三宅香帆 著

 

夏になると

新書とか、ビジネス書とか

ちゃんとしたもの?を読みたくなる。

 

そして「夏の思い出」のひとつとして

心に残る。

 

昨年は「マネジメント」を読んでいたのですが

今年はこちら。

 

 

著者の方は、私より少しだけ年下の

読書好きの方。

なので、とても親近感を覚えながら読むこともできた。

 

現代を生きる本好きなら、多くの人に刺さるだろう

このタイトル。

 

本を読めるだろう時間は、ついスマホ。

私もほんの2~3年前まで

まさにこの悩みをもっていました。

 

本好き著者もまさに、そんな自分にショックを受けたとのこと。

 

「労働」というのは

なにも現代に始まった話ではないのに

なぜ、本が読めない現代人が増えているのか。

 

近代以降の労働史、読書史を紐解きながら

その謎を考察していく。

 

大学の論文のように

きちんと文献を調べ、調査、考察をされていて、

こちらも一緒に学べている感覚なのもよかった。

 

(巻末の参考文献リストが大変な数になってました。すごい。)

 

 

読書が「ごく限られたエリート」のためのものだった時代から始まり、

賢い国民を多くつくろうと、「読書」や「音読」に舵をきった政府の戦略。

地方にも徐々に、図書館ができはじめる。

 

階級格差をうめて

エリートに追いつきたい人々は

本を読むことで、その差を埋めようとし始めた。

 

これが現代において「自己啓発書」を読む人々と同じ構図。

 

とってもわかる!!となった。

ぶっちゃけ、学力中流くらいの人たちが

自己啓発書好きで読んでいる気がする。

 

トップ層は、もっと思考が必要な本を

息をするように難なく読んでる。と思う。

 

 

戦前、

定期購読で手軽に読める文学全集を

応接室に並べることで、

教養がある、とアピールしようとしていた頃。

 

戦争の激化で

読書どころではなくなった時代を経て

 

戦後。

高度経済成長。

労働時間が長時間に及ぶようになり、

余暇ですら、会社で済ませる時代に。

*だから、社員旅行とか盛んだったのね!

 

会社が丁寧に社員を育て、終身雇用する、といった

いわゆる日本的働き方はこの時代に確立されていく。

 

そして

忙しいサラリーマンでも読めるように、と

わかりやすいタイトル、内容の本が多く出版されるようになり、

読書は

インテリ階級のものだけではなく、

広く大衆に開かれたものになっていく。

 

本を読めば、エリ―トに追いつくこともでき

能力を身に着け、仕事ができるようになれば、

社会を変えることもできていた。

 

 

 

バブルが崩壊し、

簡単に社会を変えられなくなった日本。

 

変えられる「自己」へ、人々は興味をもつようになる。

 

私もまさにそうだ。

 

物価高、人々の意識の変化、

自己実現のために、会社や世の中の仕組みを変えることは難しいと肌で感じて、

世の中の仕組みを変えずに、自分がどう生きればいいのかを模索していた。

 

 

その傾向が進んできた結果

自分と関係のない話は

「ノイズ」

となり、

ネットで必要な情報のみしか受け付けなくなった。

 

読書していると、

思わぬところから、自分の想像もしていたかった話が飛び込んでくるものだ。

 

それを楽しむのが読書なのだけど

そんな余裕がないのが、現代。

 

新自由主義とも呼ばれ

個人の「自由」が尊重される時代。

 

 

「個人の自由」を重視しすぎて

「社会は関係ない」となった結果、

 

これっておかしくない?

ということが、2024年の日本にはたくさん起こったように思う。

 

そして

おかしいよね?と発言する人も多くでてきたように思う。

 

新自由主義は

新しい局面に、今まさにいるのかもしれない。

 

そんな新しい局面で

私は大事な「おともだち」が大炎上するのをみた。

 

それは、次の記事に。

ちなみに次に読む本は「推し、燃ゆ」に決めています。

 

 

 

本書では最後に

「半身で働く」ことを推奨する。

 

全身全霊で物事に取り組むから、

他者や自分自身と関係のないものを受け入れられない。

 

半身であれば、それを受け入れる余裕ができる

そうすると、他者を思いやる余裕もできる。

 

ただ、半身で物事に取りくむというのは

本来とても難しいこと。

でも若い著者は

「そんな社会を、あなたとこれから一緒に作っていきたい」

と提案してくれる。

 

私はこの提案に

強く賛同しています。照れ

 

私が昨年くらいから

「働きながら本が読めるように」なったのは

やはり「半身になったから」というのはあると思う。

 

全身全霊で仕事に向かっていると

上手くいかなかったときに、やはりとてもストレスになるし、

お金の問題もあって

副業を考えるようになってから、

本も読めるようになってきたと思う。

 

本著でいう「他の文脈」が受け入れられるようになった。

 

本職の仕事も自由がきくお仕事、というのも大きいだろうけど。

 

また、それに伴って

生活習慣も工夫してきた。

 

結果、本を少しずつでも読めるようになってきたし

読めた結果、やはり楽しいし多くの学びがあると

もっと読みたくなって、習慣になっていく。

 

でも上記の「工夫」があるから

読めているので

著者の言う通り、簡単なことではないのもよくわかる。

 

私自身、

これからも「働きながら本が読める」生活を

続けられる努力をしていきたいと思う。

 

それが、結果、他人を思いやれる

気持ちのいい社会をつくる一助になると信じて。

 

 

こんなに蜜の濃い感想を書くくらいには

とても印象に残る、素敵な1冊でした。

また何度でも読み返したい、大切な1冊になった。