ね、わすれようよ
きょうは とびきりの じょうてんき。 いつもと ちがう朝です。
ふだんは なにをやっても しっぱいばかりしているおじいさんも
こんな日は ぜんぶ うまくいくようなきになってしまいます。
だって こんなに じょうてんき。
あるね、あるね、こんな朝。
さぁ やるぞ~~! あれやってこれやって・・・ 絶好調な自分がイメージできてしまう朝。
そんな いい気分だったおじいさんなのに・・・
「なんの なんの。 きょうの わしは、いつものわしと ちがうのじゃ。」
そう言って張り切ったのが 良かったのか・・・悪かったのか・・・。
やっぱり 失敗してしまう。
うまくいきそうだったのに なぜか 失敗してしまう。
しかも それは 一度や二度ではなくってさ・・・。
でも おじいさんは 言うのです。
「ほれ! ばあさん! みてごらん。 な、ここに いしころがあるだろ。 さ、手を はなすよ。」
小石を ぽとんと 地べたに落として 言うのです。
「ね、わすれようよ。」
そう、この時から おじいさんの今日がはじまったのです。
これまでの失敗が 全てなかったことになって、あの 朝、起きた時の気分に戻るんです。
それでも 何度も何度も 失敗を続けるおじいさん。
しまいには 何もしないで ずっと寝ていたほうが良かったかもしれない と思うおじいさんに
おばあさんも くじけそうになる気持ちをきゅっと押さえ込んで 元気な声で言うのです。
「おじいさん、見てごらん! ほうきが あるでしょう。
ほら おっこちるよ。 みんな わすれましょうね。」
ふたりって だからいいのねぇ~ ・ ・ ・ そんなことも思ってしまう。
卵が割れたり 洗濯物がぐしゃぐしゃになったり 育てたお花を踏まれたり・・・
たいしたことではないといえば そう思えることばかりですが、
それでも 許して受け入れるって、やっぱりその人自身を受け入れることへの第一歩。
しかも やっぱり大切なのは 「お互いに」 心がける、心から想う ことかな?
最後のページで 仲良く朝食を食べているところが 微笑ましいのです。
絵は独特で、作者の他の作品とも一風違っていると思いますし、
その絵によって、好き嫌いが はっきり分かれてしまう作品なのかもしれません。
ちょっと キュビスム
っぽいでしょ?
「ぼくの前世と現世を区切ってくれた本だから、想いも考えもいっぱいあって 短い文章にはならない」
これが 作者の言葉です。
『ほら いしころがおっこちたよ ね、わすれようよ』 田島征三/さく
