作新学院中等部生による被災地研修。

2日目の気仙沼では、気仙沼では、流されてしまった防風松林に代わる“海辺の森”をつくる活動をしてらっしゃるNPOの皆様方のご協力のもと、沢山の苗木を植えさせていただきました。防風林がなくなってしまった海岸線の風は強く厳しいものでしたが、この風や波からいつか人々を守れる「作新の森」を今後長い年月をかけて作って行けるよう、用地のご提供も地元の方のご厚意でいただきました。


               畑恵オフィシャルブログ
 

 現在、作新では約5,000名の子どもたちが“一人一本”の苗木を植林のため育てていますが、気仙沼に植えるにはやはりその土地に育った植物でないとうまく育たないとのことですので、今後は気仙沼育ちの樹木の種を事前にもらい学院で苗木まで育て、将来はその苗木を気仙沼の「作新の森」に植えられればと思っています。
 

 中等部の一歩は今はまだささやかかもしれませんが、生徒たちが植えた花や樹木とともに生徒たち自身の心の中でも成長し、やがて「復興」という大樹となってこの国を支えることと確信しています。

 

 以前から私は、真のエリート教育がこの国から消えたことが、今の日本の凋落の元凶であると考えてきました。将来、社会のリーダーとなって活躍することが期待される子どもたちには、常に社会のことに思いをいたし、自らを投げ打ってでも社会のために尽くすことの大切さを教えなければならないはずです。奉仕の精神と強い責任を自覚して思索・行動できる強靭かつ血の通った心と頭脳と身体を培うことこそが、「人間力」の育成だと私は思います。にもかかわらず、偏差値などというたった一つの物差しを偏重するあまり、心や身体はもちろん本当の知性を育み鍛える機会が十分に与えられない現代日本の教育実態に大きな疑問を抱いてきました。        

 

 作新学院中等部は、国立大附属中と県内トップを二分する中学校です。ですから、生徒全員が被災地を訪れなければならないと常々考えてきました。

中学生という最も感受性豊かで思慮分別が形成されるこの時期に、千年に一度という大震災の爪痕とそこで生きる人々の暮らしを、生徒一人ひとりが自分自身の目で見、耳で聞き、肌で感じることが、なによりも尊い生きた教育の機会であると思いました。

ただ、確かに大事な子どもたちを実際に被災地に連れて行くことに躊躇いがあったのも事実です。なぜなら、私自身も被災地を訪問させていただく度に当時の記憶がよみがえり、ブラックホールに引き込まれるような思いに苛まれ体調を崩していたからです。おそらく、多くの保護者の皆さん方もそのことを何より心配されたことと思います。

ところが今回、生徒たちと訪れた被災地はまったく違っていました。確かな「希望」という特別なオーラを子どもたちは纏っていることを、これほど身をもって体感したことは初めてでした。きっと地元の皆さん方は、中等部の生徒たちが放った希望の光を、私などよりもっともっと強く感じて下さったことと思います。