東北の地方都市に住んでた中学生にとって、東京に行くチャンスなんかは、そうそう訪れないですよね。とりあえず、地方でマンガを読み続けてました。高校生になってくると、だんだん、生意気になってきて、COMを読んだり、ガロでカムイ伝なんか読んだりしてました。そのうち、大変ショッキングなニュース。なんと、虫プロ倒産!

 虫プロイコール手塚治虫と思ってた僕は、ガーン!と衝撃を受けました。手塚治虫はどうなるんだろう?と心配したりししてね。雑誌に作品が発表されてたんで、アニメがつぶれてもマンガは大丈夫だと思ってましたが。でも、作品は何となく暗めで調子いまいちという感じがしてました。

 高校3年の時やっと上京のチャンス。これは、いかねば。と思い。とりあえず、虫プロがあった富士見台に行ってみました。虫プロがあった場所は、差し押さえられてましたが、建物は健在で、門に、手塚プロの新しい所在地の貼り紙。駅の近くでした。

 今思えば無礼な奴だったかもしれないけど、いきなり、手塚プロの扉をたたいてみたらアシスタントの人が出てきて、中に入れてくれたんです。手塚先生のお仕事をじゃましないという約束でね。ブラックジャックや三つ目がとおるが始まる前で。まだ、余裕があったのかな?驚くほど素朴な仕事場で手塚先生が仕事をされてました。ベレー帽かぶってなかったけど。

 近づいたら、先生は、怪訝な顔でこちらを見て、また、机に。ついつい、生意気な高校生は、「最近先生の作品、調子良くないみたいですね。」という意味のことを言ってしまったんです。先生、ムッとした顔。「どこから来たの?」それから、ひとこと、ふたこと話していただけました。

 さすがに、じゃましちゃ悪いと思い、すぐ、手塚プロをおいとましました。その後、手塚先生の仕事場は高田の馬場へ、仕事も復活しさらに一時代を築かれました。調子悪いどころか、充電されてたんですね。

今思うと、おみやげくらい持っていけば良かった。何しに行ったんでしょうね。



(2001.1.21作成)