毎日、さまざまなニュースが報道されています。
国内のマスコミでは、まったく報道されていないか、
控えめに報道されていたりするようなニュースもあります。

今回取り上げるのは

Fujitsu Post Office scandal
富士通 郵便局の不祥事

 

 

 

 

 


一般的には、あまり関心を持つような(持つべき)話題ではないかも知れません。

ただ、IT・コンピューター関連の業界・企業の仕事に携わっている方々には
多少なりともショックなニュースだとは思います。

 

私は、海外のニュースで報じられているのとは

違った視点で、お話したいと思います。

私個人の見解なので、不愉快に思われた方は無視してください。

私は、この出来事について悪意をもって話すことは控えるべきだと思っています。
考えるべきは、この不祥事を回避することはできなかったのか?
できたとしたら、どうすれば回避できたであろうか?
だと、思っています。
と同時に、日本人の最も悪しき性質を垣間見ることになります。


「富士通 郵便局の不祥事」とは何か?

wikipedia より抜粋

The British Post Office scandal is a series of miscarriages of justice which, between 1999 and 2015, saw over 900 subpostmasters prosecuted for theft, false accounting, and fraud for shortfalls at their branches when these shortfalls were in fact due to errors in the Post Office's accounting software known as Horizon, provided by Fujitsu.

英国郵便局のスキャンダルとは、1999年から2015年にかけて、
900人以上の郵便局長が、
支店の不足分が実際には富士通が提供するホライズンという
郵便局の会計ソフトのエラーによるものであったにもかかわらず、
窃盗、偽計、詐欺の罪で起訴された一連の誤審である。

Some subpostmasters noticed the new system reporting false shortfalls, sometimes for thousands of pounds, but the Post Office insisted that the system was robust and, when shortfalls occurred, prosecuted the subpostmasters or forced them to make good the amounts, as required by their contract. The impact of these court cases, criminal convictions, imprisonments, losses of livelihood and homes, debts and bankruptcies took a heavy toll on victims and their families, leading to stress, illness, divorce and, in at least four cases, suicide.

新システムに気づいた一部の郵便局員は、
時には数千ポンドにも及ぶ虚偽の不足額を報告したが、
郵便局はこのシステムは強固であると主張し、
不足額が発生した場合には、契約に従って郵便局員を起訴したり、
補填を強要したりした。
このような裁判、有罪判決、投獄、生活と家の喪失、借金、破産などの影響は、
被害者とその家族に大きな打撃を与え、
ストレス、病気、離婚、少なくとも4件では自殺につながった。


この情報だけでは、「富士通が・・・」だけが強調されてしまって
本当のことがわかりません。


ホライズンというシステムについて調べてみると・・・

wikipedia より抜粋

Horizon (ホライゾン)は、
富士通UK(旧インターナショナル・コンピューターズ・リミテッド、ICL)により
CとVisual Basic、Oracle Database(非同期ブランチサーバー)、
Riposte(同期処理ミドルウェア)で開発された
イギリスの郵便事業会社ポスト・オフィス・リミテッド(Post Office Ltd.)の一部で使用されている
勘定系(会計)システムである。
2013年には少なくとも11,500の支局で運用されており、毎日約600万件の取引を処理していた。

1999年から2015年の間に多数の問題を発生させ、
700人以上の郵便局員が横領や不正経理などの無実の罪を着せられた
「イギリス郵便局スキャンダル」を引き起こした。
この問題に際して、2009年に郵便局の subpostmaster であった アラン・ベイツ(Alan Bates) が
被害者団体 Justice for Subpostmasters Alliance (JFSA)を結成した。


これで、わかることは
システムはインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)が開発したものであるということです。


では、ICL は何か?

同社は1980年代初頭から富士通とますます緊密な関係を築き、
1998年に、富士通が唯一の株主になりました。
ICLは2002年4月に、富士通UKに名称変更しました。


これまでで、わかることは
ICL を、富士通UKに名称変更したこと。
まず、これが「やりすぎ」だと思います。

子会社化しても、ブランド変更までやる必要があったでしょうか?

かつてのバブル期の話ですが
日本は、
エンパイアステートビルやニューヨークのロックフェラーセンターなどを
買収した経緯があります。

冒頭に申し上げた「日本人の最も悪しき性質」とは
このことだと考えます。

アメリカの象徴(文化的象徴)は、アメリカ人のプライドでもあります。
成り上がりの日本人(少なくとも世界的には)が
大金を手にすると、何をやらかすか? という見本です。
これは、本来やるべきではなかった。

同様に、イギリスのICLもしかり。
筆頭株主になった富士通がやるべきは
古くなりつつあった、ICL への支援(技術・経営)であって
買収・ブランド変更は、やるべきことではなかったと思います。
イギリスのICLは、アメリカのIBMと同様
イギリスを代表する企業だったと推測します。

金の力で、相手国の、言いかえれば、相手国の国民の誇りをズタズタにしてはいけない。
そのことが理解できないから、日本は世界の成り上がり者と言えます。

このことが、わかりずらいのであれば
かつて、経営危機にあった日本の企業が、
台湾の鴻海(鴻海精密工業)に買収された件を思い出していただきたい。
今振り返って考えれば、
「買収された」ではなく「買収していただいた」感がありますが、
それでも当時は、「台湾の企業に買収される」という
非常に否定的な感情があったように記憶しています。
では、鴻海は日本人の心を傷つけましたか?
経営危機にあった日本企業を黒字化しましたね。

因みに、鴻海は台湾に本社がありますが
アメリカに支社があります。
社長が台湾国民党支持者なので、中国にも支社があります。
アメリカでは、鴻海ではなく「Foxconn」ブランドです。
現在は、サウジアラビアやドイツ向けの生産も行っており
立派な、グローバル企業です。


箱ものに金を使うな。
ソフト(人)に金を使え。



ICLは、英国ウィルソン労働党政府の産業拡大法の一環として1968年に設立されました。
英国政府は会社の10%の株式を保有し、4年間で3,240万ドルの研究開発助成金を提供しました。

このような歴史がある企業には
当然、素晴らしい開発資産が豊富にあったことは
想像に固くないと思います。

この頃は、メインフレーム・コンピューターから
IBM PC/AT タイプのハードウエアへの移行期でした。
環境が、いまひとつ確立・定着しない不安定な時期でした。
だからこそ、英国の代表的企業を日本ブランドにすることで
英国の多くの技術者のプライドを引き裂いたりはなかったか?


もし、あったとすれば、ソフト・パワーは芽生えないのです。
開発力(保守も含めて)は、減退するのです。
 

(余談)

この時期であれば、IBM PC でなくても

SUN (Stanford University Network) Workstation のほうが良かったかも知れません。

SUN は後に、Oracle社に買収されましたが。

この頃は、世間的に定着していましたし、開発環境も確立されていました。


ホライゾン・システムの不具合についても
スタッフの真摯な対応が難しい場合がでてきます。
金の力だけでは、本当には人は動かせません。

繰り返します。

箱ものに金を使うな。
ソフト(人)に金を使え。
人が、技術を生み出すのです。



P/S
台湾は、2014年のデジタル政府(デジタル民主主義)の確立(システム立ち上げ)までに
重要と思われるアメリカのソフトウエア技術者(企業にも、人にも)に投資し続けていました。
この経緯の違いが、
現在の日本のデジタル庁と
台湾のデジタル政府の違いです。

 

 


さて、気分を変えましょう。
最近知った、この動画なのですが
サンフランシスコ在住40年くらいでしょうか。
この方は、動画の最後に
「日本語を大切にしてください」と発言されています。
観てみる価値は、あるかと思いますので
ここで共有したいと思います。