化する東アジア地域環境との相互作用から生まれる新たなパターンである。
結論として、この分析が日米同盟に与える影響について考察する。

(以上の前文に始まり、次に詳細な説明が続きますが、ここでは割愛します)

結論

日本のナショナリズムが東京とワシントンにとって、過去にはなかったような問題になっているのは明らかだ。
日本で健全な形のナショナリズムを推進しようとする安倍首相の努力に反対するのは間違いであり、逆効果でさえある。
しかし、これが外交政策に深刻な影響を及ぼさない純粋な国内問題であるかのように装うのも同様に間違いである。
さらに、日本のナショナリズムに関連する問題を放置しておくと、同盟関係の弱体化につながり、地域における軍事化された紛争のリスクが高まる可能性がある。
この問題に対処するため、日米の政策立案者は外交協力をさらに強化し、新たな分野へと拡大していく必要がある。
ワシントンと東京が直面する中心的な課題はよく知られており、同盟関係を維持しながら中国の台頭をいかに管理するかというジレンマである。
1つ目のジレンマは、中国にどのように関与し、同時に中国の攻撃的な行動を思いとどまらせるかという難問である。
2つ目のジレンマは、同盟国(この場合は日本だが、米国も同様)に紛争が起きても見捨てられないと安心させる
と同時に、利害関係のない紛争(たとえば尖閣・釣魚島問題)に巻き込まれるのを避けるという、中心的な緊張関係にある。

同盟の利害におけるこうした緊張は困難であり、完全に解決することはできないが、乗り越えられないものではない。
1960年代に米国と欧州の同盟国が直面した状況と類似点がある。
ソ連の軍事力の台頭と、デタント政策を通じてモスクワに関与しようとする動きが相まって、NATO内にはかなりの緊張が生まれた。
当時の解決策は、1967年に北大西洋理事会で採択された、いわゆるデュアルトラック・アプローチを発展させることだった。
ソ連との軍事的緊張を緩和する努力は、適切な防衛態勢を維持するというコミットメントと対になるものであり、
防衛を強化する措置は、モスクワへの継続的な外交的働きかけとバランスをとるものでなければならなかった。

北京に対しても同様のアプローチを採用し、この地域の軍事的・経済的な現実に合わせて修正を加えるべきである。
ワシントンと東京が歴史問題に関してコンセンサスを得る必要はないし、米国が日本に対して過去の罪に対する一方的な謝罪と賠償を要求するのは間違っている。
しかし、東京の政策立案者がこれらの問題の外交的重要性を認識し、歴史問題をめぐる緊張を緩和するための措置を可能な限り講じることは重要である。
その見返りとして、米国は、東京が手を差し伸べ、ナショナリズムの緊張を管理または緩和しようとする場合、一般的な外交支援を提供することができる。
これは日韓関係において特に重要であり、日韓双方がイニシアチブを取る意思があれば、進展の可能性は十分にある。

歴史問題に対する日本の柔軟性は、安倍首相のような日本の保守派が民族の誇りを促進するという目標を放棄することを意味しない。
結局のところ、第二次世界大戦が侵略戦争であり、日本の朝鮮半島支配が抑圧的なものであったことを日本の指導者として初めて認めたのは、
1945年以降の日本史上で最もナショナリスト的な首相の一人である中曽根康弘であった。
米国もまた、多くのアメリカ人が自国に抱く強い誇りを損なうことなく、歴史的な悪行(奴隷制度やジム・クロウなど)を認めてきた。
必要なのは、日本の指導者たちが、より大きな国益のために、自国の歴史の暗い章と明るい章のバランスをとる方法を見つけることである。
安倍首相とその後継者たちがそうすることができれば、日本人の健全な愛国心を促進するための大きな一歩を踏み出すことができるだろう。

▲ ここまで(おわり)

以上の内容で、わかったようで、いまひとつ、よくわからいのが結論の最後の一文。
アメリカ人が言う「日本人の健全な愛国心」とは何だ?
「より大きな国益のために、自国の歴史の暗い章と明るい章のバランスをとる方法を見つけることである。」は、
健全な愛国心ではなく、プロセスの一つを提案している文言であって
健全な愛国心という言葉の説明ではない。

だから、私は この部分が、わかりません。
私は、まだまだ読解力が足らないのかな?

ふと思ったことですが、戦後何十年経ったのか
まだまだ、私達はアメリカに学ぶべきことがありそうな気がしました。
きっと、今の日本は、まだまだ変化を遂げる余地(必要)がある?

このレポートを書いた「トーマス・U・バーガー」という方は、
日本とドイツを専門的に研究している方で、著書には、このような書籍があります。

Cultures of Antimilitarism: National Security in Germany and Japan
反軍国主義の文化: ドイツと日本の国家安全保障

 

https://www.amazon.co.jp/Cultures-Antimilitarism-National-Security-Germany/dp/0801872383

1945年 に壊滅的な軍事的敗北を喫した後、
日本とドイツ両国は再び経済的優位性と政治的影響力の地位を獲得しました。 
しかし、どちらもかつての軍事力を取り戻そうとはしていません。 
それどころか、反軍国主義は日本とドイツの国民精神に深く根付いており、
国際平和維持軍への参加などの問題ですら国内で広範な反対に遭っている。 
トーマス・バーガーは、「反軍国主義の文化: ドイツと日本の国家安全保障」の中で、
この予期せぬ変革をもたらした複雑な国内および国際的な政治勢力を分析しています。

興味がおありでしたら、どうぞ。

で、話を続けます。
先程のレポートは、今から 10年前のものです。

これを機会に、アメリカの他のシンクタンクは、日本をどう分析しているかを見るのも良いかと思います。
比較的新しいレポートは、2023年公開のものが多いようです。2024年公開のレポートもありますが、数は少ないようです。

ブルッキングス研究所 (www.brookings.edu) からは、

Japan’s new security policies: A long road to full implementation
日本の新たな安全保障政策:完全実施までの長い道のり
 

 

あれっ? と思ったのは、文中に a clear track record(明確な実績) というリンクがあって
この部分です。

Domestic politics will impact whether and how quickly legislation will clear the Diet. Additionally, the precise content will also be shaped by political processes. At a minimum, Kishida’s LDP will need support from Komeito, its more “dovish” junior coalition partner with a clear track record of diluting major national security-related initiatives championed by LDP conservatives.

国内政治は、法案が国会を通過するかどうか、またそのスピードに影響を与える。さらに、正確な内容も政治プロセスによって形成される。少なくとも、岸田自民党は、自民党保守派による安全保障関連の主要なイニシアチブを薄めた明確な実績を持つ、より「ハト派的」な連立後輩パートナーである公明党の支援を必要とするだろう。

そのリンクから、PDF の閲覧・ダウンロードが可能になっています。

Electoral incentives, policy compromise, and coalition durability: Japan’s LDP–Komeito Government in a mixed electoral system
選挙インセンティブ、政策妥協、連立の耐久性: 混合選挙制度における日本の自民党・公明党政権

https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/D153792B61853FAC9AF38A20E5076D32/S1468109918000415a.pdf/electoral-incentives-policy-compromise-and-coalition-durability-japans-ldpkomeito-government-in-a-mixed-electoral-system.pdf
 

おもしろいのは、アメリカの研究者が、自民党と公明党の関係に ? となっている箇所。
全体的に少し奇妙(もしくは理解に苦しんでいて、パズルと表現している)な内容になっているみたいです。

他には、

Can Japan’s Kishida deliver on political reform?
岸田首相は政治改革を実現できるか?
 

 

No, Japan is not planning to “double its defense budget”
いや、日本は "防衛予算の倍増 "を計画していない
(この記事は、おもしろいです。日本人は何かを誤解しているみたいな内容になっています)
 

 

他に、ドイツ外交問題評議会 (dgap.org) では、この記事がおもしろかったです。

Japan's "Economic Security" Measures
A Model for Managing China’s Rise

日本の「経済安全保障」対策
中国の台頭を管理するためのモデル
 

 

何か、おもしろい記事に出会ったら、それをキッカケに
他にも、いろんな記事を探してみると、

「こんな見かたもあるんだ」、「あんな見かたもあるんだ」
といった、多少なりとも視野を広げることは可能なようです。




お待たせしました。では、休憩タイム!

さて、曲にしましょう。
寒い季節になると、わたしは Youtube で、よくこの曲を聴きます。
暖かくなると、聴かなくなります。
ロシアのウクライナ侵攻の時に、はじめて知りました。

Ganna Gryniva ドイツで活躍する、ウクライナのジャズ歌手。ウクライナの古い民謡を曲の素材として扱っています。

GANNA Ensemble – Witer (OFFICIAL VIDEO)



Live 動画では、歌詞を英語に訳した字幕があります。歌をイメージしやすくなっています。


GANNA Ensemble - WITER Live at Theater in Delphi, Berlin

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ドイツからアルバムがリリースされています。
アルバムレビューには、こう書かれています。

Jazz Day Germany
Ganna: Dykyi Lys - Jazz thing Next Generation Vol. 84

 

 

ガンナ・グリーニヴァのデビューCDのタイトル "Dykyi Lys "は、

ウクライナ語を話す人ならすぐに意味がわかる。

野生のキツネ」という意味だ。
野性的で、適応力があり、生き延びることができ、自分がやりたいと思うこと、

得意とすることをやり、好感が持てるほど頑固で、決断力があり、賢い。

それがガンナ・グリーニヴァであり、今や国際的にも高く評価されている

ジャズ・シング・ネクスト・ジェネレーションの才能発掘パッドの84番目の主人公として、

ある種特別な地位を築いている。
彼女の特技のひとつは、"Witer "のように、古いフォークソングの歌詞を発展させ、

それに合わせて新しい音楽を書くことだ。

作曲は彼女にとって自己反省の一形態だとガンナは言う。

「歌詞、音楽、ストーリー、そしてムードが調和しなければならない。

そして時には、ウクライナ語や英語の方が適していると直感することもある。

あー、歌詞の意味がわからいのが残念! どんなストーリーを歌で語ってくれているのでしょうか?
日本版、出たらいいのに・・・

Dykyi Lys - Jazz Thing Next Generation Vol. 84 (Full Album Youtube Playlist)