作新学院新聞第202号(平成27年3月1日発行)掲載

 今、悲惨なテロ事件が世界を不安に陥れています。
 テロの脅威に、決して屈しない-その決意とともに、命を絶たれた方々の尊い犠牲と、ご家族の悲しみに報いるため私たちには今、「しなければならない事」と「してはならない事」があると思います。

 まず、「しなければならない事」。
 その一つが、「世界を知る」ということです。
 民族や宗教が異なる様々な人々が共に暮らすこの地球上で、現在起きている事実、過去に起きてきた事実を、できるだけ偏りのないよう、より広くより多く知るということです。
 数々のテロ事件の背景には、そうした結果に至るまでの経過や原因が必ず存在します。私たちはその事実を知り、原因の根絶に努めねばなりません。
 知らない事、知ろうとしない事。
 無関心も暴力と同様、大きな「罪」であることを忘れてはなりません。

 しなければならない事。
 もう一つは、「多様性を尊重する」こと。簡単に言ってしまえば、「互いの違いを認める」ということです。
 年明けにフランスの週刊紙社「シャルリ・エブドゥ」が襲撃され、13名もの死者が出ました。事件を受けて同紙は、テロリストの暴力に屈することなく表現の自由を守り抜く意思表明として、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載しました。
 一方イスラム教では、ムハンマドの姿を描くことは固く禁じられており、風刺画掲載はテロリストとは関係のないイスラム教徒の心を踏みにじり、尊厳を傷つけることとなりました。
 欧州では今、イスラム教の人々への嫌がらせや排斥運動が激化し、社会が大きく分断されつつあります。
 相手の立場に立って物事を考え、人の痛みを感じること。
 平和で豊かな世界をつくって行く上で、それは何より大切なことです。

 次に、してはならない事。
 「憎しみや恐怖に心を支配されない」ということです。
 憎しみや恐怖は、不信と暴力的衝動を掻き立て、やがて人々を戦争へと駆り立てます。
 憎悪と報復の連鎖は、絶対に断ち切らねばなりません。

 皆さん方一人ひとりの夢や志は、平和な社会と美しい地球環境が保たれてこそ実現します。
 あなたの一歩、あなたの一言、誰かの一歩、誰かの一言が積み重なりあって、明日の世界がつくられて行く。どうかそのことを忘れないで、大人になってください。