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藤子不二雄(A)先生がビッグコミックオリジナル増刊で連載していた「愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春」がとうとう最終回を迎えたようです。藤子先生達の「オバケのQ太郎」、石森先生の「サイボーグ009」、赤塚先生の「おそ松くん」の連載が開始し、いよいよトキワ荘グループがご発展というところで話が終わってしまいます。通常、功成りとげた人の話は、成功するまでが一番面白いと言われます。もしかしたら、藤子(A)先生はトキワ荘の先生達が売れ出してからの話は、ご自分が描かなくてもみんな知っていると思われたのでしょうか?でも、まだまだ続きが読みたかったですね。
 
さて、ご存じのようにトキワ荘に集った若者達はその後マンガ界で大活躍しますが、トキワ荘時代はとても素晴らしい経験だったようで、その時の友達の輪は一生の宝物となりました。そして、みんなでアニメを作るという目的で再び集まりスタジオゼロというアニメ制作会社を立ち上げました。メンバーみんなが、また集まって何かしたいと思ったのが一番大きなドライビングフォースだったのかもしれません。敬愛する手塚先生がアニメを作り始めたことに刺激を受けた事も影響したでしょう。
 
この本は、有名だけど実態があまり知られていなかったスタジオゼロの活動内容を詳しく記した貴重な記録です。かつてトキワ荘の住人でアニメ界に飛び込んだ鈴木伸一先生が監修と装画をされています。表紙カバーに描かれたトキワ荘グループメンバーのイラストは一見の価値ありですよ!
 
「最初に拠点とした元ボクシングジムだった建物を、すでに一人前の先生になった連中が掃除し、みんなでわいわい言いながらアニメの構想を練る。」という行為そのものが彼らにとっては。本当に至高の時であったろうと思います。この本を読んでいても、この頃が一番希望に満ちていて楽しそうです。特に最初の頃のスタジオゼロはトキワ荘グループのメンバーの緩やかなコラボを実現する場であり、アニメビジネスを展開するというような事業体の態は成していなかったと思われます。
 
しかしながら、次第に社員が増えていき、これと同時にトキワ荘メンバーがマンガを描くことに忙殺されてみんなで集まることができなくなってくると、スタジオゼロ自身が普通のアニメ制作会社としての自立の道を目指して行くことになります。元々の成り立ちがトキワ荘的ユートピアだったので、いきなり厳しいビジネスの世界に対応するのは厳しかったと思います。基本的にアニメ部門を任された鈴木先生はとても大変だったと思います。
 
そして、ゆるやかに終息へと進むことになります。が、しかし。スタジオゼロは、完全に解散したのではなくその後も会社としては存続していたそうな!今も続いているのかな?これは知らなかったです。
 
たぶん、今もいろいろな新しい会社が生まれる一方で、なくなっていく会社もたくさんあり、それぞれにドラマがあるのだと思います。スタジオゼロの物語もそのようなドラマの一つかもしれません。しかし、手塚先生やトキワ荘グループのような人気マンガ家がアニメ制作に直球勝負でチャレンジしたインパクトが現在のアニメ興隆に至るプロセスにおいて大きな影響を及ぼしたことは間違いがないと思います。なんだかんだ言っても、人気マンガにあやかってテレビアニメが作られ成功していったという事実がなければ、今のアニメの歴史はだいぶ違っていたのではないでしょうか?
 
その意味でも、スタジオゼロの存在はとても重要だったと思います。そして、本に掲載されている写真の中の先生達がみんな楽しそう!この笑顔がスタジオゼロの活力となったのだと思います。やはり、仕事は、そして人生は楽しくやりたいと思ってしまいます。