最近の両前肢蹄底。

みぎ

 

ひだり

 

 辺縁を切りたくなりますけど、切らない方がいいという判断。蹄縁はかなり分厚くなった&硬くて、ニッパーでないと歯が立たなくなっている。とにかく固いし、蹄底が広がって、蹄底全面で体重を支えるように変化している。こうなると、体重の負面が広いから、関節のトラブルなんかも起きにくくなるでしょうね。

 

 ここまできて、去年の破行がウソみたいに消えてしまった。こちらはもっと早く水虫の治療を始めるべきだった~、と後悔しているが、馬の方はそんな事ころっと忘れている。歩いたり走ったりが痛くない、楽しい!!!ってなってるらしい。

 

 じゃあってことで、本当に久しぶりの障害飛越、の真似事。めっちゃ低い障害ではあるけど、大丈夫か?

 

 簡単にやってくれます。各種歩様の伸び縮みも簡単。ハミなし頭絡の実力がようやく発揮されつつある、今日この頃。動画を撮らないとね。

 

 

 「国宝」。2回観てます。映画を観るのが大好きなワタクシ、100年に1作と思うような凄い作品をオンタイムで観るっていう幸運に恵まれて本当に良かった。って、まだ上映中だし、また観に行こうか。

 

 この映画、米アカデミーでメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされています(個人的には作品賞ノミネートだっておかしくない!と思うんだけどなー)。そりゃそうだろう、と思っている場面について。

 

 横浜流星君演ずる花井半弥さんが、重度の糖尿病のせいで断脚しなくちゃならなくなった、足を喪う前に「曾根崎心中」を演りたい、と言う。舞台シーンで、素足を見せるところ。彼の足の爪が爪水虫で完全に変性している、のを観て、あ、これじゃ、壊疽起こすのも当然、と感じたわけです。そういう風に爪をメイクアップしていたという事だけれど。分かる人にしか分からない、滅茶苦茶細かい所ですけど、理解できる人が見るとああ、と説得力が増す。

 そう、昭和の頃は、水虫の元凶である白癬菌を治療する治療薬は存在しなかった。「水虫治せたらノーベル賞」とまで言われてたんだもの。

 そのせいで、花井半弥という、これも稀代の役者になる筈だった人物が喪われた。訳だ。水虫の怖さ。白癬菌が食い荒らした場所から細菌の2次感染が起きて、高血糖のせいで爆発的に増殖する。見えるような外傷がなくても、水虫のせいで細菌感染→壊疽→断脚に至る。抗生剤なんか歯が立たない。これは現在でも、糖尿病の恐ろしい重症化メカニズムの一つ。

 

 水虫を散々研究していると、そういう細かいシーンが目に焼き付いちゃうんです。

 

 馬に副腎皮質ホルモン剤を投与すると蹄葉炎が発症する、とされている理由も、水虫の潜在感染に由来する、のはほぼ間違いないと思っている。副腎皮質ホルモン剤=ステロイドと呼ばれている薬剤だけども、強力な消炎効果があります。けど、免疫反応も抑制します。で、自分の免疫でギリギリ白癬菌&細菌感染をブロックしていた蹄内部が、ステロイドのせいで防御が落ちる、で蹄葉炎、という事ですね。特にサラブレッドは、変な濃厚飼料を食わされてるから、おそらく高血糖スパイクが起きている。蹄葉炎はなって当然と思える。

 分かってみれば、すっきりするメカニズムなんだけど、理由が分からんなんて馬のセンセー方は言う。考えが足りてないですよ。

 

 

 

 

 爪水虫再発後の治療を開始してはや1年と5か月・・・・・・・。

 

 治療は着々と進行しております。しかし、道半ば。

 

 その証拠映像がこちら。

 

ひだり後肢

 

 最近、前肢は両側ともかなり良好に近くなってきている。跛行も消失した。去年5月~10月あたりは大変だったんですが。今は両後肢がおかしい。跛行等、歩様に影響ない状況なのは、蹄叉がうんと発達して蹄底のもろさを補ってくれているから。こういう場合、蹄叉を安易に削ってはいけない。

 ひだり後肢の赤丸部分は、白癬菌が食い荒らした箇所に細菌の2次感染が起き、黒色に変化変性している。こういう箇所はもろく、臭う。内部へ入り込むのは阻止されているのだが、それは抗真菌薬の内服によって、白癬菌がブロックされているから。そうでなければ、とっくに蹄葉炎です。

 蹄=爪なのだが、爪自体は死んでいる組織なので、こういう感染箇所は、結局削り取るしかないんですが・・・・・。それが蹄の強度に直結するから安易にできない。しょうがないので、消毒するのだが。消毒薬は速攻消えてしまうし、爪に浸透もできない。持続しないという事。継続的に細菌感染を阻止する方法を発見しないと、この症状は繰り返される。

 

 それについては、見つけましたので、ご相談ください。

 

 さて、今度はみぎ後肢。ちなみに、みぎひだりを左右って書かないのは、読み間違いを防ぐため。医療って、そういう所が怖いんです。時々間違えた方向を切っちゃったりしてるでしょ、手術で。こういうちょっとした書き間違いから起こるんです、ミスって。

みぎ後肢

 

 こっちは蹄叉に白癬菌が蹄叉のケラチンを食い荒らして蹄叉がボロボロになりかかっている(上の赤丸)。粉みたいにバラバラ、正常ならあり得ない。

 これは、抗真菌剤のおかげで白癬菌が居座れる箇所がどんどん減って、やむなく、生存可能な場所をとことん食い散らかした結果。もう、端に端に追いやられてます。けど、その端というのが蹄縁だったり、白線だったり、蹄叉の末端だったりする(下側の赤丸)から困る。やはり、蹄の強度に直結するので。

 こういう場所は、既に強度になんの影響ももたらさないばかりか、害悪でしかない、から、どんどん削りたくなるんですが・・・・。蹄叉はともかく、蹄縁部分の赤丸部分は、削るとなくなっちゃいそうで怖い。こういう場合は、エポキシ接着剤で固めておく方法が使える。

 ちなみに青丸部分は、正常になりかかっている部位。再汚染されないようにしなければならない。

 

 こうなると、どう考えても2年はかかりますね・・・・・・。全部きっちり治るのに。

 

 

 

 

 

 

この図版ですが、なにがおかしいって、普通はこういう風に「蹄底の構造」が丸見えってあり得ない事だから。

これは野生鹿の蹄底(偶蹄類か奇蹄類かってだけで、蹄の構造自体は変わらない)。重要なのは蹄縁で、特に注目すべきなのは、白線が見えない事。

 

 で、最近かなり治療が進行して蹄病治癒まであともう少し、になっている自馬の蹄底。

青丸の部分は、蹄底を構成している部分が蹄縁に達していて、白線等が消えている。これが正常だと思われる。赤丸部分は、未だ蹄病に罹患していて、白線部分が白癬菌に食われている箇所。こうなると、蹄底の構成部分が蹄縁に達することができないままになってしまう。

 

 要はね、最初の図版って、「削蹄した蹄」を現しているんです。わざわざ、蹄を削って、病気になりやすくしちゃってるんだ。

 

 白線部は、蹄構造の中で一番弱い箇所。それをむき出しにした状態である筈がないのに。病原菌は、弱い部分から感染する。だから、蟻道が起きる。

 

 あと、更に分かってきたことなんだけど。削蹄しないでいると、蹄底は段々分厚くなり、強くなってきます。育つ方向はこんな感じ。

 蹄底は、こんな感じで蹄叉から蹄縁に向かって伸びてゆく。

 この蹄は、やたら蹄叉が大きいが、これは蹄底が脆弱になってたのを代償するためなので、これを削る必要性もないし、削ったら却ってまずいことになる。削蹄師なら、即削るでしょうね。「理想の形態」じゃないから。けど、問題は「形が理想かどうか」じゃなくて、「形がおかしい→その理由を探って、理由を潰すこと」ですから。

 

 でね、削蹄だの装蹄するときに、やたら蹄底を削りたがる人多いけど、なぜですか?体重不可に耐えられなくなるようにしてるだけじゃないですか?意味のない仕事をするな、と言いたいのよ。

 

 削蹄は害悪、特にヤスリは害悪でしかないと断定できるんだけども、その理由。

  • 削ったって、蹄変形の原因は駆逐されない。
  • 削ることにより、蹄の強度が減る。それが蹄の変形を引き起こす。悪循環。
  • 削る時に、蹄に細かい傷がつきまくる。その部分に病原菌がめり込むことで、蹄疾患が発症する。
  • 特に、ヤスリは、病原体をわざわざ蹄に刷り込んでいる。
  • 蹄底部を削ってしまうことで、蹄底の張力が減少し、その結果、蹄がしぼんでしまって、体重付加とのバランスが悪くなる。装蹄でごまかしたって、結局長期的には腱等にトラブルが起こる結果になる。脚なんか冷やしたって全然意味ありません。
 これはね、結局「削蹄道具を全然消毒していない」という、衛生管理の不備が大きい。蟻道が起こるのは、100%ヤスリ掛けのせいといえる。
 
 装蹄師も、削蹄師も、獣医も、野生馬の蹄を調べてないでしょ。調べたって「野生だから」で思考停止してるじゃん。バッカじゃないか!!!

 ホースメッセには、同業者が丸々1棟分の厩舎を使って獣医療展示をしてました。行かなかったけど。行ったら最後、大喧嘩になりそうでさ・・・・・・・。

 

 自馬の跛行で、散々悩んでした頃も、馬獣医には相談なんかしなかった。だって、あの人たち、「跛行診断」ったって、どの肢がおかしい、ってそんなの見慣れりゃシロートだって分かるわい、ってな事しか言わない。で、その原因は?治療法は?なんにも提案できない。要するに「ヤブ」だろーが!!と、心底ムカついて相談をやめちゃったわけですよ。

 

 自分は一応小動物臨床医で、この業界は常に戦国時代であります。どこの大学出たかどーかだの、関係ありません。治せばまあ、喜ばれますけど、死んじゃったら「ヤブ」認定。という厳しい評価の中で生きてる。

 で、ある時初対面の馬獣医にいきなり聞かれたのが「どこ?」。どこに住んでんの?の意味かと思って答えたら、違った。出身大学の事だった~~~。それ聞いてどうするんですかあ?

 

 だから「農工大です」と答えてやったんだけども。今や、東大をも凌ぐかも、とか言われてるそうで。そうなの?自分みたいなアホでも入れたのになあ。。。。。。

 

 まあ、それほどに無礼な奴が馬獣医やってんのか、こんなのに相談するくらいなら、自分でやるわい、とやって、本当に色々分かってきた。

 

 分かってきたのは、従来言われてる「蹄」の構造図が、ウソだ、ということ。

よく見るこれ。左側の蹄底の図なのだが、これが大間違いなのだ。くっそ~~、教科書にも書いてあったから、コロッと騙されてましたよ~~。許せん!!