英語のイディオム(決まり文句)を学んでいくと、様々な文化的要素が背景となっていることに気付きます。それは日本語でも同じことです。

'stiff shoulder' のことを日本では「肩凝り」と言いますが、この日本語は文豪漱石が生み出したものだとも言われています。夏目漱石は肩がヒドく stiff であることに困っていたのでその現象自体に「肩凝り」という名付けを行ったのかもしれません。

同時に漱石が活躍した時代は「標準的日本語」というものが流布されていた時代でもあります。国定教科書が定められて日本のどこにいっても標準的な「日本語」が教えられていくようになる過渡期でもありました。そんな時代に漱石の「肩凝り」が人口に膾炙するようになったのは納得のいく説明だと言えるかもしれません。

英語のイディオムのなかにもこういった「文化的背景」や「時代的背景」が潜んでいます。今後のエントリーでは英語のイディオムを、こういった視点も含めつつ、共有していければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

まずは、"albatross around one's neck" からです。

このイディオムは「重荷 / 負担」といった意味で使われます。"That old car is an albatross around my neck." といえば、「あのポンコツ車(英語ではポンコツ車のことを"lemon"ともいいます)が邪魔臭くてさぁ」といった感じです。

このイディオムは、Samuel Taylor Coleridge(1722-1834)の"The Rime of the Ancient Mariner"というポエムが由来となっています。

Coleridgeは大麻に依存していたとも言われていますが(cf. "THE TOP 500 POEMS" p.430)、環境に恵まれたこともあって"romanticism"という文学の一大潮流の先駆者と言われるほどの名声があります。西洋思想のカノンといわれる「ファウスト」を書いたゲーテも同じくromanticismのなかに分類されています。その潮流の先駆者がColeridgeなんです。

では、"The Rime of the Ancient Mariner"のなかでalbatrossがどのように登場するかというと、「航海時の幸運の象徴」としてです。辞書をくると全く逆の意味が載っているので意外ですね。

難航している時にalbatrossが霧の向こうから飛来して、船員たちはこれを快く迎えました。すると船がまた進み始めたわけです。この時にalbatrossは'good omen'としてみなされました。

しかし1人がその鳥を殺してしまい、船がまた凪状態に陥ったときにその船員は責め立てられます。そして自分が犯した罪のために首の回りに殺したalbatrossを巻きつけられます。

"Ah! well-a-day! what evil looks
Had I from old and young!
Instead of the cross, the Albatross
About my neck was hung."

という記述がされています。

ここから「負担 / 重荷」といった使い方に "Albatross around one's neck" という表現が用いられるようになった、ということです。どちらかというと「自分がミスしたことで生じた負担」として使われることがおおいようです。日本語での「ツケ」に対するものかもしれません。