街を歩くと、いたるところにまんが本、特に雑誌が捨てられている光景が見られます。今や当たり前のように、道に捨てられていたり、電車に置かれています。

でも、私が子供の頃はすこし違っていました。まず、道端にまんが本が置かれていることなんてありませんでした。仮に間違っておきっぱなしにしても、誰かが持って帰ったんじゃないかな。そのくらい、昔の子供はまんがが大好きで、まんが本は大切な宝物だったんです。

当時は週刊誌が30円とか40円くらいだったと思いますが、子供にとっては高価で、しかも、積極的にまんがを買ってくれる親も少なかったので、たまに手に入れたまんが本を大切にして、何回も読みなおしたものです。バックナンバーがそろっているなんてことはなく、何年分かがバラバラに本棚に並べられていました。しだいに、表紙がやぶれ、なくなり分解直前の状態になったものもありましたが、捨てられることなく他の本と一緒にちゃんと置かれていました。月刊誌は分厚くて立派だったので、週刊誌よりさらに大切にしたものでした。

今のように単行本になってまとめて読めなかったので、連載物の場合、「前回までの話」が紹介されていました。私を含めて当時の子供たちは、ストーリーの全体像がわからなくてもまんがを読むだけで幸福な気分になってたのでしょうね。実は、私もだいぶ後、大人になってから、こんな話だったのかと驚いたことが、けっこうあります。もっとも、一話完結構成になっている作品も多かったですけどね。

そんなに大切にされていたまんが本が、今のように捨てられっぱなしになってしまったのは、いつ頃からでしょうか。数百万部という数で大量に発行されるようになり、作品自体は単行本で読めるようになって、雑誌がビデオのように一時的に情報をストアするメディアになってから、たぶん、昭和50年代になってからと私は記憶しています。

道端に捨てられて、誰も拾わないまんが本が目立つようになり、私には、そのたびに軽い怒りに似た感情が起こったものでした。「なんてもったいない。」、「まんががかわいそう。」時には「親のしつけが悪い」などと思ってました。しかし、自分と同年代の人が、まだ真新しいまんが雑誌を、平気でゴミ箱に放り込む光景を見て、あきらめの気持ちに変わりました。もともと、他人のやることでどうこう言えるものでもないし、私が少しまんがに感情を入れすぎているのかもしれませんね。

実は、はじめのころは落ちているまんが本を拾ったりしたこともあったんです。いささか汚いかもしれませんけど、かわいそうな気がしたもので。。。
今は別の目的で集めているおじさんがいますね。でも、彼らはきたないまんが本は持っていきませんけど。。。

(2003.2.28)