■このブログは次の「週報 夢二と台湾2023」(2021.8~2023.8)の後継版です。

①創刊号(2021.8.8)~第37号⇒  https://yumejitotaiwan.exblog.jp

②第38号~第102号(2023.8.27)⇒  https://jasmineproject.amebaownd.com/

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★MENU★

1 ご挨拶  2 夢二と美麗島  3 夢二の素顔  4 夢二のカワイイ 5 夢二に逢える場所(夢二展一覧) 

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【ご挨拶】

先週は、横浜媽祖廟にお礼参りをして気が抜けてしまい、身体全体が不調になり、風邪からインフルという恐ろしいことにならないよう、努めてダラダラしていました。

このため、台湾から帰国して以来悶々として考えていた新たなプロジェクト「夢二の彦乃 愛の誓い2025」について、集中して検討する時間が出来ました。「ころんでもただ起きない」の精神による“動けない時間の活用”です。

本プロジェクトは、2025年が“夢二と彦乃がニコライ大聖堂で愛を誓ってから110年目”に当たることから、大正時代という時代の変革期の社会環境や女性の意識・行動の変化に着目して、この二人の5年余りの波乱に満ちた愛の軌跡を探っていこうというものです。これに合わせて、本年国内および台湾において講演会を開催した夢二の訪台についても、さらに調査を進めていくことにしています。

これと同時に、YouTube「夢二チャンネル(仮称)」の準備も進めており、来年初頭から試験配信を介する予定ですので、ご支援の程、よろしくお願いいたします。

ところで、上記プロジェクトを検討している最中に面白いことに気づきました。2025年は次のとおり、夢二にとって記念すべき年となる事象がたくさんあるんですね。5年ごとに大きな節目があるのも不思議です。ご参考にどうぞ。

 ・1895年、岡山県邑久高等小学校で恩師となる図工教師服部杢三郎に出会ってから130年。

(1900年、東京に単身上京する。)

・1905年、コマ絵「筒井筒」が第一賞を獲得し、独自スタイルの画家として出発してから120年。

(1910年、銚子・海鹿島で長谷川カタと出会い、翌年失恋して「宵待草」の原詩ができる。)

・1915年、笠井彦乃とニコライ大聖堂で愛を誓ってから110年。

(1920年、笠井彦乃が死去。)

・1925年、お葉と別れ、長期の愛人関係が終了してから100年。

▼横濱媽祖廟

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【夢二と美麗島】第11回「警察会館での夢二展」

昭和8年(1933)11月3日、警察会館で「竹久夢二画伯滞欧作品展覧会」が開幕しました。開催場所は警察会館。南陽街沿いの交差点の角に建てられたタイル貼りの壁を持つ建物で、住所は台北市明石町1丁目3番地(現在は、台北市南陽街15號)。鐡道ホテル(現在の新光三越)からも台湾博物館(現在の国立台湾博物館)からも徒歩5分程度という、官庁街でも交通至便な場所にありました。

警察会館については、日本統治時代の台湾の状況を説明しているブログ「林小昇之米克斯拼盤」の「2011年9月26日(月曜日) 警察会館」の欄に次のような要旨の詳細説明があります。(王文萱氏より情報提供、華語より機械翻訳の要約)

「警察会館は、宿泊施設、講堂、食堂、レクリエーションルームなどがあり、主に警察職員とその扶養家族の出張または休息に使用する施設を提供するもの。また、講義、芸術活動、映画やスピーチの集会場所としての機能もある。ここには警察会館長の住居も付属している。建物外壁は北投炉工業(株)の小口型タイルで、台湾総督府官房営修課の井手香、太田良三、宮川福松が設計・監修を担当し、主な工事は松永彦次郎が請け負い1929年7月26日に着工、1930年6月12日午後1時に上棟式が行われ、同年9月30日に完成した。 台湾警察協会は、1930年11月8日午後2時にグランドセレモニーを予定していたが、10月27日に「霧社事件」が発生し、警察ホールの完成式を中止せざるを得なかった。

2階の講堂では、商工団体への貸与や講演会が頻繁に開催され、日本の著名な建築学者である伊東忠太が、台湾建築会の招待で1936年8月10日に講演をしている。」

この講演会の様子は写真にありますが、おそらく夢二の展覧会もここで行われたと思われます。

ただ、「夢二 異国への旅」(袖井林次郎著)にもあるとおり、当時は、「台湾の日本画壇は石川欽一郎の影響力が圧倒的に強く、夢二などはそれこそ『夢二是誰(夢二って誰)?』ということになりかねない」といった状況だったと思われることや、「そのような場所を借りるにはかなりの政治力が必要だが、一方、『私たち台湾人には行きにくい所でしたよ』と私と同じ世代の日本語をしゃべる台湾人画商が語ってくれた」ということで、夢二の知名度低下や警察会館という会場設定が理由で展覧会が盛況にならなかったことが伺われます。また、夢二にとっても、「警察」の文字はあまり好ましい名称ではなかったと思われますが、この時は、資金集めの意向が強かったこともあり、河瀬蘇北の集客力に頼ったということでしょうか。(つづく)

※霧社事件:1930年10月27日、台湾の台中州霧社(現在は南投(なんとう)県仁愛(じんあい)郷)で起こった高山(こうざん)族の抗日蜂起(ほうき)事件。日本の植民地支配に対する原住民の不満が爆発したもので,モーナ・ルダオを指導者としてマヘボ社など6社約1500名が蜂起し日本人134名を殺害。台湾総督府は波及をおそれて飛行機・山砲等を動員、高山族1000余名を殺害して11月19日に鎮定した。台湾映画「セデック・バレ」(2011年、魏 徳聖(ウェイ・ダーション監督)に描かれている。

・魏 徳聖(ウェイ・ダーション:台南に生まれる。遠東工専(現・遠東科技大学)電機科卒業後、1995年から1996年に海象監督の『海ほおずき The Breath』にスタッフとして参加。2008年に『海角七号 君想う、国境の南』を発表し台湾で史上歴代2位となる興行成績を収め、2014年には永瀬正敏主演の『KANO 1931海の向こうの甲子園』を製作した。日本統治時代に強い関心を持ち、日本関係の作品をいくつか発表している。

▼警察会館概観

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【素顔の素顔】夢二の素顔を関係者や研究者の文章から読み解いていきます。

■「父 夢二を語る」(竹久虹之助(夢二の長男)) 其の3

*『書物展望』第四巻第十一号(1934年、書物展望社)(『竹久夢二』」(竹久夢二美術館監修、河出書房新社)より) 

 父の最も尊敬していたのは、岡田三郎助・藤島武二の二先生で、夢二の二は藤島先生の武二から取ったのだと、最近になって知った。

 父は時の文展に出品したい意嚮(いこう)だったが、岡田三郎助先生に「君の絵は、展覧会などに出して君の味を無くすより、自分で開拓すべきだ、自力でやる事は苦しい事や辛いこともあるだろうが、まあ会へなど出品するのはやめた方がいい」と言われた。

 それから後の父の勉強ぶりと言うものは、到底私共の想像も出来ない、まったく死に物狂いの勉強ぶりであった。今整理中のスケッチブックを見ても分るがどのノートを見ても、どれだけ熱心に描いたかが分る。ノートは大きな茶箱にぎっしり二個に入れてあるが、まだ自分で作った帖面に、紙切れに幾千枚、幾千枚と言っても決して過言でない事実である。このように努力に努力を続けて、あの所謂「夢二式」の絵が生まれた訳である。

 その種類は、支那・日本古代・錦絵・平安・元禄と実に整然と描かれてある。またそのノートのあき間には無数の歌・小唄・小説の中に出る言葉・随筆など、雑誌を買って帰りの車の中ですでにもう何か描いているのである。(つづく)    

▼夢二のスケッチ(「七夕古書入札会2022」(外遊時のもの))      

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【夢二のカワイイ】「世界の“かわいい文化”は日本生れ!」

*『竹久夢二 かわいい手帖 大正ロマンの乙女ワールド』(石川桂子編、河出書房新社)より

<第1章>「かわいい×デザイン」

1 “かわいい”はここから始まった!

(9) かわいいモチーフ(その4) ― フルーツ

色とりどりのフルーツは夢二好みのモチーフで、とくにさくらんぼとりんごは繰り返し筆をとりました。

夢二はフルーツの形状を生かしながら明るい色彩を施して、時には着物の柄としておしゃれに、またモダンな暮らしの象徴として描写することもありました。フルーツを描く場合は、全体的にかわいい要素を感じさせながらも、すっきりと洗練された画風でまとめています。(つづく)

▼「竹久夢二 かわいい手帖」(石川桂子著)より

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【夢二に逢える場所(夢二展一覧)】

■竹久夢二美術館(東京都文京区)

 「明治・大正・昭和 レコードの時代と夢二の時代展 ~大衆を魅了した日本近代の音とデザイン~」(竹久夢二美術館、2023年9月30日(土)~12月24日(日)) <写真撮影可!>
 https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yumeji/outline.html

○「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展、東京・弥生美術館で - “銘仙”着物をコーディネートで紹介(弥生美術館、2023年9月30日(土)~12月24日(日))(FASHIONPRESSより)

 https://www.fashion-press.net/news/107661

■金沢湯涌夢二館(石川県金沢市)★今日まで!

 「夢二の児童書」(2023年9月16日(土)~12月24日(日))

 金沢湯涌夢二館

 https://kanazawa-museum.jp

■竹久夢二伊香保記念館(群馬県渋川市)

 企画展はHP参照

 https://yumeji.or.jp

■夢二郷土美術館(岡山県岡山市)

・本館

 『松田基コレクションⅩⅢ:夢二名品展/特別公開 美しき女性たち』(2023年12月5日~2024年3月10日)

・夢二生家記念館・少年山荘

 2023年冬の企画展「夢二生家 ふるさとの冬」(2023年12月12日(火)~2024年2月25日)
 https://yumeji-art-museum.com/

■高崎市美術館「生誕140年 竹久夢二展のすべて」(2023年11月11日~2024年1月14日)

 https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014011000353/

■渋谷区郷土博物館・文学館「竹久夢二」―いつもプロセスにいたい―」(2023年11月11日~12月26日)

 https://shibuya-muse.jp/

■竹久夢二美術館「夢二の旅路 画家の夢・旅人のまなざし」(2024年1月5日~3月31日)
 https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yumeji/exhibition/next.html

【展覧会以外】

●バスケ“八村塁”選手の歴史的秘宝&“竹久夢二”幻の油彩画を発見か!?さらに今田耕司 司会就任 丸10年特別企画も!/1月4日(火)夜6時25分「開運なんでも鑑定団 新春3時間半スペシャル」

●竹久夢二(1884~1934年)と千葉の関わりを紹介した冊子「竹久夢二と房総」を、八街市の日本文学風土学会員・市原善衛さん(73)が自費出版。(東京新聞より)
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/288094

●「岐路に立つ「金沢の奥座敷」 伝統の湯守りつつ新たな取り組みも(湯涌温泉)」(朝日新聞デジタル)

 https://www.asahi.com/articles/ASRBX6SG4RBRPISC01B.html

●『女の世界』大正という時代(尾形明子著、藤原書店)が発売中!

 百年前、こんな面白い雑誌があった!

 https://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865783926.html

●『大正時代の音楽文化とセノオ楽譜』(越懸澤麻衣著、小鳥遊出版社)が発売中!

   https://honno.info/kkan/card.html?isbn=9784867800096

●最新の夢二書『異国の夢二』(ひろたまさき著、講談社選書メチエ)が発売中!

  https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784065323465

●越懸澤麻衣著『大正時代の音楽文化とセノオ楽譜』が発売中!

 https://honno.info/kkan/card.html?isbn=9784867800096

●夢二の雰囲気に包まれてオリジナル懐石を楽しめる!――神楽坂「夢二」

 https://www.kagurazaka-yumeji.com/