監督・篠田正浩
原作・司馬遼太郎「幕末・奇妙なり八郎」より
脚本・山田信夫
音楽・武満徹
33歳の 篠田正浩監督が
松竹時代 はじめて撮った時代劇。
モノクロ映像の 緊迫した画面に
ストップモーションなどを多用した斬新さで
「時代劇のヌーベルバーグ」と言われた。
幕末の動乱時代を舞台に
苛烈な政治抗争の 真っ只中に身を置き
後ろ盾となる藩も持たず
野望に生きた 清河八郎の半生を描いている。
清河八郎 (丹波哲郎)
これは間違いなく
丹波哲郎さんの 代表作の1本だと思う。
篠田監督の映画は
あまり多く観ていないのだけど
こういうセンスの
尖った作品を撮られていたとは知らなかった。
篠田正浩監督の作品では
『はなれ瞽女おりん』が 一番好きだったのだけど
ジャスミンは
この映画が一番になってしまった。
〇
文久三年
浪士取扱・松平主悦介は
幕府の密偵・目明しの嘉吉を斬った罪で追われていた
出羽浪人・清河八郎に
大赦により 罪を許し 恩を売った。
松平主悦介 (岡田英次)
それは無論、
文武に優れ 人心を掌握する術を持つ清河を
利用価値がある間は
利用しようという腹であったが
しかし一方で 松平は
清河を信用できない人間だと思っており
清河が意に添わぬ様に なった時のために
風心流の名人・佐々木唯三郎に
いつでも清河を斬れるよう 準備を命じる。
佐々木唯三郎 (木村功)
しかし それを見越したように
数日後、
ふらりと佐々木の道場に 現れた清河は
弟子たち万座の中で
佐々木を 二度まで打ちのめし
北辰一刀流大目録皆伝の腕を 見せつけた。
負けた佐々木に
「なぜ腹を斬らん!」と
激昂した松平だったが
敗者復活戦を 望む佐々木に
「そのままでは勝てん。
まず清河の人物を知れ」と助言する。
清河とは いったいどんな男なのか・・
彼を知る元幕臣らに寄ると
「背が高く 文武両道に優れ、
色白の男前、気品があっておしゃれである」
確かにおしゃれ
歩いているだけで 非凡なる人物を感じさせる
丹波さんが素敵。
また 清河は
「今日は勤皇、明日は佐幕・・」
尊王攘夷派なのか 幕府側なのか
微妙な位置に 自身の身を置きながら
弁舌さわやかにして 論旨明快
力強く未来を説く彼に
若き志士たちは 魅せられた。
松平が思うに
清河という男は 一種の毒であり
毒を以て、毒(勤皇の志士)を制しようという
考えからだったが
清河はやがて
のちの新選組の母体となる 浪士組を結成。
そののちには
「清河幕府」を樹立すると豪語する。
その自信と傲慢!
この独断専横に 手を焼いた松平は
遂に今こそ
佐々木唯三郎に 清河の暗殺を命じる。
清河の身辺を探る 佐々木唯三郎。
冒頭、清河が
幕府の密偵・嘉吉を斬った際、
死体検分をした 役人の話。
嘉吉 (山路義人)
浪人・清河を見下した 嘉吉を
一瞬の間に 無礼斬りした清河。
その斬られた首は
尋常のものではなかった。
一瞬、宙に高く跳ね上がり
そして地に落ちた首は
笑った顔のままだったと言う。
恐怖を感じる間もなく斬られたのだ。
だがこれは 清河にとって
はじめて生身の人間を斬った 経験であり
この後、現場から逃げおおせた清河は
彼が妓楼から身請けした 愛人・お蓮に
子供のようにすがりつき
錯乱の態であったことを知った佐々木は
「奴を 斬れる!」と確信する。
お蓮 (岩下志麻)
やがてお蓮は
幕府に追われた清河をかばって捕らえられ
拷問により 惨殺される。
その様子を見た 役人の胸中は
「自分のために
命を捧げてくれる女がいる清河が妬ましい。
それ以上に 清河という人間が
途方もなく大きな人間に見えて来た」
お蓮の死を 後で知った清河が
「お蓮は良き操の女だった。
何とぞ何とぞ 私の本妻とおぼし召し
朝夕の回向(えこう)を願い・・・」
このような
国元の母に宛てた 長い手紙を書きながら
泣き寝入りしてしまう その姿がいじらしい。
ほかに
土佐を脱藩した坂本龍馬 (佐田啓二)
幕臣の山岡鉄舟 (穂積隆信)
同士の石坂周吉 (早川保)
宮川進吾 (竹脇無我)などから
清河の人間性が語られるが
彼の本当の姿を 知る者はいなかった。
思わず目をふさぐ 寺田屋事件の迫力。
篠田監督らしい 美しい俯瞰気味のシーン。
武満徹さんの音楽は
尺八とプリペアド・ピアノのみを使用。
これがシャープな映像にぴったり。
尺八 (横山勝也)
プリペアド・ピアノ (一柳慧)
一柳慧さんは
オノ・ヨーコさんの始めの ご主人だった方ですね。
また、舞台演出家の
蜷川幸雄、武智鉄二さんも
重要な役で 出演していました。
特に 時代劇好きな方には
絶対、満足できる映画だと思います。
U-NEXTで鑑賞しました。
おしまい













