梅雨入り間近の箱根・仙石原。
 

 


  


高原の澄み切った空気と陰暦5月5日(今年は6月10日)に天から降り注いだ御神水をたっぷりと蓄え、どこまでも清らかに浄らかに輝く花々。

古来より、陰暦5月5日午の刻に降った雨水が竹の節に溜まったものを飲むと薬効があるとされているそうですが、この花たちを見るとその言い伝えを信じてみたくなります。

 

 


 


「あじさい」の語源ははっきりしないようですが、日本語で漢字表記に用いられる「紫陽花」は、唐の詩人・白居易が別の花(おそらくライラック)に付けた名だそうで、平安時代の学者・源順がこの漢字をあてたことから、誤って世に広まったと言われているとのこと。

ちなみに『万葉集』では「味狭藍」あるいは「安治佐為」、平安時代の『和名類聚抄』では「阿豆佐為」の字があてられているようですが、どうやら漢字自体に意味は無さそうですね。

もっとも有力視されているのは、「藍色が集まったもの」を意味する「集真藍(あづさあい)」がなまったものとする説だそうですが、ちょっとこれでは説明的過ぎていささか興醒めな感が否めません。
 

 


 


やはり白居易の「紫陽花」をあてた源順先生、むべなるかなと喝采を送りたくなります。
 

 


  


ちなみに白居易と言えば『長恨歌』、『長恨歌』と言えば楊貴妃ですが、楊貴妃の元の名は「玉環」だったとのこと。

長恨歌の貴妃は「芙蓉」に喩えられていますが、仙石原のあじさいは白楽天が描いた究極の麗人である「玉環」を彷彿とさせるように、私には思えてなりません。