村上もとか「JIN-仁-」20巻(集英社)を読みました。スーパージャンプ(集英社)誌に10年にわたって連載された作品がまとめられた単行本の最終巻です。とうとう大作が終わりましたね。
 
現代の腕利き外科医が時空を飛び越えて幕末に現れ、坂本竜馬、西郷隆盛、新撰組などと触れ合いながら激動の時代に翻弄されるが、しだいに時代のキーパーソンになっていくという物語です。(あまりネタばれしたくないので、ぜひ読んでください。)
 
タイムパラドックス、幕末の時代風俗、政治背景、医療事情などを巧みに組み合わせた壮大なストーリーでした。奇想天外な物語ですが、作者の表現したい事が確かに感じられる快作だと思います。
連載中は、いろいろなモチーフが並行して出てくるので、どのようにまとめられるのかな?と思いましたが、初めから終わりまできちんと描ききられていました。相変わらず、村上もとか先生の構想力というより漫画力の力量には感心しました。 
 
私は少年サンデーに連載された「赤いペガサス」以来、例えば「六三四の剣」「ヘヴィ」「龍-RON-」など村上先生の作品が大好きです。いずれの作品も多くの登場人物が、物語の最初から終わりまで、それぞれの役割をもってきちんと描かれているところが素晴らしいですね。次の作品も楽しみにしています。
 
ところで、漫画の発行部数が減り続ける現実の中、漫画文化そのものの低落と変質を心配しているファンもたくさんいるようです。でも私は、原作物が多い中、村上先生のようにご自分で作画する作家が今でも一定数は存在していることに少し安心します。多くの作家がデビューしては消えてしまう厳しい業界ですが、結局力のある人(それと幸運も?)は残っていると確信しています。楽観的でしょうか?