
私が読んだ本:川崎のぼる「アニマル1」全4巻(ゴールデン・コミックス、小学館)
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元気でやんちゃな中学生の東一郎は、父親と七人兄弟とで船上生活をしている。転校した中学校でレスリング部に入ると、生来の負けん気と素直さでめきめきと強くなって行く。いろいろなライバルも登場。必殺わざも開発。最後にはメキシコオリンピック日本代表(中学生なのに!)に選ばれ金メダル獲得を誓うシーンで終わる。
1967年少年サンデー連載作品。メキシコオリンピックの前年で、当時日本が強かったレスリングを取り上げた。スポ根マンガがまっさかりで、他にないスポーツを題材とする企図があったと思われる。
本題のレスリングはともかく、一郎の兄弟達が紙上で元気に暴れているのも本作品の特徴で、そこに描かれた彼らの姿、ユーモアは、川崎作品のヒット作「いなかっぺ大将」を彷彿とさせる。海族ごっこ、一列に並んで銭湯など懐かしいシーンが多い。「貧しいけど、明るく元気」という当時のマンガの定型的なモチーフではあるが、暗さを感じさせない。
この作品で私にとって最も印象的なシーンは、ラストで一郎がオリンピック代表となった時、他の兄弟達が新聞記事を切り抜き額に入れて一郎に見せたシーン。一郎の弟達は、版組の関係で凸凹していた一郎が書かれている部分をそのまま切り取り、額も凸凹の形で作った。これを見た一郎は、涙ちょちょぎれでずっこける。兄弟達はいつも一郎を心より応援してきたが、その象徴的シーンであった。この凸凹額縁のシーンは、私をいつも感動させ、爽快な笑いにさそうのである。
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今でも読める本:川崎のぼる「アニマル1」全5巻(イーブックジャパン(電子書籍))
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