コカ・コーラ襲った「豪雨」と「トラック不足」 中国地方の主力工場は稼働再開見込み立たず 2018/09/05 6:00
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工場の具体的な稼働再開時期の見込みは立っていない。浸水した製造ラインは修理だけでは済まず、新たに丸ごと導入しなければならない可能性もあり、「相当な期間、操業を停止することになる」(会社側)。

物流倉庫でも、夏場の最盛期に向けて保管していた多くのペットボトル飲料の完成品が流されて散乱した。一部被害が少なかった製品もあったが、ほとんどは廃棄せざるをえなくなった。

被害を受けた物流倉庫は地域の中核拠点となる大型の自動倉庫だった。この倉庫は本来、工場からの完成品の搬入、製品の積み上げといった一連の作業が自動化されていたが、現在は搬入・搬出がすべて手作業で行われている。自動倉庫機能の完全復旧は最短でも年末になる見込みだ。

現在はこの倉庫に、京都工場や佐賀県の鳥栖工場で製造された製品を搬入し、工場の操業停止の影響をカバーしようとしている。だが平時は必要のない他工場から本郷工場への輸送を行うため、トラックが追加で必要になった。

このことがコカ・コーラの事業全体に影響を及ぼしている。製造と配送の能力が共に逼迫。直接被害のあった中国地方だけではなく、全国のスーパーマーケットなどの小売店に対して、自社製品をチラシなどの広告に掲載するのを中止するよう異例の要請をしている。販売数量への悪影響は避けられない。

くしくも、夏場の猛暑で飲料需要が急増しているタイミングでの被災だった。ただでさえトラックドライバー不足で物流能力が逼迫している状況の中、余波はほかの飲料メーカーにも広がってきた。

飲料業界ではここ数年、配送トラックの不足や物流費の上昇を背景に、鉄道コンテナで輸送を代替するモーダルシフト(輸送手段の転換)を進めてきた。今年4月には、大手ビールメーカー4社(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ)が、関西・中国から九州への共同モーダルシフトを開始。各グループ会社の飲料メーカーも、そこに相乗りしている。コカ・コーラも物流企業のセンコーなどと組み、2014年から同区間でのモーダルシフトを進めてきた。

だが7月の豪雨によって、JR山陽本線の一部区間が不通になった。8月末からは倉敷から伯備線、山陰本線、山口線を経由して新山口に抜ける迂回ルートでの輸送も行われているが、運転本数が少なく、輸送力は依然不足している。

そのため、トラックでの配送を余儀なくされるという“逆回転”が起こっている。そこにコカ・コーラの工場間輸送も加わり、「配送トラックの奪い合いになっている」(飲料メーカー関係者)状況だ。

西日本でトラックがかき集められていることによって、「関東でも配送トラックの数が足りなくなっている」(サッポロホールディングス)。実際に、都内にある飲料メーカー各社の自動販売機の一部では、豪雨や猛暑の影響で商品提供が滞っている旨を説明する張り紙の掲示が9月に入った今も続いている。

(抜粋)