The Green Mile
グリーンマイル
1999年公開
フランク・ダラボン(Frank Darabont)監督
 
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コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
すでに当ブログに既出の「スティング」、「俺たちに明日はないと同じ戦前の世界恐慌が時代背景になっている。
 
タイトルの「グリーンマイル」とは、死刑囚の収監されている監房から死刑の執行室までの通路を、床が緑色に塗られていたことから称されたようだ。原作はスティーヴン・キングで、平成8年(1996年)に発表された。
 
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映画はノース・カロライナのコールド・マウンテン刑務所が舞台になっている。この死刑囚監房(Eブロック)で看守主任を務めるポール・エッジコムが主役で、監房内で起こる不思議な出来事を描いている。
 
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Eブロックの看守主任のポール・エッジコム(Tom Hanks)
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー主演男優賞を受賞したトム・ハンクス(Tom Hanks)がポールの役を演じている。
 
昭和7年(1932年)この死刑囚監房に、双子の少女を殺害した罪で、巨漢のジョン・コーフィが移送されてくる。コーフィは風貌に似合わず、暗闇を恐れていた。
 
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ポールの股間を握る死刑囚のジョン・コーフィ(Michael Clarke Duncan)
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
巨漢のジョン・コーフィはマイケル・クラーク・ダンカン(Michael Clarke Duncan)。
 
ポールは長年尿路感染症を患っていたて、苦しそうなポールを見かねて、彼を呼んだ。警戒しならコーフィに近づくと、突然、鉄格子越しに局部を握ってから「治した」という。ポールがトイレに入ってみると、不思議なことに症状が消えていた。
 
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帰宅したポールは、妻のジャン・エッジコムに長年のご無沙汰がウソのように、朝まで何回も求め続けた。
 
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ポールと妻のジャン・エッジコム(Bonnie Hunt)とポール
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
ジャン・エッジコム役はコメディアンのボニー・ハント(Bonnie Hunt)だが、個性的な魅力に溢れている。
 
ジャンはコーフィの奇跡を知って、お礼にコーンブレッドを焼いてポールに届けさせる。
 
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ポールの部下には、副主任のブルータス・ハウエル(ブルータル=乱暴者)、年長で冷静沈着なハリー・ターウィルガー、若手のディーン・スタントンがいる。
 
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左からハリー(Jeffrey DeMunn)、ブルータル(David Morse)、ディーン(Barry Pepper)
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
大柄で腕っぷしの強いブルータルはデヴィッド・モース(David Morse)、年長者のハリーはジェフリー・デマン(Jeffrey DeMunn)、若手のディーンはバリー・ペッパー(Barry Pepper)。
 
ポールが次第にコーフィの優しさに触れて、距離が近づきすぎることを、部下たちは警戒しはじめていた。
 
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更に州知事との縁戚(知事の妻の姪)を良いことに勝手気ままに振る舞うパーシー・ウェットモアという厄介者が部下にいた。パーシーはダグ・ハッチソン(Doug Hutchison)が、アメリカ人にありがちな独善性を演じている。
 
死刑囚が残された日々を心穏やかに送ることを看守たちは心がけていた。そんな気づかいの中で、死刑囚エデュアール・ドラクロア(デル)が可愛がっていたネズミ「ミスタージングル」を、パーシーが目の前で「汚い」と踏みつぶしてしまう。
 
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死刑囚エデュアール・ドラクロア(デル)(Michael Jeter)とネズミのミスタージングル
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
フランス人のエデュアール・ドラクロア(デル)はマイケル・ジェッター(Michael Jeter)。アメリカ人が見たフランス人が出ていて興味深い。
 
なげき悲しむデルを見て、コーフィは今なら「まだ間に合う、元に戻せる」と、つぶれたネズミの死骸を両手で受取る。
 
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コーフィの不思議な力に驚く看守たち
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
看守たちが見ている前で、コーフィは死んだネズミを手で包み、口を近づけると、やがて生気を取り戻した。このことで看守たちもコーフィの不思議な力を知ることになる。
 
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その頃、札付きの乱暴者のウィリアム・ウォートン(ワイルド・ビル)が精神病院から移送されて囚人に加わる。ワイルド・ビルはサム・ロックウェル(Sam Rockwell)。
 
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暴れるウィリアム・ウォートン=ワイルド・ビル(Sam Rockwell)を制止する看守たち
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
早速ウォートンは、看守のスキをついて連行していたディーンの首を手錠で絞めて暴れるが、スキを突いたブルータルの一撃で制圧される。
 
ビリーザキッドを気取り、傍若無人なウィリアム・ウォートンは、度々看守たちに反抗を繰返す。看守たちはウォートンの嫌がる保安官ワイルド・ビル・ヒコックにちなんで「ワイルド・ビル」と呼んだ。
 
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デルに死刑の日が訪れた。生き返ったネズミのミスタージングルをコーフィに託し、心安らかな気持でグリーンマイルを進む。
 
パーシーは、転属願いを出す約束で、強引にデルの執行主任になる。電気の通りを良くして短時間で死亡するように、頭に濡れたスポンジをのせるが、 パーシーはスポンジを濡らさずにデルの頭にのせる。
 
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もがき苦しむデルの姿から目をそらすパーシー(Doug Hutchison)
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
デルは電気椅子で中々死ねずにもがき苦しむ。被害者家族や立会人たちも、あまりの凄惨さと皮膚の焼ける悪臭に、死刑執行室が騒然となる。デルの苦痛がコーフィとミスタージングルにも伝わってしまう。
 
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コールド・マウンテン刑務所の所長ハル・ムーアズは、妻であるメリンダの異常な行動に悩まされていた。ハル所長の友人であるポール夫妻も心配していたが、メリンダの脳腫瘍は容赦なく命を蝕んでいた。
 
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ハルの妻メリンダ(Patricia Clarkson)を気づかうポールの妻ジャン(Bonnie Hunt)
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
ハル所長はジェームズ・クロムウェル(James Cromwell)、その妻メリンダはパトリシア・クラークソン(Patricia Clarkson)。
 
ポールとジャンは、コーフィの奇跡を使えないものかと考えるが、死刑囚を外に出すことなど看守として侵してはならない犯罪である。ポールはブルータル、ハリー、ディーンを呼んで相談するが、コーフィが豹変して暴れでもしたら全員クビを覚悟しなければならないと思う。
 
そもそも法の厳格な番人であるハル所長の自宅に連れて行くことなどもってのほかだ。たとえ説得してもコーフィの神業を知らないハル所長には到底理解できないだろう。しかし一方で所長の妻メリンダの死が近づいていることも放置できない。
 
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思い余って4人は決行する決意を固めた。まず厄介者のパーシーを拘禁室に押し込めてから、若手のディーンを残してコーフィを車で連れ出す。
 
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ポール、ブルータル、コーフィと運転するハリー
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
ハル・ムーアズ所長は、ポールをはじめ看守たちの奇行に驚いて銃を向ける。背後からメリンダの憎悪に満ちた言葉が飛んでくる。コーフィはライフルの銃口に立ちふさがり、メリンダを救いに来たことを告げる。
 
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半信半疑のハル所長が考える間もなく、コーフィは一直線に2階の寝室に上がり、メリンダの口から悪気を吸い取る。ポールのときも、ネズミを生き返らせたときも、コーフィは悪気を空中に吐き出したが、なぜかメリンダの悪気は吐き出せない。
 
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メリンダとコーフィの様子を見守るハル(James Cromwell)、ブルータル、ポール、ハリー
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
メリンダはすっかり正気を取り戻して、コーフィに近づき、聖クリフトファーのペンダント(メダイ)をコーフィの太い首に掛ける。
 
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監房に戻ったコーフィがワイルド・ビルに腕をつかまれた瞬間に、彼に着せられた少女殺害の真犯人が、ワイルド・ビルであることを察知する。
 
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パーシーに射殺されるワイルド・ビル
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
コーフィは、メリンダから吸い出した悪気を強引にパーシーの口に入れる。パーシーは豹変して、その場でワイルド・ビルを銃殺する。
 
ポールはコーフィと手を握りあって、ワイルド・ビルが真犯人であること、そしてコーフィは死んだ少女たちを生き返らそうと手を尽していたところを捕まったことを以心伝心で伝えられる。しかしコーフィの奇跡を知らない人には、到底理解できないだろう。
 
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冤罪に関する証拠がないため、コーフィの死刑は執行される。神の使いであったかもしれないコーフィを、処刑するポールと看守たちに、憎悪に満ちた人々に「おれは疲れた」と言って、死を持って人間社会との未練を断ち切るコーフィであった。ブルータルが「俺たちにできることはないか?」と聞くと、コーフィは「活動写真を見たことがないので見たい」答える。
 
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映写機の光に包まれるコーフィと「Heaven, I'm in heaven」の歌声
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
 
刑務所内の映画館に、映画「Top Hat」の中でフレッド・アステアが歌う「Cheek to Cheek」が流れる。コーフィは処刑の直前になって「Heaven, I'm in heaven」を口にする。
 
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老人ホームで思い出を語るポール
コロンビア映画配給「グリーンマイル」より
神の使いであったコーフィを死刑にしたという贖罪を抱き続けるポールは、コーフィからの「寿命」という贈り物をもらって元気だ。
 
ポールの前で、妻や息子、全ての友人が先に死んで行った。その死を看取る悲しみが、自分に対する「罰」だと信じている。
 
コーフィによって。同じく途方もない命を与えられたネズミの「ミスタージングル」は、108歳を迎えたポールと共に、ひっそりと生き続ける。
 
アメリカ映画には、キリスト教の宗教観が色濃く出ている作品もあるが、この「グリーンマイル」は、アメリカ人の一般的な倫理観であって、宗教色を気に留めるまでのことはないだろう。
 
最初に劇場の大スクリーンで観た時に、コーフィが悪気を吐き出す場面の迫力は見応えがあった。ただしオカルト物ではない。奇跡を扱った映画ではあるが、機をてらった訳ではなく、ストーリーの面白さから、何度見ても感動できるお勧めの映画の一本だろう。
 
ポリティカル・コレクトネスの蔓延する現在のハリウッドで、白人と黒人の自然な触れ合いを扱ったヒューマン・ドラマを、果たして作れるだろうか?
 
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