情報どころか、記憶そのものが
古くなれば、忘れ去られる
この時代に、
次の2015年1月に行われた
講演の記録を、改めて読んでみることで
現在の状況が明確になるという・・・
そのような事があるということを
ここに紹介したいと思います。



持続可能な日本へ。社会と人口の変化と課題

 

 

2015•01•24 枝廣淳子 日本サステナビリティ
 

Japan for Sustainability (JFS) より拝借

(以下、その内容)

オーストリアで開催された国際シンポジウム
「Cope with the Stress of Future Changes -
 Preparing States, Regions, Cities, Organization,
 Families and People for the Ongoing Transition」で、
ジャパンフォーサステナビリティ(JFS)代表理事の
枝廣淳子は基調講演を行いました。
主催は、経済学に加え、社会科学、自然科学、環境科学の専門家による
国際的なネットワークであるウィーン・クラブです。
本稿は、日本の地域経済に関する講演の一部を引用し、
より持続可能な世界に向けた
価値観やライフスタイルについて拡大したものです。


気候変動の面では、
日本でも異常降雨の増加が確認されています。そのため、
大雨や洪水による土砂災害の発生頻度が年平均で増加し、
日本政府は今世紀末に河川の氾濫が起こる可能性が
4.4倍になると予測しています。そして、
すでに熱中症による死者数の増加も確認されています。
2010年には、わずか1年で1,700人以上の方が
熱中症で亡くなっています

気候変動を抑えることができなければ、
この数字はさらに増えることが予想されます。また、
温暖化が農業、特に米や果物の栽培に
悪影響を及ぼすことも分かっています



それは同時に、
人口減少と高齢化というストレスに
対処しなければならない
からです。
100年前、日本の人口は約4,000万人でした。
それが100年かかって1億2千万人になり、
100年以内には4千万人に戻ると言われています。


そして、高齢化とともに、人口動態も変化しています。
人口の40%が65歳以上になる時代に向かっているのです。
現在、4人に1人が65歳以上です。

2035年には、3人に1人になります。
2060年には、5人に2人が65歳以上となります。


現在、高齢者1人を支える労働者は2.57人です。しかし、
2060年には、高齢者1人あたりわずか1.19人の
労働者の割合になるのです。
これでは、若い世代に大きな負担がかかってしまいます。
各国の高齢化比率を比較してみましょう。
イタリア、スウェーデン、スペイン、ドイツ、
フランス、イギリス、アメリカ、そして多くの発展途上国は、
65歳以上の人口が25〜30%になる方向に向かっています。
しかし、日本は世界のはるか先をいっている


そして今、
年金制度をどう維持するかが話題になっています。
経済成長ができなければ、
高齢者の年金支給額は20%、
40%減らさざるを得ないと予測されている
からです。
これはすべて、
政府やエコノミストに経済成長を目指すための
口実を与える
ものです。
しかし、人口減少のため、
2050年には日本の国土の60%以上が未開拓になります。
ですから、国土の安全保障は別の問題なのです。


日本の自治体の半数が「消滅可能性自治体」と
いわれるようになった。どのように定義されているのか。
20歳から39歳までの女性の人口が、
30年後に現在の半分以下になると予想される市町村
です。
通常、人口というと出生率の話になる。
出産可能な年齢の女性が減少し、
その結果、出生数が減少している。


最近、日本の半分に近い900近い自治体が
消滅の危機にあるという報告書が発表された。
ある村では、2040年までにこの年齢層の女性が
8人しかいなくなると予測されている。
その結果、日本では大きな騒ぎになっている。
消滅可能性自治体の市長や市民は、
この問題に対処するための委員会を組織したり、
特別研究チームを作ったりと、忙しい日々を送っている。


日本における最大のプレッシャーは、
人口減少が予想されるにもかかわらず、
経済学者、産業界、政府の側が
成長に執着していること
にあると思います。


そしてもちろん、
人口が減れば労働力も減ります
今、政府は労働力を定義するために
使用する年齢を引き上げようとしています。
日本は現在、
20歳から65歳までを労働力とみなしていますが、
政府はそのハードルを上げようとしており、
74歳まで働かなければならなくなる
のです。


この新しく定義された日本の労働人口を例にとると、
今は約9000万人ですが、2060年には5200万人、
そして2100年には2600万人になります。
これは労働人口が大きく減少することになります。
どうやって経済を維持するのか。
経済成長という「約束」をどう果たせばいいのか



日本における最大のプレッシャーは、
人口減少が予想されるにもかかわらず、
経済学者、産業界、政府が
成長に執着していることにあると思います。
企業は利益を維持し、
経済成長に貢献するために、
人件費の削減に躍起になっている。
そのため、多くの失業者や低賃金の契約社員がいる



かつて日本は、終身雇用制度で有名だった。
雇用の安定が、会社への高い忠誠心を生んだ。
しかし、今はもうそうではありません。
現在、日本の労働者の3人に1人は契約社員である。
雇用の安定、企業年金、健康保険、
そういった福利厚生はない



一方、賃金指数は大きく低下し、
失業率や貧困率も上昇
しています。
もう一つの問題は、子どもの貧困です。
政府はまだこの問題にきちんと取り組んでいません。
現在、日本の子どもの6人に1人が
貧困の状態にあるとされています。
これは、現在だけでなく、
将来的にも大きな問題を引き起こす
でしょう。


私たちは、
持つ者と持たざる者の間の格差が拡大しています。
そして、膨大な数の自殺者がいます。
自殺者の数では世界でも上位に入ると思います。
統計によると、特に経済状況が悪く、
深刻な失業者を生み出した1998年から1999年にかけて、
非常に多くなっています。
それ以前は、政府によるものではなく、企業による
社会的セーフティネットのようなものがあったのです。
しかし、企業はグローバルマーケットと
競争しなければならないので、
そのようなソーシャルネットワークや
ソーシャルセーフティネットを縮小しようとしていました。
政府からも会社からも何の支援もなく、
人々は解雇された
のです。
このように日本で自殺者が大きく増えている特徴のひとつは、
40代、50代の男性が突出していることです。
その年齢層の自殺比率が飛躍的に伸びているのです。


賃金指数は大幅に低下し、
失業率や貧困率も上昇しています。



「自分に満足している」と答えた人の割合を調べたところ、
他の国々と比べて、日本は
自分に満足している人が少ないことがわかった。また、
「将来に明るい希望を持っている」と答えた人の割合でも、
日本は低くなっています。


日本では、福島原発事故、失われた20年、
経済成長のための企業や人々への
大きなプレッシャーなどのために、
人々は精神的なストレスを抱えています。


以下は、私たちが直面している
すべての課題や変化に対処するために、
国政に必要だと思う個人的なリスト
です。

・長期的なビジョン -
 政府は現在の経済問題に対処することで精一杯です。
 非常に短期的な視点に立っている。
 政府関係者は誰も2050年の日本や
 長期的な未来の日本について話していない。
 それを始める必要がある。

・適応性のある政策立案・運営と思考の
 弾力性
- 政府がルールを決めたり、政策を決めたら、
 最後まで従わなければならない。
 政府レベルでは適応的な政策決定、適応的な政策運営が
 できていない。
 Dennis Meadowsが言ったように、
 「ショックは来るが、いつ、どこで、
  どんなショックが来るかまだわからない」
 という状況の中で、もっと柔軟に状況を捉え、
 適応的な対応をしていくことが必要であろう。

・国民的協議への意欲 -
 現在の政府の原子力・エネルギー政策に対する
 姿勢に鑑みると、政府レベルでの国民的協議への
 意欲がないことは明らかである。
 この姿勢が日本の弱点だと思う。

・成長へのこだわりを捨てよ -
 定常型経済、つまり規模はそのままでダイナミックに
 動ける経済への転換を図らなければならない。
 エコロジカル・フットプリントのデータによると、
 今の日本の人間活動は地球1個分以上のものを消費している。
 まずは資源、エネルギー、自然資本に対する需要を減らし、
 定常型経済への転換を図る必要がある。


そのためには、
環境収容力を測定し、環境収容力の範囲内で
資源を利用できるようなシステム
を構築する必要があります。
また、
東京一極集中の経済から、
より地域に根ざした経済への移行
も必要です。
日本では、地元で生産され、
地元で収穫された食品はとても人気があります。そして、
エネルギーの地産地消もますます盛んになってきています。
昨年、日本で数十万部のベストセラーになった本には、
地域経済への取り組みが書かれていました。
その人気は、多くの日本人が地域経済の重要性に
気づき始めていることを示しています。また、
JFSでは「ローカル・ウェルビーイング・プロジェクト」と称して、
「ローカル・マルチプライヤー効果」など、
世界各地の有益な考え方や知見を
日本へ紹介する活動を行っています。


日本の歴史には、
すでに定常経済のモデルケースがあります

江戸時代、1603年から1867年までは、
海外とのモノやサービスの交流はほとんどなく、
自給自足で、しかも国内紛争もほとんどなく、
非常に平和な時代でした。
人口も約3,000万人で安定していました。
経済学者によると、
この間の年間成長率は約0.4%だったと推定されている。
いろいろな問題はありましたが、
それでもあの時代の日本は、
持続可能で安定した幸せな社会であったと言えるでしょう。


江戸時代末期、多くの西洋人が日本を訪れました。
彼らは、日本人はとても礼儀正しく、陽気で、
とても幸せそうに見えると、
多くの文章を残しています。


今の日本に来ると、
幸せそうで明るい人たちをあまり見かけないかもしれません。
何か大変そうだと思うかもしれません。
しかし、もしかしたら私たちは、
成長の限界にとどまるある種のライフスタイルで、
再び明るく幸せな人々に移行することができるかもしれません

生存と幸福のための別の道を作り出し、
示すことができるでしょうか。

これらは、私たちが考えなければならない非常に重要なことです。

(以上、ここまで)


2022年5月22日。
只今、日本は低迷中。

7年経っても

(良い)変化は、見当たりません。

大国に対して、経済制裁?

何を馬鹿なことを。



気分を変えましょう。
曲です。

"Oh Happy Day" Edwin Hawkins - Anthony Brown w/ FBCG Combined Choir