鍵のない夢を見る/辻村深月
<あらすじ>婚期を逃した女、無謀な夢を追い続ける彼氏から離れられない女、育児に疲れた女、ごく普通に生きていた彼女たちが、他者との接触をきっかけに、暗い感情に足を踏み入れていく短編集。鍵のない夢を見る/文藝春秋 ¥1,512 Amazon.co.jp 直木賞受賞作品ということで、手に取ってみた一冊。実は辻村さんの作品を読むのは初めてでした。まず、希望のあるラスト、元気をもらうこと、ハッピーエンドを小説に求めている人にはおすすめできません。収録されている5編の短編には、どこにでもいそうな普通の女性たちが主人公として登場します。しかし、それぞれがある人との出会いをきっかけに、事件に巻き込まれていくのです。この小説の怖さはどこにでもありそうなこと。自分の周りでも起こりそうな事件だということです。夏の暑い日、赤ん坊を車に置き去りにして死なせてしまう母親のニュースをよく耳にしますが、はたから見れば、なぜそんなことができるんだ、と思いますよね。でもこの本を読んで、その母親の気持ちは子どもを育てたことのない人や、恵まれた子育てをする環境にあった人には分からない。もし自分が、夫も力になってくれなくて、誰にも頼れなくて、育児に疲れていたら、どういう精神状態になるのか。それは自分が本当にその立場なってみないと分からない。と、思わされました。どの話も、他人事だと思って読んでいると、ばかみたいだと思うんです。でももし本当に自分がこういう立場だったら・・・と考えると怖くなります。個人的には一番最初の泥棒癖のある親を持った友達に戸惑う女の子の話が好きです。最後にりっちゃんが、過去にあったことを全部無かったことのように話すシーンが印象的でした。日常に潜む暗い部分に、上手に光をあてた作品だと思いました。