私の失敗②
私は独身のとき 都内にある
会員制クラブで働いていました。
ビルの37階にある そのクラブの会員は
大企業の社長さんや政治家や
など大金持ちばかりでした。
私は そこのBarで働いていました。
その当時 総理大臣だった森善郎総理も
このクラブの会員でした。
こうゆう総理みたいな大物がくると
私みたいなペイペイが接客を
することはなくマネージャークラスの上の人
が応対していたのです。
でも その日はあいにくBarマネージャーは病欠。
なのに5分後に
クラブに総理がつくと電話がはいったのです。
そして急遽 私が総理の接客担当に!
支配人は 私の事が心配でたまりません。
「 ○○○く~ん たのむよ~ ミスしないでくれよ~」
またしても 有頂天になった私は 妙な自信バリバリで
「支配人 まかせてください。 大丈夫です。」
なんて答えてました。
総理はBarのとなりにある書斎がお気に入りでした。
洋書に囲まれたその部屋の真ん中には
大きなソファがおかれ
ゆったり寛げる空間でした。
その日も 総理はソファに座り
新聞を読んでいました。
私の役目は書斎の影で 黒子のように立ち
総理が電話をかけたければ かわりにダイヤルを
まわし のどが渇けば 飲み物を用意し
おなかがすけば 食べ物をお持ちする事でした。
「総理だって ひとりの人間。どうってことないじゃない」
書斎の影で 総理の後姿を眺めながら 考えてました。
「どうって・・・ ことないよね・・・」
どうしたことでしょう。私の心臓が
早鐘のように打ち始めました。
「どっ どうしよう。緊張してきた。やばいっ」
「私は 黒子。影の人。どうか総理
話しかけないで~」
なのに 私の気持ちを無視して
総理が声をかけました。
「ちょっと君 のどが渇いたから
焼酎もってきて」
「・・・・はっ?」
「焼酎だよ ショ・ウ・チュウ!!」
「はっ・・・はい。
しょうちゅうしました!」
私ったら 私ったら 「承知しました」 と言えず
「しょうちゅうしました」なんて オヤジギャグ!
黒子と総理だけが知っている密室でのお話でした。