維新の政策で最低賃金について廃止か引下げが打ち出されているようだ。
維新の公式サイトの「政策実例」では、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」と
されていることが確認できる。

さて、よく最低賃金の引き下げをすることで雇用が拡大して、最低賃金以下の賃金でも
働く人数が増えるから、生活保護に頼るよりましだという説明がある。

経済学的にも正しいように思える。しかし、これは完全競争の労働市場の説明だ。

これが企業が一社しかない独占市場や独占的市場であれば実は逆に雇用は減ってしまうのだ。

日本の労働市場は、労働者の流動性が低く独占市場や独占的市場のモデルのほうが当てはまって
いる可能性がある。

このような労働市場の捉え方の実証的研究としては、1992年のアメリカのニュージャージーの
実験が有名だ。

1992年のニュージャージー州は、最低賃金を引き上げだ。ニュージャージー州の賃金は
最低賃金引き上げ後上昇したにもかかわらず、雇用は若干増加、同時期、最低賃金は引き
上げられなかったペンシルバニア州の隣接地域の雇用は逆に減少したという実験だ。

この実験は労働市場をどのようなモデルでとらえるかという点でその後の研究に大きく
影響を与えている。その後も日本でもアメリカでも様々な研究が行われているが、
はっきりしないことも多い。

一つ言えることは、いきなり「最低賃金の撤廃」などということはあり得ないということだ。
あくまでも、まずは最低賃金の引き下げぐらいから初めてそれがそのどのような
効果をもたらすかをよく見ていかなければならない。

また、このような施策では、過去からの慣性もよく考える必要がある。
すでに、企業で働いている労働者の労働条件を書き換えることを難しい。
すると、新規採用者やアルバイトに対してのみ適用されることになるだろう。

このような場合に日本では若年層にのみ影響がおよび、中年や熟年層には
影響がいかないだろう。このことが新しい世代間格差を呼ぶことになる可能性が
極めて高いと考える。