優しい時間
今日は魔法騎士3人と、ランティス、フェリオ、アスコットの6人でのお茶会が開かれていた。
なんということはない。たまたまこの3人に用事がなかったため、先の6人でのお茶会になったというだけのことだった。
「ねぇ、何かしらこの飲み物。とっても綺麗な色ね。」
海の作ってきたケーキに、フェリオやランティスが市場で仕入れてきた沢山の飲み物が並ぶ。その飲み物たちは全て東京では見ることのない物だ。甘い物から苦味のある物、酸味のある物、色とりどりの飲み物を3人は楽しんでいた。
そんな中、海がひとつの瓶を手にとった。
「それは…」
「うん、美味しいわ。光たちも飲む?」
ランティスが止めようとしたのも虚しく、海はそれを口にした。
「わっ、ウミ!それは飲んじゃダメだよ!」
慌ててアスコットが瓶を取り上げる。意味がわからない海はきょとんとしてしまったかと思えば、せっかくの美味しい飲み物を説明もなく取り上げられたことに怒り出した。
「なんなのよーもう。せっかく美味しかったから、みんなにもあげようと思っらのにぃ…あ、あれぇ?」
「それは酒だ。」
慌てたフェリオも、海を宥めるように説明をした。
「しかももの凄く強いやつなんだ。すまないウミ、俺のなんだが…他の物に混じって置いてしまったみたいだ。」
だがしかし、既に酔いのまわった海にフェリオの説明はあまり意味をなさなかった。
「もーなんらのよぉ、ちょっとぉ。クレフークレフー?」
何を思ったのか、海はふらふらと席を立つと、千鳥足で扉に向かって歩き出した。
「もう、なんて物を置いておくんです!海さん待ってください!」
「いや、ちょっと待ってくれ。」
フェリオは海を追いかけようとする風の腕をつかんだ。
「放っておこう。」
何を言うのかと思えば、フェリオはあんなになってしまっている海を放っておこうというのだ。信じられない、といった顔で見る風にニヤッと笑って言った。
「あの酒は特殊なんだ。」
「特殊?」
光が心配そうに尋ねる。
「あぁ、あれは珍しい酒で、飲んだ人間の想い人にしか酔いを覚ますことができない酒なんだ。」
普段無口なランティスが光を優しく見つめながらその意味を言葉にした。
「じゃあクレフにしか治せないってこと?」
光の純粋な質問にアスコットの顔色が急に暗くなる。
「…そうだと思うよ。だから多分本能的にクレフのところに行っちゃったんだと思う…。」
4人は、明らかに暗くなってしまった空気にいたたまれない気持ちだったが、何よりアスコットが1番いたたまれない気持ちであることは明白だったため、なんとかこの話題の矛先を変えようとした。
「あら、そういえば何故フェリオがそんなお酒をお持ちでいらっしゃったのですか?」
不意に浮かんだ疑問、風はフェリオに問い掛けた。
「あーいや…その…」
「どうしてです?」
ランティスに目で助け舟を求めては見るものの、知らん顔をされてしまった。
-俺を巻き込むな。
明らかに顔がそう言っている。
「その…風に治して欲しいなって。だってそうなれば堂々と甘えられるだろ?まさか他のヤツが飲むなんて考えてもみなかったんだよ。」
「フェリオっ!」
怒りと恥ずかしさとが入り交じり、風は顔を真っ赤にしてぷいっとフェリオに背を向けた。
「もう!あなたなんてしりません!」
「フウ~。」
甘えるような態度を、背を向けてしまった風に対してとってみたものの、風は知らん顔をしたまま黙り込んでしまった。
「でもなんで海ちゃんを放っておくんだ?クレフのところに連れていってあげればいいじゃないか。」
光がまたも尋ねる。クレフという言葉が上がるたびにアスコットが肩を落とす。
「僕らが行くと、ウミたちの…邪魔だからだよね、フェリオ…」
「…。」
これ以上落ち込むことはできないだろうというところまで落ちると、アスコットは傍にあった飲み物を片っ端から飲み干していき、4人は黙ってそれを見守るのだった。
時同じくしてその頃、なんとかセフィーロ最高の魔導師であり、海の想い人でもあるその人のいる部屋の前まで海は来ていた。
わかっている。彼が仕事中であることくらい。でも…
体がいうことを聞かない。どうしても今、クレフのもとに行かなければならないのだと、海の体がいっているのだ。
「クレ…フぅ…あけてー。」
扉の向こうから聞こえる声に、クレフは筆を置いた。ただ何かおかしい。いつもならノックをして自分に声をかけるはずだ。しかし今日はどこか違う。
「ウミか?今開けよう。」
とりあえず扉を開けてみると、そこにもたれ掛かっていた海が倒れるように中に入ってきた。あろうことか、海はそのままぺたんと床に座り込んでしまった。
「ウ、ウミ?一体どうしたんだ?」
クレフの言葉に反応したのか、海は垂れた頭をもちあげ、クレフを見るなりニッコリと笑った。
「クレフー!」
明らかにおかしい海の様子を見てクレフは驚いていた。座り込んでしまった海に近づいてみると、とても甘い香りがする。
「ウミ、一体何があった?」
静かな部屋にクレフの言葉が響く。
「フェ、リオの…お酒…のんらったの。」
「…酒?」
-まったく。王子は一体どんなに強い酒を飲ませたのだ。
そう思ったのも束の間、その甘い香りに包まれた。
「クぅレぇフっ!」
海が勢い良くクレフに飛びついてきたのだった。もちろん支えなければならない彼女の身体より小さなその身体に、彼女を支えきることはできず、そのまま二人で倒れてしまった。
何の音もしない広い部屋にただ二人、横たわって天井を眺める。海はともかくセフィーロの最高位の魔導師であるクレフが床に横たわったままでいるなんて、なんとも不思議な光景だった。
「あのね、クレフ…わた、し、すごーくクレフにあい、たくて…いっしょにいた、くて…」
ぼんやりと天井を見つめたまま海が言った。
ちらりと彼女を見てみる。長い海の蒼い髪がキラキラと水辺に浮かぶ水面のようにクレフの目には映った。言っていることはかえって子供じみていたにもかかわらず、酔った海の艶やかな姿は、急に彼女を大人にしてしまったように思えた。
「きちゃったの。ごめんらさい…」
あまり口にしない海の正直な気持ち。いつだって、何をしていたって思ってしまうこの気持ち。
-クレフの傍にいたい。
酒の力を借りて出たその言葉に、思わずクレフは微笑んだ。
「そうか。」
なんだかいつもの強気で凛とした姿ではなく、また時たま見せるしゅんとしたはかなげな姿でもなく、素直なそれでいて少し甘えたような彼女の珍しい姿に、胸の高鳴りを感じた。
彼女がいつも自分のために我慢をしていることは気づいていた。もちろん申し訳ないと思い、できる限りのことはしようと努力してきたつもりだ。でも、それでも彼女は自分に気づかれないように我慢をしているとわかっていた。だからこんな風に彼女が甘えてくることがとても新鮮だった。そしてそんな風に言う彼女をとても愛しいと感じた。
そしてふと気がつく。彼女のために努力していたのではなかったということに。どうやら自分は、自分で思っていたよりもずっと、彼女のことが好きだったらしい。彼女のためではなく、自分のために努力をしていたんだとようやく気がついた。早く海に会いたくて、会いたくて…。海がこちらの世界に来るまでになんとか仕事を片付けようとしていたのも、すべては自分の願望のためだった。そんなことに今更気がついたのだ。
なんだかおかしくて笑いが込み上げてくる。
「ははは・・・そうだったのか。」
「どう…したの?」
ほんのりピンクがさす頬、きょとんとした彼女の表情。
クレフは優しく海を抱きしめた。
「ク・・・レフ?」
「ウミ、私はウミのことが好きだ。」
改ためてそうなことを言われ、海は不思議そうにクレフを見つめた。
「ウミとこれからも同じ時を過ごせたらと思う。」
「…。」
「今日みたいに言ってもらえると私はとても嬉しいらしい。」
「…ほんと?」
海のぼうっとした頭にクレフの言葉が響く。クレフの優しい笑顔が占める。この世に自分とクレフだけが存在するような錯覚に陥る。
「あのね、私…もっとクレフと、いっしょにいたい、の。」
「うん。」
「ほんとはね、いつもさびしいの。」
「うん。」
「そばにいたいの。」
海の頭をそっと撫でる。彼女の一つ一つを受け止めるように。
「…ウミ、私はウミを愛している。」
穏やかな、静かな、温かな口付け。この空間だけ時が止まってしまったのではないかと思うほど、今が永遠であって欲しいと思うほど、優しい時間だった。
「ウミ?」
見れば彼女の桜色に染まった頬は、いつもの透きいるような白い頬に戻っていた。
「クレフ…私…」
酒の効果が切れた海の脳裏に、ついさっきまでの自分が思い出される。
「ご、ごめんなさい!!私…クレフは仕事中だったのに…」
彼女は勢い良く起き上がり、その声は部屋中に響きわたった。申し訳なさそうにクレフの顔を覗き見る。するとなぜかクレフはクスクスと笑っていた。
「なんで笑うのよ!」
しおらしい表情をしたかと思えば、もういつもの強気な彼女だ。
「ウミ、私がさっき言った言葉をもう忘れたのか?」
「え…」
だんだんと思い出してきたらしい彼女は、頬を真っ赤に染め上げた。
「そう気にするな。」
ウミの流れるような髪をひとすくいするとクレフは口付けを落とした。
「私がウミといたいのだから。」
そのままもう一度…
二人の間に、優しい時間が訪れた。
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読んでくださった方、本当にありがとうございます。
今回はクレ海です。設定なんてものは適当でございます。はい。
ってかこんなタイトルのドラマがあったような気がする…。
気だけ…?だよね、うん。気にしないことにしよう。
いやーんもうクレフさんってば![]()
ってことで、
優しい時間がどこまでいっちゃうのか私はしりません(笑)←おいっ
アニメでは報われない、原作ではなんだかわからない、でなんかかわいそうですよねー海ちゃん。
私は思う。
絶対海ちゃんはクレフが好きだし、クレフは海ちゃんが好きなんだー![]()
というわけで私が書くものはすべてそうなっております( ´艸`)あは。
フェ風は流石だよね![]()
![]()
いつだってどれだってらぶらぶだもーーーん![]()
そのうち思い出したらちょっと直そうかな。
だってどうしても冬休み中に上げたかったんだもん。