個人的な話ですが、私にとって英語だと困らないのに日本語だと困ること。


いくつかありますが、最たるものは「you」に相当する適切な代名詞が日本語にないこと。


英語であれば、誰に対しても、例え相手がオバマ大統領であったとしても「you」で全て用が足り、フランス語でも「きみ」なら「tu」、「あなた」なら「vous」、中国語も「你」や「您」の二つで事足りますが、日本語だと相手との関係性によって色々と使い分けなければならないのが、なんとも悩ましいです。

場合によっては、相手を代名詞で呼ぶことすら失礼な場合もあります。

例えば、会社の上司。

若い頃は、「あなた」という言葉は誰にでも使えて、かつ失礼に当たらない代名詞だと思っていたのですが、ある時、上司や目上の人に「あなた」と言うことは失礼に当たるんだと聞かされたときに、非常に戸惑いました。

「あなた」の他に、現代日本で日常的に使っても変でなく、かつ失礼のない代名詞が私には他に思いつかなかったので、ならば何を使えばいいのか分からなくなってしまったからです。

そういう時は、相手の名前、例えば「○○さん」であったり、役職、例えば「課長」や「店長」であったり、彼我の関係性によって、例えば「先生」や「お兄さん」と呼べということでした。

確かに呼び方としてはそうなんですが、私が知りたかったのは、呼び方ではなく、代名詞として何を使えばいいのかということで……。

ところがそういう時は、代名詞は一切使わないで、「○○さん」だったら終始「○○さん」で押し通せってことなんですよね。

他にも、私は関西出身なので、若い頃、大概、同年齢か年下の女性に対しては、友達になれば「お前」という代名詞を使っていたのですが、東京だとこれを嫌がる女性が時々います。

「お前」と言うなと。仕方ないので「あんた」で代用したところ、それも駄目らしく、「きみ」という代名詞は関西ではどちらかというと男らしくない男が使うイメージがあり、若かりし日の男としてのプライドが許さず、これは自分としては使いたくありませんでした。泣く泣く「あなた」と言ったところ、なんか皮肉っぽく聞こえたらしく、これさえも却下されました。

じゃあどうすればいいのだと訊いたところ、やはり名前で呼べということでした。つまりは代名詞は一切使うなということですね。

代名詞で呼ばれるのが嫌な女性は大概「名前があるんだから名前で呼ぶべき。なんのために名前があるの」と言います。

ですが、そうなると何のために代名詞があるのか分からなくなります。世界中の誰でも名前はあるわけで、それでも他の言語だと会話の中に頻繁に代名詞は出てきます。

英語で一々「やあ、トーマス。トーマスに渡したい物があるので、後でトーマスの家に行っていいかい?トーマスが良ければだけど」なんて会話はしません。

「トーマス」はまだいいとして、「○○ちゃんのお母さん」なんて呼び方をしないといけない相手だったら、会話中に舌を噛み切りそうです。


そもそも代名詞が場合によって一切使えない言語というのは言語としていかがなものかって思います。なんとも不便に感じるし、第一、会話をしていて気持ち悪い……。英語の「you」に慣れ親しんだ者としては特にそう思ってしまうのかもしれませんが……。




日本語で会話をする時、せめて「あなた」くらいは、誰に対しても使って良い代名詞ってことにしてくれませんかね……?