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(楽曲レビュー)
1.静かなる逆襲
管楽器の音が目立つファンク色とロック色強めのナンバー。負の感情全開の歌詞が聴く人の心をえぐるような内容。
2.自由へ道連れ
2012年リリースの配信限定シングル曲、ドラマ『ATARU』の主題歌でもお馴染み。ギターをかき鳴らす音がメインの、比較的ストレートなバンドロックナンバー。
3.走れゎナンバー
間奏の笛の音が曲の面でかなりアクセントになっていると思いました。この曲に限らず林檎嬢の歌詞は昔からかなり独特なものがありますがこれはその最たるものかもしれません。
4.赤道を越えたら
歴史の真実を語っているかのような歌い出しの歌詞が印象的ですね。インタビューによると”トロンボーンのために作られた曲”なんだとか。
5.JLOO5便で
全編英語詞。静かに語りかけるような雰囲気から少しずつあがっていく構成。
6.ちちんぷいぷい
途中の”リンゴ!”コールはライブだと必須になるでしょうか。ジャズの雰囲気に近いとは思いますがそうとは言い切れない、言葉として表すのは難しいですが独特のものがあるという印象。
7.今
ベース音をメインに構成された静かに聴かせる楽曲。中盤以降で増やされるバンド音とそこからの構成はクライマックス感バリバリ。前半最後を締めるには十二分のナンバーとも言えます。
8.いろはにほへと
昨年リリースのシングル表題曲。タイトル通りの「和」の雰囲気がよく出ている楽曲だと思います。
9.ありきたりな女
椎名林檎には母親という顔もありますが、それが歌詞に出ている象徴的な作品ではないかと感じました。時に難解さを感じさせる椎名林檎の歌詞ですが、その中ではかなりストレートな部分を感じさせる作品でもあるような気がします。
10.カーネーション
NHK連続テレビ小説『カーネーション』主題歌として3年前にリリースされた楽曲。お馴染みの楽曲ではありますが、前曲から続けて聴くと”命””母”という文字が連想されます。聴く人によってこの部分が今回のアルバム最大のハイライトになっているかもしれませんね。
11.孤独のあかつき(信猫版)
「いろはにほへと」と両A面シングル曲の英語詞版。編曲もアメリカナイズされているといいますか、シングル収録とは相当アレンジが変わっています。
12.NIPPON
NHKのサッカー中継テーマソングでお馴染みの曲なんですが、このアルバムを通して聴いた後だと右翼だとかなんだとかいうことよりも遥かに大きなことを説いている歌詞のように感じました。あらためて聴くと恐ろしく壮大な楽曲です。演奏が全てを物語っています。
13.ありあまる富
ラストは2009年のシングル曲。アコースティックギターの音が目立つ楽曲からあらためて感じるのは”静かなる重さ”でしょうか。”価値は生命に従って付いている”の歌詞が無情なほどに響きます。
(総評)
5年ぶりのアルバムで、前半は新曲・後半はシングル曲メインの構成でした。通して聴いて一番印象に残ったのは歌詞・メロディーもそうですが何よりも曲間の繋ぎですね。特に前半は新曲メインということもあって、曲目を見ないと曲が変わったのが分からないほどの一体感がありました。構成上1曲レビューという形を取りましたが1曲ずつ、ましてやランダム再生だとこのアルバムの本質はまず掴めないと思います。特にラスト2曲は単体でもむろん名曲なんですが、11曲再生して聴くからこそ余計に響くものがあったような気がしました。演奏も含めて、更にはCDジャケットなどからも作り込みの深さを感じさせる、まさにアルバムらしいアルバムという言葉がしっくりくる内容です。サラッと聴くには実に不向きの作品で、初聴ではピンと来にくいナンバーも多くありますがそれもまたアルバムならではの楽しみと言えます。
『無罪モラトリアム』『勝訴ストリップ』の頃を考えると今作はより成熟したアルバムという評も出来る作品だと思います。あるいは本編でも述べたように母性・命の尊さ、人間の生業なども感じさせるような、36歳女性ならではの世界も味わうことが出来ます。シンガーソングライターはそのまま人間の成長記録として作品に表すことができるような気もしますがそういう意味ではこのアルバムは最たるものなのかもしれません。いずれにしても次の5年がまた楽しみになる作品であることは間違いないでしょう。何度も繰り返し聴く価値がある名作、皆さんも手にとってみてはいかがでしょうか。