■このブログは次の「週報 夢二と台湾2023」(2021.8~2023.8)の後継版です。

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★MENU★

1 ご挨拶  2 夢二と美麗島  3 夢二の素顔  4 夢二のカワイイ 5 夢二に逢える場所(夢二展一覧) 

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【ご挨拶】

 昨日、竹久夢二美術館の企画展「明治・大正・昭和 レコードの時代と夢二の時代展 ~大衆を魅了した日本近代の音とデザイン~」のギャラリートークに行ってきました。

弥生美術館の「アンティーク着物の魅力再発見! 「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展ともども大変な入場者数で、着物姿のお客様も多く、華やかな雰囲気の中で学芸員の石川桂子さんとレコードの専門家の保利透さんが大正期の社会状況を背景としてお話しされましたが、夢二とレコードの組み合わせとあって、とても面白いギャラリートークでした。

 かなり聴講者が多すぎて大分動きが制限されていましたが、それでも皆さん非常に熱心に聴かれていました。石川さんのお話も、夢二美術館ならではのレコードや音楽の紹介ということで、普段の夢二画等の説明とは趣が異なっていたのと、レコードの専門家の保利透さんのレコードの作り方から始まるお話とダブルで楽しむことができたからでしょうか。

ただ、ダブルヘッダーの解説とあって、1時間弱の枠内では説明しきれなかったこともあったのか、終盤に両名の対談形式で追加説明をするなど、聴講者の興味・関心に応える場面もありました。

▼ギャラリートーク模様

この展示で、二つほど面白いことに気づきました。

NHKの影響もあってか、笠木シズ子の「ホームランブギ」のポスターが展示されていましたが、これは1949年(昭和24年)のものでした。

ちょうど大谷のドジャース入りが注目を浴びている野球なので、この年の野球について調べて見たら、面白いことに気づきました。この年は日本の野球にとって大きな節目となったようです。

マッカーサー元帥が早慶戦の両校に激励メッセージを送り、戦後初の日米親善野球大会が開催され、日本でのセントラル・パシフィックの2リーグ制が敷かれた年でした。それでこの歌なんでしょうね。

 この年はまた、日本の基本的な省庁が新たに設置された年で、郵政省では戦時中に鉄製をコンクリート製に

代えるなどしてきたのですが、改めて現在人気のタイプの丸型ポストの鋳造を開始しました。

これが、1970年の大阪万博までの20年間の奇跡の戦後復興となる高度成長が始まった年でもありました。

 もう一つ気づいたのは、ハチ公の啼き声の入ったレコードの展示です。

ハチ公は今年非常に有名になりました。ハロウィンの混乱警戒のために渋谷駅で囲いをつくり、ハチ公を見えなくしてしまったことがニュースで何度も放映されましたが、それよりなにより、今年はハチ公の生誕100年なんですね。この年にハチ公の鳴き声を博物館で流しているというタイミングに驚いた次第です。

 本展はクリスマスイブの24日(日)までです。まだご覧になっていない方はお急ぎください。 
▼「ホームランブギ」のポスターとハチ公のレコード

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【夢二と美麗島】第13回「竹久夢二作品展覧会」

 1933年(昭和8)11月3日、台湾初の夢二展覧会が警察会館で始まりました。開会式が行われたという資料はありませんが、展覧会を提案した東方文化協会会長の河瀬蘇北の力もあり、警察はもちろんのこと、台湾総督府関係者には十分な周知が行われていたのではないかと思われ、鳴り物入りの初日とあって、多くの来場者があったことと思われます。しかし、当時の世相として、警察の施設が一般の日本人や台湾人に行きやすい場所であったかどうか、日本の絵画を扱う台湾人の画商などが来やすく入れる場所であったかどうかは、怪しいものであったでしょう。さらに不景気の最中、ということもあり、売り上げは夢二の期待通りにはいかなかったようだと藤島武二も述懐しています。

「竹久夢二画伯滞欧作品展覧会」の出品作は54点といわれています。滞欧作品『海浜』『女』『旅人』等の他、枕屏風『春夢幻想』『榛名山秋色』の近作、さらに有島生馬との合作で四尺二枚折屏風『舞姫』があったとのことですが、米欧の旅から帰国して1か月後の夢二がいきなりこんなに多くの作品を用意することは難しく、少年山荘にあったものなどいろいろ集め、ひょっとしたら色紙などは船中でも描いたかもしれません。スケッチでもそうですが、肉筆画なども相当描くのが早かったと語られていますので。

開会中の夢二が写っている写真を掲載した「台湾日日新報」があります。きれいに写っていないので表情はぼんやりした感じですが、相変わらず笑っていないようです。展示物も少し見えます。この展覧会の目録があります。全作品名が書かれています。夢二研究会会員で、昨年から今年にかけて台湾で夢二展を開催した王文萱氏がこの展覧会の目録を提供しています。また、今年7月に東京古書会館で開催された第57回「明治古典会七夕古書大入札会」でも出品されており、実際に手にしてみたところ、想像していたより薄いペラペラの紙に粗く印刷されたものであったことが分かりました。

また、最終日11月5日の「台湾日日新報」には、次のような記事が掲載されています。

「竹久夢二画伯滞欧作品展覧会

久々で竹久夢二君の繪を観る。時代の潮に姿を没したかに思はれてはゐたが、此の畫家が持つ昔ながらの「人間情熱」は、まだ作品の上にまざまざと活きている。否或る點で一部洗鍛され老熟して来たかの観もあり、相當に面白く観られた。油絵は柄でないようだ。多くの日本畫的手法による半折の美人畫には、藝術作品として卓抜さがドレ程あるかは疑問としても、人間の持つ情熱を描き出さんとして愈々刻苦してゐる夢二張りの長所は十分に認められる。

「萬里脚」などは小品ながら佳い。風景を畫いても此畫家は自分の情熱を畫面にさらけ出して楽しんでゐるといふ形ちだ。「榛名山風物」その他数作なぞはソレで相當に書けて来た書のうま味と共に南畫的情趣の世界を別に展開して来た。そして俳畫境にも一展開を見せてゐる。鋭い天分で藝術界を一貫する工作は無いとしても、情熱の動きをコレほど如實に傳へて呉る畫家も然う多くは無いといふところに、夢二君の存在価値は依然として認めてよいと思ふ。(鷗汀)」

なかなか好意的に好評をしてくれていますが、最終日ではなく、開催前に掲載してほしかった感があります。

 

ところで、作品は売れたものを除き亡失(盗取?)の憂き目にあうのですが、悪質な仲介業者のせいか、後日自動車の故障で夢二が船に乗り遅れた際に基隆の倉庫に残されたか、神戸に先に旅立ってしまったかして、その後に亡失したか盗まれたとも考えられ、いずれも推測の域を出ません。夢二は盗まれたと思っていたようですが、これについては後述します。なお、残った荷物ではなく、台湾で買われた作品や謝礼として贈呈した作品が台湾で発見される可能性もまだ残っています。

おそらく、台湾人にとっては夢二についての知識がほとんどなかったものと思われ、値段も高価であったと思われるため、買ったのも贈呈されたのも日本人の可能性が非常に高いですが、今後の調査によりひとつでも見つかることを期待してやみません。ただ、次のとおり、台北は太平洋戦争で米軍から大規模な空襲を受けていて、その犠牲者は日本人が中心であったことから、購入された作品の多くが焼失している可能性もあります。

様々な憶測を呼ぶ消えた夢二の作品ですが、これについての考察は今後も進めていこうと思います。(つづく)

(注)米軍による台北の空襲(wikipediaより)

 米軍による本格的な台湾空襲は太平洋戦争末期、フィリピンの戦いのために第38任務部隊の艦上機が来襲した1944年(昭和19年)10月12日に始まった。ルソン島占領後は陸上機も頻繁に来襲、屏東や虎尾の製糖アルコール生成工場、高雄港、岡山航空廠を目標にした。そして台北もアメリカ軍の空襲範囲に含まれ、頻繁な攻撃を受けるようになった。当初台湾に230機あった日本軍戦闘機は、台湾沖航空戦以来の戦闘でほぼ壊滅状態となった。

米軍による台北空襲で最も被害が大きかったのが1945年(昭和20年)5月31日の空襲。合計117機のB-24が波状攻撃により、5月31日の午前10時より午後1時まで台北を目標とした空襲を加えた。目標となったのは対空砲が残っていた台北城内(現在の台北市忠孝西路、中華路、愛国西路、中山南路に囲繞された地域)、城外の台湾歩兵第1連隊、野砲兵第48連隊(現在の中正紀念堂)などの軍事施設を初め、台湾総督府を含む、栄町、京町、文武町、書院町、明石町、旭町などの主要官庁街であった。3,800発の強力な爆弾が投下された。

この結果、最も大きな物的被害を受けたのが台湾総督府である。総督府は空襲を避けるために迷彩偽装が施されていたが、建物右翼が被弾し、中央塔脇のエレベーターと階段、その間にあった事務室が倒壊した。対家屋面積比の83%が被害を受け、以降の使用は不可能となった。更に当時建物内にいた人々が地下室へ避難していたところ、階段が瓦礫で埋まってしまったため全員が生き埋めになるという惨事も発生している。このほか総務長官官邸、台湾鉄道ホテル、総督府図書館、台湾電力株式会社、台湾軍司令部、台北帝国大学付属医院、台北駅、高等法院、度量衡所などの官庁が被害を受けた。
▼展覧会目録

▼展覧会場の夢二(「台湾日日新報」(掲載日不明))台湾日日新報(昭和8年11月)

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【素顔の素顔】夢二の素顔を関係者や研究者の文章から読み解いていきます。

■「父 夢二を語る」(竹久虹之助(夢二の長男)) 其の4

*『書物展望』第四巻第十一号(1934年、書物展望社)(『竹久夢二』」(竹久夢二美術館監修、河出書房新社)より) 

     そのかみの

     三味の師匠をたずねゆき

     あの娘のことをきくもかなしや。

     さだめなく鳥やゆくらむ

     青山の

     青のさびしさかぎりなければ

 童話を作り小唄を書きした父が、絵を描きながら頭に浮かんだ文句をノートの中に書き留めるのだけ拾っても、優に二冊位いの本は出来上る。着物の柄においても一つの意見を持ったくらいである。父はドイツ、フランスで集めたキレ・図案で日本のそれらに合わせるべく、非常なる意気込みであったがそれも今のとなっては無駄骨にすぎない。しかしそれらの材料を無意味に終らせ度くない。これは息子の私の義務でもあり責任でもあると考えて居る。(つづく)

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【夢二のカワイイ】「世界の“かわいい文化”は日本生れ!」

*『竹久夢二 かわいい手帖 大正ロマンの乙女ワールド』(石川桂子編、河出書房新社)より

<第1章>「かわいい×デザイン」

1 “かわいい”はここから始まった!

(9) かわいいモチーフ(その5) ― 小鳥

小さく丸みを帯びたシルエットやつぶらな眼、羽の形状を生かして、繊細でやわらかな印象の小鳥を、夢二はカットやさまざまなシーンで描き出しました。

1羽だけではなく複数寄り添う姿や、時には木々や花と一緒に、小鳥は愛らしく描かれました。

大正時代のペット事情に眼を向けると、大正5年(1926)頃には家庭で小鳥を飼うことがブームとなり、文化生活に憧れる市民の趣味として広がりました。

▼「竹久夢二 かわいい手帖」(石川桂子著)より

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【夢二に逢える場所(夢二展一覧)】

■竹久夢二美術館(東京都文京区)

 「明治・大正・昭和 レコードの時代と夢二の時代展 ~大衆を魅了した日本近代の音とデザイン~」(竹久夢二美術館、2023年9月30日(土)~12月24日(日)) <写真撮影可!>

 https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yumeji/outline.html

○「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展、東京・弥生美術館で - “銘仙”着物をコーディネートで紹介(弥生美術館、2023年9月30日(土)~12月24日(日))(FASHIONPRESSより)<写真撮影可!>

  https://www.fashion-press.net/news/107661

■金沢湯涌夢二館(石川県金沢市)★今日まで!

 「夢二の児童書」(2023年9月16日(土)~12月24日(日))

 金沢湯涌夢二館

 https://kanazawa-museum.jp

■竹久夢二伊香保記念館(群馬県渋川市)

 企画展はHP参照

 https://yumeji.or.jp

■夢二郷土美術館(岡山県岡山市)

・本館

 『松田基コレクションⅩⅢ:夢二名品展/特別公開 美しき女性たち』(2023年12月5日~2024年3月10日)

・夢二生家記念館・少年山荘

 2023年冬の企画展「夢二生家 ふるさとの冬」(2023年12月12日(火)~2024年2月25日)
https://yumeji-art-museum.com/

■高崎市美術館「生誕140年 竹久夢二展のすべて」(2023年11月11日~2024年1月14日)

 https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014011000353/

■渋谷区郷土博物館・文学館「竹久夢二」―いつもプロセスにいたい―」(2023年11月11日~12月26日)

 https://shibuya-muse.jp/

■竹久夢二美術館「夢二の旅路 画家の夢・旅人のまなざし」(2024年1月5日~3月31日)
 https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yumeji/exhibition/next.html
■佐野美術館「ときめき 美人―培広庵コレクション名品展」(2024年1月7日~2月18日)
 https://artexhibition.jp/exhibitions/20231209-AEJ1741387/

【展覧会以外】

●バスケ“八村塁”選手の歴史的秘宝&“竹久夢二”幻の油彩画を発見か!?さらに今田耕司 司会就任 丸10年特別企画も!/1月4日(火)夜6時25分「開運なんでも鑑定団 新春3時間半スペシャル」

●竹久夢二(1884~1934年)と千葉の関わりを紹介した冊子「竹久夢二と房総」を、八街市の日本文学風土学会員・市原善衛さん(73)が自費出版。(東京新聞より)
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/288094

●「岐路に立つ「金沢の奥座敷」 伝統の湯守りつつ新たな取り組みも(湯涌温泉)」(朝日新聞デジタル)

 https://www.asahi.com/articles/ASRBX6SG4RBRPISC01B.html

●『女の世界』大正という時代(尾形明子著、藤原書店)が発売中!

 百年前、こんな面白い雑誌があった!

 https://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865783926.html

●『大正時代の音楽文化とセノオ楽譜』(越懸澤麻衣著、小鳥遊出版社)が発売中!

   https://honno.info/kkan/card.html?isbn=9784867800096

●最新の夢二書『異国の夢二』(ひろたまさき著、講談社選書メチエ)が発売中!

  https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784065323465

●越懸澤麻衣著『大正時代の音楽文化とセノオ楽譜』が発売中!

 https://honno.info/kkan/card.html?isbn=9784867800096

●夢二の雰囲気に包まれてオリジナル懐石を楽しめる!――神楽坂「夢二」

 https://www.kagurazaka-yumeji.com/