どうせ覚えてはいないだろう。この前の「大人時間」の後にも、結局触れずじまいだった。
だが、間違いなく今年は、妻と出会って30年目の節目なのだ。

最初はただのグループでの集まりだった。
それがいつしか、会社の帰りに車で送るのが当たり前になり、公園に車を止めては夜遅くまで言葉を交わすようになった。

ある夜、話の途中で猛烈に「キスしたい」という衝動に駆られた。
まだ互いの気持ちを完全には確かめ合っておらず、拒否される可能性も十分にある一か八かの賭けだった。ゆっくりと顔を近づけていく。

不意を突かれた彼女は一瞬驚いた顔を見せ、「彼女に怒られるよ」と言いながらも、そっと私の首に手を回してきた。
その手慣れた仕草に少し驚いたのを覚えている。当時の私はまだ、彼女に専門学校時代からの彼氏がいて、すでに大人の恋愛を経験済みだとは知る由もなかったからだ。

あれから30年。
あの9月の出来事を、妻はどこまで覚えているのだろうか。