
私が読んだ本:作画・しのはら勉、原作・田宮幸一「BOSS」全5巻(ビックコミックス、小学館)
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父の急逝により実家の小さな鉄工所を継いだ主人公・大石鉄男は、その卓越したキャプテンシーにより主将を務める大学チームをラグビー日本一にまで引っ張り上げた経験の持ち主だった。この大石が、鉄工所の荒くれた若者達に声をかけて少しずつメンバーを集めてラグビー部を創部し、会社倒産の危機や部員のいざこざなどを克服し社会人日本一のチームへと仕上げていく。
ラストは、当時、新年明けの一月十五日に社会人と学生のチャンピオンチームで争われていたラグビー日本選手権に出場し会場である国立競技場のグラウンドへ飛び出すシーン。大石の大きい背中が印象的だった。ラグビーエリートではなく、小さな鉄工所の寄せ集めチームが、大変な努力をして関東第四部リーグから日本一まで登りつめるサクセスストーリーが痛快で、何回読んでもラストシーンでは、不覚にもいつも感動してしまいます。
実は、私はラグビー観戦が趣味で、毎年秋のシーズンには秩父宮ラグビー場に通っています。社会人のチームでは、有名選手を集めたチームより、無名だが地道に鍛え上げて強くなった選手が多いチームが好きです。この作品の大石鉄工所チームは、往年の新日鐵釜石ラグビー部を連想します。釜石というチームは、松尾のような花形選手なしでは日本選手権七連覇はできなかったでしょうが、チームの大半は地元の全国的にはラグビーでは無名の高校出身で、猛練習により鍛えられ「東北の鉄人」とまで恐れられた男達でした。ラグビー有名校の選手だって、血のにじむ練習をして強くなっているのはわかっていますが、やはり多くの人は判官贔屓になってしまうものです。そして、ハッピーエンド、サクセスストーリーが好きなんですね。
この話は、これから日本選手権というところで終わりますが、優勝という結果が見えているだけに、この終わり方で良かったと思います。
それにしても、一月十五日に国立競技場で日本選手権、というのは良かったな~。