この問題には、国家人権委員会など複数の機関が関与しているが、外国出稼ぎ労働局の役人が言うには、ワンストップで対応する役所が必要。
問題解決を難しくしている要因としては、労働者がほんとうのことを言わないこと、そして、次々と新しい手口が出てくることを挙げている。
このままだと、労働者はお金を騙し取られるし、国家歳入にも損失となっており、どちらにとってもいいことはない。
なので、南アジアの他国の事例から学ぶことが必要、と言う。
一方、派遣会社組合に言わせると、事情が異なる。
そもそも政府の「ビザと航空券無料」出稼ぎ政策自体が、非現実。
労働者ひとりを送り込むにはそれなりの費用がかかる。
インドから湾岸諸国に出稼ぎに行くのに、ネパールの通貨でおよそ4万8000はかかる。
ネパールから韓国に働きに行く人びとも自腹だ。
自分たちは南アジアの相場を見て手数料を決めている。
むちゃくちゃな手数料をとる業者がいるのも、そもそも手数料の基準がないからだ。
自分たちとしては、損をしてまで政府の政策に乗れない、と。
BBCは調査に1年かけた。問題は他にも山積みだ。
55%が、給料と待遇が約束と違った。
36%が、契約内容と違う仕事をさせられた。
56%以上が、無報酬で残業をさせられた。
90%以上が、通常の登録をしていないブローカーを介していた。
政府統計によると、外国へ出稼ぎに行ってるネパール人は460万人。
このうち95%以上は、湾岸6ヶ国とマレーシアだ。
女性の場合、インド経由で湾岸諸国や、イラクにまで送られている。
ネパール政府は、女性の湾岸諸国への出稼ぎを禁止した。
しかし、これは解決に繋がらなかった。
というのも、政府が女性の湾岸諸国への渡航を禁止したため、湾岸諸国で働くネパール女性が仕事場に戻れないことを恐れて、帰国もままならないからだ。
報告書によると、過去6年間に救済の申立ては1万6000件あったが、解決したのは3分の1以下。
加害者が罰せられなかったり、深刻な被害を受けた場合でも軽い罪で処理されたりしている。
統計では、外国出稼ぎ労働者からの送金は、家族の総所得3分の1を占める。
そして、政府は、出稼ぎ労働者の権利保護と救済に莫大な予算を費やしている。