動産評価人の日記

動産評価人の日記

米国鑑定士協会(ASA)のライセンスを取得し、日本でも評価制度を定着させようと微力ながら活動しています。
2013年10月から評価人仲間と有限責任事業組合(LLP)を結成しました。
※ブログの見解は個人の見解で、所属団体等との見解と異なることがあります。

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今日の午後、文京シビックセンターのスカイホールで日本資産評価士協会(JaSIA)の会員説明会がありました。
その中で資格証書の授与式がありました。

7月29日に認定会員になった旨の通知がメールであり、その後、Approved letterやASAのバッジがアメリカから郵送されてきましたが、資格の認定証はChapter(支部)から直接手渡しされるとのことでした。
JaSIAは実質的にASAの日本支部ですので、JaSIAから授与されました。

この日に授与を受けたのは7月に認定された6名と、8月に認定された3名。計9名。
この9名が日本で養成され資格を授与された最初の9名という位置づけになっているようです。

我がLLPからは大ベテランのA先生が、経験を評価されて上級会員にダイレクトで認定され、A先生も認定会員になりました。

お蔵入りになっていたASAの肩書き入り名刺も使用解禁に。
3名そろい踏みで使えたのは感無量でした。


懇親会が終わる頃には、窓の外もすっかり夜景に変わっていました。



ひとつ残念だったことは話に夢中になってしまい、食事をとりそびれたこと。
唐揚げ5個とワインだけの晩餐でした...。
「動産の価格は簿価でわかるからそれで十分」という話は我々の世界ではよく聞く話です。

一般の人が言うならともかく、会計の知識のあるプロの方も平気でそのようなことを仰せになることが結構多いのです。

そもそも「簿価」とはいったいなんでしょうか。

一般に簿価とは「貸借対照表に記載された試算の価格」を言います。

では、貸借対照表に記載された弛緩の価格はどのように作られるか。

資産を購入する時には、対価として現金または現金等価物を相手方に支払うのが通常ですが、その対価の額が資産の取得原価になります。高価で耐用年数の長い資産の場合は、対価を支払った時点で一気に費用にせず、いったん貸借対照表に資産計上して、それを毎期の支出に配分します。簿価は取得原価から、すでに各期に費用配分された合計額を控除した価格と言うことになります。

ではその各期への費用配分はどのようにして行われているのでしょうか。
ざっくり言うと取得原価を耐用年数で割った一定額(定額法)や、一定の率(定率法)で各期への配分額を決めます。
また、耐用年数は主に税法上で決められた耐用年数が用いられます。

日本では機械装置の買い換えを促進させるために、耐用年数は実際の年数より短めに設定されていると言われます。ですから、各期への配分額は大きく、未償却残高である簿価は小さくなる傾向があります。

本来、会計のあるべき姿は企業の経営成績や財政状態をステイクホルダーに正しく知らしめることなのですが、手間やコストばかりが重視されて簡便に済ませることとができる税法の計算をそのまま利用するケースがほとんどです。
税法の場合、重税感を軽減するため比較的資産の価格や利益は公正価値に比べて低く表示させる傾向にありますから、税法による損益計算をそのまま援用した場合は、公正価値との乖離が大きくなります。

とはいえ、間接部門で事務負担やコストを割くわけにはいかないでしょうから、税法上の計算を活用することはやむを得ないでしょう。
但し、公正でカレントな資産価格を求める際に、簡便な方法で求めた価格を何も考えずに利用することはどのようなことかは推して知るべしであって、そういう時のために我々資産評価士は日々研鑽を重ねているところです。

一般に鑑定評価の世界では、原価法(コストアプローチ)、取引事例比較法(マーケットアプローチ)、そして収益還元法(インカムアプローチ)の3手法によって評価対象物の価格を求めることになります。

理論的には3手法は等しく妥当なものと考えられているのですが、現実の評価においては、評価対象物の性質、評価目的、資料の収集や分析の限界等によって3手法すべてを適用できない場合や、いずれか1~2の手法による試算価格を重視すべき場合などがあります。

たとえば、不動産の場合は取引事例比較法のウエイトが比較的高くなります。特に土地は自然的作用でできたものであり人間がその一部の範囲を勝手に区切って排他的に利用しているだけのものですから、基本的には再調達・再生産という概念にはなじまず、原価法の適用ができません。従って、マーケットでどのような価格で取引されているかが重要な指標になってきます。不動産でも土地・建物で収益を上げている場合などは、事業収益が重視されますから収益還元法のウエイトが高くなります。

動産の場合はどうでしょうか。
取引事例比較法による試算価格も有力な数字の一つです。なんと言っても換金価値を考えた場合は市場でどのような価格で取引されているかはきわめて有力な判断材料になります。
とはいえ、土地と異なるのは比較が難しい点が上げられます。土地の場合にはある程度地域性が認められ、その中で明確に大体競争関係が認められることが多いのですが、機械の場合は多種多様になりますから、マーケットデータを体系化したり定量的に比較するのが非常に困難です。また、市場価格の変動が不動産に比べてきわめて大きく、比較的近時の価格データでも全く当てにならないケースもあります。従って取引事例比較法は適用が難しかったり、適用ができても信頼性が低い場合が多いのです。

とはいえ、建設機械や自動車、航空機など、中古物の売買マーケットが比較的整備されているもの、旋盤やマシニングセンタなど生産量がまとまっていてユーザーも多い機械については、取引事例の取得が可能であれば説得力の高いマーケットアプローチによる試算価格を求めることも可能です。

但し、評価目的と求める価格に注意しなければなりません。
あまり流通性の高くない機械の場合は、廃材としての市場価値が形成されている場合があります。
継続使用前提の評価で廃材としての取引事例を使用して求めることはナンセンスであり、このような場合にはコストアプローチを重視すべきです。

特に不動産分野に精通している方はどうしても取引事例を重視しがちですが、不動産ほど重要性は高くありません。
また、機械の評価額を中古機械の取扱業者に聞いて調べようとする場合もあると思いますが、上記のように廃材価格になってしまうこともありますので、継続使用を前提とする場合にはこうしたデータは説得力を持ちません。

いずれにしても、取引事例比較法のキモである「比較可能性」を吟味することが必要です。