現在、アトピー性皮膚炎や関節リウマチなどの疾患に対して、薬物治療を中心に目覚ましい進歩があり、医療効率を考えると鍼灸治療を行なう有用性は比較的少ないと思います。

まだ薬物療法では対応しきれていない一部の症状に対して、対症療法的に用いたり、当該疾患によって蓄積される(身体的・精神的)ストレスを軽減するために鍼治療が試みられることはあります。また、症状を増悪させる要因(血流障害や筋硬結など)を改善させることで、標準治療の補助的な作用を期待して行われることは、主治医との連携の下では許されることだと思います。

 

一方で医療リソースの不足や標準治療のレベルが低い地域や国においては、私の住むモーリシャスでも、補助的な作用を期待して鍼治療を行なうケースがよくあります。また、宗教的思想や信条から現代医学的治療を受けることを避ける人もいて、鍼灸治療をメインで希望する患者さんも時にいらっしゃいます。

 

今回は、皮膚・皮下結合組織に病態が存在する場合に対応する皮下パルスの方法を紹介します。

 

皮下パルス

 

方法

  • 皮膚症状に対する局所治療としての皮下パルスは、皮膚症状部位の皮下に鍼を横刺(水平刺/地平刺)します。
  • 刺入のコツは、皮膚を押し手で少し膨隆させ、その皮下に鍼を刺入します。
  • さらに他の皮膚症状の部位に同じく皮下に刺入し、クリップを鍼に装着し、周波数、波形などをセットし、タイマーで時間を設定します。
  • 通電時に皮下の筋肉が強縮する場合には、鍼を刺しかえましょう。刺激感があること、かつ、痛みがないことを患者に確認します。開始後5分間は刺激部位における刺激感の有無・強弱を確認し、常に刺激感があるように調節する必要があります。その後も数分毎に確認するようにしましょう。

周波数の選択基準

  • 消炎、血管透過性低下および皮膚交感神経活動亢進を目的とする場合は30Hz
  • 血管拡張と皮膚交感神経活動抑制を目的とする場合は1Hz

治療目標:アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、関節リウマチなど
期待する効果:消炎、血管透過性低下および皮膚交感神経活動亢進、炎症反応を抑制し、組織の回復を助長する。