【著者】小川洋子
【出版】新潮文庫
【価格】362円(税別)
知人の薦めで読みました。何の本、誰の本が好きかという話になり、その方は小川洋子が好きでその中でもこれが1番、との事。それは是非読んでみないとっ!と言うわけで
この文庫版には表題の「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の2本が収録されています。
「薬指の標本」では、ラスト主人公は先が欠損した薬指自体を標本にしてもらおうとする所で終わりますが、そもそもこの薬指とくっついている体の方はどうなるのか。そもそもこの時点で主人公の感覚が薬指自体に取って代わっているし(「……漂う薬指を眺めてほしいと思う。わたしは彼の視線を一杯に浴びるのだ」 P90)。
体が消えていくことで、逆に<ある>ことが強調されているような気もします。特に今まであったものが事故による怪我でなくなった事で、存在を意識すらしていなかったと思われる薬指に無意識にも意識が集中してゆく…。
どちら不思議な雰囲気の作品でしたが、「薬指の標本」の方は特に、人体の一部への異常なまでの執着と、同時にその部分が消えてなくなっている事によって希薄化する感覚の融合やバランスが幻想的な感じでした。