卤(lǔ):
この文字を見て中国料理をイメージできた方は、中国の食文化に慣れ親しんだ方と思われます。
「卤」は中国でお食事をする際、菜单(メーニュー)の中に登場する文字です。
なんとなく得体の知れない文字であるため、中国で生活をしていた初期の頃には、特に調査もせずこの文字がつく料理を避けていました。
その後経験的に、「卤肉饭」,「卤面」などが、それぞれ<豚肉をしょう油で煮詰めご飯にかけたもの>、<あんかけ麺>であることを知ることになりますが、本日、あらためて辞書を引いてみたところ「卤」には以下の意味があることがわかりました。
ウィキペディアより引用:「卤肉饭」
1) にがり⇒盐卤
2) ハロゲン化元素⇒卤素/卤族
3) <料理>塩水に調味料を加えて煮たり、しょう油で煮しめたもの
⇒卤菜(肉の煮しめ)、卤鸡(トリの丸煮る)、卤蛋(味付け煮たまご)
4) <料理>肉や鶏卵で作ったスープにくず粉を加えた濃厚なかけ汁
⇒卤面(あんかけそば)=打卤面
5) (~儿)飲料の濃い汁
⇒茶卤(茶の濃い汁)
*整理してみて少しすっきりしました。(主に「中日辞典(小学館)」から引用)
また、これらの料理のほとんどに独特の香りを醸し出す香辛料の「八角:Bājiǎo」が配合されています。
先日、卤肉饭のレトルト食品を食したのですが、封を切ると「八角」由来の香り(アネトール)が部屋中に広がり、本場中国のお食事処の記憶が蘇りました。
融点が23℃です。室温(25℃付近)では液体ですが、気温が下がると固体に変化します。
また、沸点が200℃ぐらいなので、中華料理による強烈な火力により本成分は揮発します。
东坡肉,红烧肉にもこの香辛料は欠かすことのできないものですが、あまりこの香りが強いと多くの日本人は抵抗を感じるかもしれません。
北京ダックや杏仁豆腐のアクセントぐらいが、丁度この香辛料が生きてくる使い方だと思われます。
さらに、その成分の一つであるシキミ酸からインフルエンザ薬のタミフルが創薬されたことが話題になっていましたが、八角そのものがインフルエンザに効果があるわけではありません。
『本草網目』(明代の本草学者:李時珍著)では、鎮痛、駆風、腹部膨張、嘔吐などに効果があるとされ、日本薬局方ではウイキョウ油の原料に規定されており、胃腸の働きを調える作用があります。
食べすぎによる胃もたれに効能が期待できます。