私の働くCity Clinicにおいて、2019年12月にTraditional Chinese Medicine診療を開始した中医師たちが、2021年7月末で中国、上海に帰国されました。

本来、1年契約なので2020年末には帰国し、新たなメンバーが交代でくるところでしたが、国境閉鎖や航空機運航の都合で、帰国がのびのびになっていたようです。

関係者によれば、二人の中医師と一人の薬剤師は、モーリシャスでの生活・仕事に相当ストレスを感じていたようで、実際、最後の1ヶ月は、以前は仲の良かったディレクターと口喧嘩していました。よほどイライラしていたんでしょうね。

 

客観的にいえることは、ディレクター、中医師達の双方に不満が蓄積していて、その主な原因は「想定していたより繁盛していない」ことです。

 

クリニックとしては三顧の礼で中医師達を迎え入れ、施設を新設し、器材や薬剤に大金を投資し、テレビや新聞・雑誌で宣伝したにもかかわらず、患者数が伸びないどころか、ほとんどいない。

 

一方で、中医師達は、クリニックがもっと大々的に、戦略的にマーケティングを行なってくれるものと思っていたでしょうし、一般医師達がもっと多くの患者を紹介してくれるものだと期待していたのだろうと思います。

 

最も大きな誤算はやはりCOVID19のパンデミックです。彼らの診療開始から3か月後に、1度目のロックダウンが3ヶ月間、その後、約1年後に2度目のロックダウンが1か月程度ありました。

 

一度目のロックダウン終了後、私の治療室が「クリニックの離れ」から「TCM新病棟」に移動し、中医師達と並んで仕事をするようになると、「集患数の明確な差」が浮き彫りになってしまったのです。

 

当初は、中医師達と雑談をすることもありましたが(患者さんがいないとき)、そのうちに私が終日予約でいっぱいになってくると、勤務体系の違いもありますが、私の方が早く来て、遅く帰る(残業で)ことが普通になってきました。

 

私の部屋はTCMフロアーの一番奥。病院の中で1階の受付から最も遠いところにあり、TCMの前を通過しなければたどり着けない極東に位置する日本のようです。

ディレクター達としては、私の患者をTCM(中医師達)にシフトさせてしまおうと考えての治療室移動だったのでしょうが、私のところに来た患者さんが「いつ来ても中医師達は患者さんがいないねー」という状態に。

 

2回目のロックダウン後は、ワクチン2回接種で2週間経過した人だけしか対応しないぐらいの勢いでしたから、ほぼ診療する気がなかったのでしょう。

 

TCMがうまく集患できなかった理由は、以前の記事で扱っていますので今回は詳しく触れませんが、マーケティング不足だったのは確実です。

 

ここモーリシャスでは、鍼灸治療は昔から実践されており、国民に認知されています。大半は中国人移民、中国人、中国やインドで学んできたモーリシャス人、フランス人によるものです。

鍼灸治療の総本山といえば「中国」ですし、中国でも有数の大学である上海中医薬大学病院から教授たちが来て診療するわけですし、湯液治療、推拿治療を加えて病院内で提供すれば、「売れないはずない」と思うのも無理はないかも。

 

「隣に私(日本人)がいなければ…」

同じ色の背景の中に、大きさは小さくても、コントラストがはっきりとした物が存在すると、目立つんですよね。

 

いまさらながらに、日本人であること、現代医療的あはきを実践してきてよかったなと、しみじみ思います。

 

「鶏口牛後」

私の生き様です