以前の記事で、なぜ海外で働きたいと思ったのかについて簡単に触れました。

しかし、それ以前に、なぜ“あはき業”を仕事にしようと思ったかについては触れませんでした。理由は、話が長くなるから笑。
ここで端的に言えば、人の身体の痛みや、コリを和らげる仕事は、いろんな知識や経験が必要で、誰しもが上手くできなくて、患者さんから必要とされ、感謝されるから。

子供のころから関わってきた”あはき師”の姿や、彼らの施術によって体験したことから、そのようなイメージを学生の時から持っていました。卒後に会社で働きだしても、よくお世話になっていました。当時は「難しい仕事で、大変で、人があまりやりたがらない仕事」と考えていましたから、私の性格・趣味嗜好に合っていました。

ところが、2000年を過ぎるころ、鍼灸師・柔整師養成学校の開設自由化により、状況は変わりました。
“あはき師”の希少価値がなくなったのです笑。

時代は既に景気後退の時期で、野村證券なんかが”今や日本に住んでいること自体がリスク”だと言って、グローバル人材になる必要性を訴えていました。

近いうちに鍼灸師が柔整師に雇われる時代が普通になり、あはき柔整サービス業の過当競争が激しくなり、あはき師が従来の働き方では食べていけなくなるんだろうと予測していました。実は、筑波の教員養成課程で卒論のテーマにしようかと思ったくらい確信していました。

今や、鍼灸師は治療院、病院のみならず、スポーツ現場、介護、美容などに働き場所を拡げています。
でも、働く場所はあるけどぉ…給料は……。と、教員時代に、よく学生さんや卒業生から不安や不平不満を聞いたことがありました。
当時、キャリア支援を担当していましたから頭が痛い問題でしたね。高校生などに学校説明をする際にも、きれいごとしか言えなくて。社会人経験者にはきつめに状況を説明して、学校入学をあきらめさせたこともありました。

以前、鍼灸専門学校で同僚の先生から、「鍼灸師の仕事は女性にむいている仕事ですよ」と言われました。その真意は、お父さんが鍼灸師として働いて、主婦の奥さんと子供たちを育てるだけの稼ぎは困難だということ。(ジェンダー差別で批判されそうですが、昔の会話ですのでご容赦を。)

今や、豪華客船の鍼灸師として活躍する場所ができましたし、ワーキングホリデービザを利用して、有期ですが海外で施術経験が積めるようになりました。豪華客船はかなり稼げると聞きますし、ワーホリも若者には良いきっかけになるはずです。先進国で長期にわたって仕事としてやるとなると、その国の資格を取る必要ができてきますので、多大な費用と労力がかかります。(ほんとに若い人向けです!)

一方で、免許取得後、鍼灸接骨院で20年働いてきた40代の鍼灸師は、次に何を目指せばいいのでしょうか?雇われ院長に抜擢されれば御の字です。独立開業?できればしたいですよねって次元の話。

そもそも、お金を稼ぐこと以外の動機があったのなら、原点に戻りましょう。あなたが提供できるサービスに高い価値を感じてくれる場所に行くべきです。あなたを必要としてくれますし、サービスの対価として十分なお金を払ってくれるでしょう! アラスカの人に冷蔵庫を売りに行ったセールスマンの発想の転換(食べモノを凍らせないための冷蔵庫)も時には必要なのではないでしょうか。

また、海外で仕事をしようと思うとき、必ず心配なのは語学です。いつも議論になるのが、語学習得が先か、働くためのスキル・能力取得が先かというテーマ。働きたい場所の状況に依存するので答えは一つに決められないんだと思います。あはき業なら、日本で修業した方がいいし、語学は、ある程度、外国でやるのが良いんでしょうね。

”あはき師”という仕事。まだ食べるところが残っている高級魚のような感じでしょうか笑。